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卒業論文を読み返す

大学を卒業してから早1年近くが経つ。大学生として過ごした4年間は本当に不思議な時間で、今振り返るとあんなに青く自由で解放された4年をもう二度と過ごすことはできないのではないかと思う。

私は大学をなんとなくで選んでしまい、入学後の目標がとてもぼんやりしていた。入学して早々に将来の夢を一旦考え直すことになり(そうでなければ、キャビンアテンダントになっていたはず笑)、何を勉強したいのかも分からず授業中は大体他のことを考えていた気がする。

そんな私が大学で出会ったのが「映画学」という学問だった。大学2年生の基礎教養科目で、なんか面白そうと惹かれて選択した授業。そもそも自分の大学でこんな学問分野を研究している教授がいることすら知らなかったし、「映画学」という分野があることすら当時の私は知らなかった。

先生の話が面白くて、その当時1番好きな授業が、必修でもなんでもない、板倉先生の映画学についての授業だった。後から調べると、先生の学問分野は「日本学コース」という名前に隠れていて、授業を受けない限り、大学で映像作品のことを勉強できるなんて気づくことができなかったと思う。

そのまま、ゼミも先生のゼミ一択。先生の授業を受けていなかったら、大学生活後半も、ただ単位を取るためだけに通うことになってしまっていたと思う。板倉先生のもとで、卒業論文を書きたいと思ったのは、偶然ではあったけれど、今思えばとても運命的で、当時の私にとっても自然なことだった。

そして最近、先生から連絡が来た。「卒業論文がwebで公開されました。これから、論文が引用されることもあると思います。とても楽しみですね!」

先生が共有してくれたリンクを開き、久しぶりに自分の書いた卒業論文を読み直す。今読むと拙いところも多く、ちょっと恥ずかしかった。でも、卒業論文に向き合う時間、すごい楽しかったんだろうな、ということが伝わってくる、そんな論文になっていた。

私からすると、論文というよりもはやエッセイの延長で、先生が論文というかたちに体裁を整えてくれたような、そんなふうに思っています。それはきっと、自分が本当に興味を持っていたことを楽しく書かせてもらえたからだとも思います。

そういえば論文提出後に、後輩に向けて執筆後記を別途提出したことを思い出しました。その文章も、読み返すと我ながら等身大で言葉にできているような気がして微笑ましくなりました。ここにも残しておこうと思います。

■ 卒業論文を書き終えて

卒業論文に取り組む前、私は「論文」というものはとても堅くてとっつきにくいものだと思っていました。しかし論文を提出した今、「論文」そして「研究」に対する私のイメージはがらりと変わり、それらに取り組める環境があることはとても貴重だったと感じています。私はもとから映画やドラマ鑑賞が好きだったのですが、今回の卒業研究を通して、好きな脚本家の方について学術的に、そしてさまざまな観点から詳しく知ることができました。これは、これまで自分が感じていた「なんとなく」の興味や好きなことを言語化すると同時に、その歴史や奥深さを知ったうえでこれまでに気づかなかった観点にも向き合えた時間だったと思います。指導してくださった板倉先生からは、「論文に向き合っていると、いつかいろいろなことが繋がって、書いているのが楽しくなるときが来ます。ぜひ楽しんで書いていきましょう。」と言われていたのですが、そのときが来たとき、ざわざわと胸が高鳴ったのを今でも覚えています。とはいえ、テーマの設定から情報収集、そして執筆は想像以上に大変で、考えれば考えるほどゴールが見えなくなるときもありました。もし私からアドバイスできることがあるとすれば、分からなくなったときは先生はもちろん誰かに話してみたり、立ち止まるというよりは一度全く違う方向から考え直してみたりすることかなと思います。そうすることで、道が切り開けたときが何度かありました。あとは、卒業するために書くのではなく、論文執筆の機会を、本当に自分の興味あることを深められるチャンスだと捉えて取り組めたのが個人的には最後まで粘れた理由かなと思っています。偉そうなことは言えないのですが、ぜひ、誰かに話したくなるような卒業論文を書いてみてください。これから論文執筆に取り組むみなさんが、充実した時間を過ごせることを心から願っています。

2022.01.29 卒業論文執筆後記

肝心の卒業論文ですが、以下のファイルから読むことができます。坂元裕二脚本について、ドラマ『カルテット』を題材に好き勝手分析しました。

著作権の関係で、作品のキャプチャは黒抜きになっています。※もし紙(キャプチャもそのまま)でも読みたい方がいたら、ゼミでまとめた本があるので連絡いただけたら貸しますね☺︎

坂元さんの作品を知っている人も、知らない人も、これから観る作品がより楽しめるような、そんな論文になっていたらうれしいです。

「すべてのシーンには作り手の意図があり、意味を考えることができます。」

これは、私が映画学に興味をもつきっかけとなった、板倉先生の言葉です。先生には、映画学についてだけでなく、人生において大切なことも教えていただきました。

すべてのシーンに意味がある。私の人生も、これからいろんな伏線を回収していきたいです。

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