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任期付き、家を買う。

任期付き大学教員なのに家を買って(建立して)しまったので、決断から現在(引っ越し済)に至るまでの経緯を時系列で振り返ってみたい。

自宅建立を決断するまで

まず、なぜ自宅を建てようと思ったのかという点であるが、これには大きく2つの理由がある。1つは「土地があったから」、もう1つは「生活が(ある程度)安定することが見込めたから」である。2つ目の理由から説明すると、私は2020年の4月に現職に着任したが、収入面では前職(もかなりの高待遇なポスドクだったが)よりも待遇は良くなり、任期はあるものの再任可の7年任期であることから、今後少なくとも10年程度は安定して生活できることが期待できた(もちろん状況が変わる可能性はあるが、ワーストケース基準ばかりを意思決定指標とするわけにもいかない)。一方、1つ目の理由は単純で、妻氏の実家が引っ越しによって空き家状態になっていたため、その土地を利用する許可が得られたのである。

さて、これらの状況が重なったことで、2020年の5月~6月頃からなんとなく一軒家を探し始めた。まず考える必要があったのは、譲り受けた土地に(妻氏の旧実家を壊して)新築するか、土地を売却して建売の一軒家を購入するかの選択である。このため、2020年の7月~8月にかけて近所にポコポコと完成していた建売の物件を数件見学に行った(価格帯は土地も含めてだいたい3000万円〜5000万円くらいだったと思う)。正直なところ、私は見学した建売を購入してしまうのはアリよりのアリだと思っていたが、妻氏の鶴の一声「気に入らん」で全て却下となった。オシャレ感を優先した謎間取りや、(我々からすると)不要な設備がデフォルトで実装されているといった点が主な理由である。ただ、我々がスルーした物件たちはその後ほとんど間をおかずに売れていったようだった。

そんなわけで、最終的には妻氏の旧実家を壊してそこに新築するという方針をとることにしたのである。

自宅建立までの道のり1:ハウスメーカーの選定編

オーダーメイドで新築することにしたので、次に考える必要があったのはハウスメーカーの選定だ。探し始めたのは2020年9月に入ってからだったが、同月末(までにハウスメーカーと契約すること)が13年間の住宅ローン減税の控除が受けられる対象となる期限だったため、結構急いで探した。具体的には、3社に話を聞きに行き、うち2社はモデルハウスの見学にも行った(そのうち一方は実際に人が生活している家を見学させてもらった)。選ばなかった2社の社名は伏せておくが、一方は大手ハウスメーカーで、もう一方は地域型の注文住宅の設計事務所だった。選ばなかった理由であるが、まず両社共通して予算を大幅にオーバーした見積もりを提示されたことが最大の理由である(事前に伝えていた予算からだいたい1000万くらいは余裕でオーバーしていて閉口した記憶がある)。個別に見ると、例えば大手メーカーの方は、かなり厳格に決まった規格のパーツ(部屋、キッチン、風呂、トイレなどの)を組合せて住宅を構成するという方針で、我々にできるのはどのパーツを使用するかを選ぶという程度であった。これでは注文住宅にする意味がないと思い、予算の問題もあって選択肢から除外した。

というような(出向いて話を聞き、資料を持ち帰って検討するという)作業を2020年9月いっぱい行い、最終的にはクラシスホーム(https://www.clasishome.jp)と契約した。契約日は2020年9月30日であり、滑り込みセーフで住宅ローン減税の対象となることができた。決断までに各メーカーに出向いた回数は、
・大手メーカー:1回
・地域型設計事務所:2回(うち1回はファイナンシャルプランナーとの面談含む)
・クラシスホーム:3回(3回目で契約)
の合計6回だったと思う。平日は普通に仕事していたので、毎週末どこかには出向いていたことになる。

さて、クラシスホームに決めた理由であるが、これは実際に家を見てくれと言いたいところをぐっと堪えて主要なものを列挙すると、

・3社のうち最もこちらの予算に真摯な見積もりを提示してくれた
・我々が口を出せる部分が非常に多かった
・2つ目の理由と関連して、施工開始前の打ち合わせを非常に重視しており、期間
 もかなり長めに取ってあった
・担当者の方とのコミュニケーションに安心感があった
・我々の趣味に比較的近い雰囲気のモデルハウスがあった

