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「僕たちの嘘と真実 DOCUMENTARY of 欅坂46」を鑑賞して

 9月3日に鑑賞した映画「僕たちの嘘と真実 DOCUMENTARY of 欅坂46 公開記念!前夜祭イベント中継付き上映会」について、個人的な初見の感想を残しておこうと思います。

【以下ネタバレがあります。あくまでも個人的なファンとしての感想です】



 「全員で手を繋いで崖の淵に立っている――」。ハッとさせられる言葉から始まる本作では、初めて見る映像、初めて知ること。たくさんの感動があった一方で、たくさんの疑問が生まれた気がします。

 感動させてもらい続けてきたパフォーマンスの裏側に隠された壮絶な覚悟、努力、そして葛藤。きれいごとでは済まされない、出来事の数々。

 しかし本作で描かれているのは本当にごく一部の一部なのだろうと思うと、この映画を見て分かったような気になるのはちょっと違うのかもしれない。でも見てしまったからこそ過去作をフラットな目で見れないような気もする。なんというか非常に複雑な心境で劇場を出ました。

 特に中心的に描かれている平手さんについては、作品へ没入していった結果変調をきたし――というようなストーリーだったかと思うのですが、握手会襲撃事件、過密スケジュールの連鎖、2018年の武道館公演見送りの背景などは描かれておらず、(パンフレットによると)ご本人がインタビューを固辞されたらしいこともあって、改めて「本物の熱量を持った人だな」と感じるとともに演出には最後までいろいろな「なぜ?」が残りました。

 最も「うーん」と思ったのは、予告映像です。いわゆる“嘘予告”自体は「ジュマンジ/ネクスト・レベル」などの映画作品でも展開されており、その度に物議を醸してきましたが、今回はドキュメンタリーという性質上、本編に登場しないシーンを予告編に組み込むのは正直悪手だと感じました。それも肝心のシーンだったとみられるので、文脈的に「この辺りに挿入されていたシーンなんだろうな」という推測はできるもののがっかり感は否めません。

 私は視聴者側の立場なので本当のところは全く分からないし想像もつきませんが、最高の物を提供するために表に出してこなかったものが一部でも人目に触れるということは色々な衝撃を与えるのだろうし、作り手側もその辺りは重々配慮されていたと思います。

 ただやはりグループのドキュメンタリーという事を考えると、一言ずつでもいいのでメンバー全員のインタビューパートが欲しかったし、できれば卒業、脱退されたメンバーの今にも触れて欲しかった。紅白終わり恒例のジャンプだったりメンバー同士が笑いあっている姿も見たかった。もし時系列に沿ったストーリー展開だったら、欅坂46と作品を作り続けてきた人がメガホンを取っていたらどんな風だったろう。

 本作は「5年間の歩み」というよりも「欅坂46が幕を下ろす理由」に重きを置いた作品なのかもしれません。だから“見る側のスタンス”によっても感想が分かれるかもしれませんが、個人的には演出面で「色々な“if”を考えてしまう場面が少なくなかった」、というのが正直なところです。

 特に撮影が中止となったMV撮影の様子については、断片的に経緯が明かされることにより、関わった人を傷つけはしないかと勝手に肝が冷えました(余計なお世話)。

 「嘘と真実」というタイトルの意味は今はまだ分かりませんが、「黒い羊」のMV撮影終了後、“僕”が最後まで頑なに彼岸花を手放さなかったように、欅坂46というグループが様々な犠牲を払ってまで大切にしてきたもの。大切にしてきたからこそ今手放すものは何なのか。残された期間をファンとして大切に考える時間にしたいなと思います。

(Kikka)

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