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ミケ

わたしには美しいミケ猫がいた。
名前は美毛(ミケ)
東日本大震災の翌年に出会った。
可愛そうな境遇の猫だった。

譲ってくださる方から聞いていた情報は、
三毛猫
三歳
女の子
狂暴で悪い
手に余ったら遠慮無く逃がしてください

というものだった。

猫が慣れるまでに時間はかかったが、ちっとも狂暴などではなく、やがては一生懸命お世話するわたしの後を付いて歩くようになり、家族は私たち2人を2個1(ニコイチ)と呼んだ。

成長すると、臆病だったミケも強い猫となり、見た目は往年のハリウッド女優キム・ノヴァクみたいな美人になった。
だれもがミケを美人と言った。

それだけ美しい猫なのに、口が臭いというとんでもないギャップを持っていて、そこがまたたまらなく可愛らしかった。

そしてミケはとても優しかった。

なぜにとても臆病だった猫が強く優しき貫禄ある猫へと化けたのか・・・。

理由は、わたしへの強い信頼感があったからだと思う。
何が起ころうともう安全。
自分は守られているから大丈夫と。

わたしの愛する可愛い娘。
ミケは自分がどんなに愛されているかもよく分かっていた。

ミケが強く変貌していくさまを見て学んだ事は、自分と神様との関係性を知ることの大切さだった。

神様という天界にいる本当の親に出会い、絶対的な信頼を寄せ、自分は深く愛されているのだと心から理解できた時、人は本当に強くなれるのかもしれない。

ミケが亡くなった時、遠くにいる友人がこんなメールをくれた。

「親はね、子供が産まれたら、その子が最愛の人と出会えるように祈るのよ。
少なくともわたしはそうでした。
あなたにとって、最愛の人は猫ちゃんだったのね。どんな別れ方をしたのか知りません。
聞いてもいませんでしたから。
でも、良い一生だったと思います」



死んた様に生きていたわたしの人生は、ミケの死後にゆっくりと動き出した。
見守ってくれているのだと思う。

たまに真夜中のキッチンで、椅子から軽やかに着地するミケの足音を聞く。
不思議な出来事に遭遇しても、実際には現実的な理由が必ずあると思いつつ、、、
でも確かに室内で聞こえてしまう猫の足音。


家族も彼女の足音を聞くという。






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