といったあたりだろうか。口出しや打ち合わせの回数・期間に関しては、人によってはメーカー側にポンポン決めていってもらいたい(あまり時間をかけたくない)という場合もあると思うが、我々の場合は「自分たちで決めたい(そのために時間がかかっても構わない)」というスタンスだったので有り難かった。また、担当者(やその後実際に家を作っていく担当チームのメンバー)とは1年以上に渡って頻繁にやり取りすることになるので、コミュニケーションのしやすさ(気軽に相談できるかどうか)は重要だと思った。

自宅建立までの道のり2:打ち合わせ編

ハウスメーカーが決まったあと、2020年10月から2021年3月までは半年間に及ぶ長い長い打ち合わせ期間であった。だいたい月に1回程度(短くて2時間、長いと3時間以上)クラシスホーム社に出向いてありとあらゆる仕様の打ち合わせ・意思決定を行っていった。打ち合わせと並行して各種ショールームにも見学に行き、判断材料を収集した。特に重要な意思決定パートとして以下の3点を挙げておく。

・意匠(住宅の外観の仕様)の決定:2020年12月承認
 → まず担当者氏にパースを大量に作成・提示してもらい、それにこちらがコメントしながら修正を加えていった

・間取りの決定:2021年1月承認
 → 土地の使い方(住宅部分、駐車場、庭の割合や配置)からはじまり、どういう部屋をどのように配置するかを担当者氏が作成する間取り案を見ながらコメントし修正を加えていった

・仕様の決定:2021年3月承認
 → 住宅全体の図面を最終確認し、工事の発注へ進む。これ以降の外観・内装に関する大きな変更は出来ない

最終的な仕様の確定までに決めた事項は膨大で、ここには細かくは記載しない。とにかく、

担当者氏に叩き台を作ってもらう→我々が意見を出す→担当者氏が修正案を作る

というサイクルをこちらが納得するまで繰り返した。長い時間をかけ、資料の分量も膨大となったが(図参照)、その甲斐あって最終的な仕様は大満足のものとなった。

図:仕様の最終決定までに作成された打ち合わせ資料はMLPシリーズ最長の深層学習本改定第2版より分厚いほど多かった

自宅建立までの道のり3:工事編

住宅の仕様が確定し工事の発注をかけたことで、2021年5月のGW明けから工事が開始された。工事のプロセスは大まかに以下のように進んでいく。

1. 妻氏の旧実家の解体(2021年5月いっぱい)
2. 土地の造成(〜2021年7月中旬、2022年2月中旬〜3月下旬)
(ここで地鎮祭)
3. 地盤調査・改良(2021年8月中旬)
4. 基礎工事(〜2021年10月中旬)
5. 上棟工事(〜2022年2月中旬)

工事が始まってしまうと基本的に我々のやることはない。間取りなどの変更の効かない部分以外の細かい仕様に関してもう少し検討を重ねて、変更の希望があればそれを担当者氏に伝えるといったことがこの時期の主な活動内容になる(住宅ローンの契約もこの時期であるが、それは次節で述べる)。

地鎮祭での記念撮影
上棟の工事を見学した際の写真

ところで、実際に自宅建立を進めていくと、契約時の見積もりが本当に見積もりでしかなかったことを痛感する(した)。住宅を建てる際のお金のかけどころとしては、まず上棟部分に目が行くと思われる。そこで生活をするわけだから当然であるし、私もやってみるまでそちらにしか関心を払っていなかったというのが正直なところだ。ここはある意味コントローラブルな金のかけどころと言える。つまり、こだわるなら金をかけ、予算オーバーなら妥協するといったことを施主が意思決定できるという点で見通しを立てやすい。ところが、自宅建立においてはアンコントローラブルな金の"かかりどころ”が存在する。私の場合は旧住宅の解体〜地盤改良までがそれであり、これらを合わせると実に全施工費用の約4割強を占めている。特に予想外だったのは、隣接する住宅のブロック塀が劣化していて、そのまま工事を進めると崩壊の恐れがあったことである。最悪の場合、崩壊した箇所から隣家の土がこちらの土地に流入し、隣家が傾いてしまうという可能性もあった。これを防ぐために地面に土留めを打ち込む追加工事をする必要があったが、これによって工事費用に数百万円の上乗せが生じてしまったのである。ワーストケースを考えればこれは避けられない出費ではあるのだが、(元は隣の家の塀が原因だろ?許せねえ…)ドス黒い感情が一瞬湧き上がったのは事実である。

こういった「土地の特徴」というのは実際に調べてみるまで分からないというのも難しいところである。やってみて初めて問題が発覚し、その対応を考え(担当者氏)、意思決定する(我々)プロセスがいちいち挟まるため、工期も大幅に延長してしまう可能性がある。我々の場合、当初の計画では2022年2月中には引っ越しを完了できる予定であったが、これらの問題への対応などによって工期が延びてしまい、実際に引っ越しができたのは4月に入ってからだった。

自宅建立までの道のり4:住宅ローン編

妻氏の旧実家の解体工事終了と前後して、住宅ローン申請のための準備に取り掛かった。

まずどこに申し込むかを決定するため、いくつかの候補をクラシスホームの担当者氏にピックアップしてもらい、それらに対して仮申請手続きを行った。仮申請は、こちらの簡単なプロフィール(年収なども含む)を送付し、本申請に進めるかどうかを銀行が判定するプロセスである。実際にやったことと言えば、各銀行毎に1枚の仮申請書を記入しクラシスホームの担当者氏に渡したくらいである。添付書類も基本的にはなかったと記憶している(源泉徴収票のコピーくらいは添付したかもしれないがちょっと記憶があやふや)。確か3行に仮申請を行い、2週間ほどで3行とも本申請OKの返事をもらった。

無事に仮申請をパスしたので、銀行の住宅ローン窓口へ相談に出向いて説明を受け、返済プランなどのシミュレーションをいろいろするなどして2021年8月までに申請先を決定した。提示されたプランは3行ともわりと似たりよったりで(どこを選んでも致命的な違いは出ない程度に)、最後はえいやで決めた。2021年9月上旬に本申請を行ったが、1日の作業としては結構大変だった(銀行に出向いて先方の担当者氏が次々に繰り出す契約書類に記入、捺印、記入、捺印…を繰り返すこと約3時間)。過去数年分の源泉徴収票など添付書類もかなり多く、約1ヶ月程度の厳格な審査を受けたが、勤続1年であることや短い間に複数回職場を変えていること、任期がついていることなどはそれほど不利な条件とはならなかったようである。2021年10月下旬に無事本審査をパスし、11月頭には最初の振り込みが行われた。

自宅建立までの道のり5:完成〜引っ越し

住宅ローンという最大の懸案事項が解決し、長かった自宅建立チャレンジもいよいよ完成を待つばかりとなった。2021年11月下旬に電気配線確認の立ち会い(コンセントの位置などがここで確定)、2022年1月中旬に木工事完了立ち会いを経て2022年2月中旬に上棟の完成立ち会いとなった。通常のスケジューリングであれば上棟の完成をもって住宅工事全体が完了となるはずだったが、我々の場合は先の土地問題などの影響もあって上棟工事と土地の造成工事の順序を入れ替えたため、ここから土地の造成工事が再開し、これが完了したのが住宅引き渡しの2日前(2022年4月1日)だった。4月3日の午前8時に鍵を受け取って引き渡しが完了(この時点で電気・ガスの名義も私に自動的に変更された)し、翌4月4日に引っ越しをした。引っ越しを実施するタイミングとしてはおよそ最悪な時期であり、複数の業者に相見積もりを取って最も安いところに依頼をしたものの、初期の計画であった2月中の引っ越しに比べてかなり高くついてしまった。4月5日には大物の家具と家電が届き、4月6日にネットも開通してとりあえずの生活の基盤は整ったと思っている。

おわりに

以上が、私の自宅建立チャレンジの概要である。建立の決断から引っ越し完了まで実に1年半に及ぶ長丁場であった。土地問題による遅れはあったものの、コロナ禍の影響によるウッドショックにギリギリ巻き込まれなかったのは不幸中の幸いだった(もし巻き込まれていたらさらなる延期は免れなかったと思われる)。

自分が一軒家を持つなどとはほんの数年前までは想像すらできなかったが、完成した自宅は手前味噌ながら本当に素晴らしく、全く後悔はしていない。妻氏と息子氏も大いに満足しており、早速ガーデニングの計画を立てていらっしゃった。とはいえ、住宅ローンという大きな大きな借金を抱えてしまったのでこれから馬車馬の如く働いてお金を稼いでいきたい。という決意表明を持って、本記事の締めとしたい。

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