九条林檎への、気持ちの悪いラブレター

九条林檎に恋をしてしまった。

配信はできるかぎり毎回行っている。
星集めなんて私にとっては苦行だ。けれど、いつも楽しませてくれ、麗しいお姿を見せてくれる配信を何も渡さずに観るのはあまりにも申し訳なく思えて、せめてもと私は星を集め、50をカウントする。

Twitterは他人へのリプライまで全部読んでいる。
他人とのやりとりに興味があるわけではない。
そこに彼女の言葉があると知っていて、読まずにいられないだけだ。

彼女のことが好きだ。
彼女のことを考えると、比喩でなく涙が滲む。
胸が締め付けられる。

恋をしている。

綺麗な瞳が好きだ。
ファッサファッサ動く髪が好きだ。
柳眉を上げた顔が好きだ、「キリッ」と言った後の高笑いがセットで好きだ。
手塚治虫の描き文字を思わせる「ははははは」という高笑いが好きだ。
心底嫌そうに呻く声が好きだ。
突然発される、潰れた蛙のような声、プライバシー保護のため音声を変えていますな声が好きだ。
どんどんバージョンアップしていく配信が好きだ。
画面に降ってくる画像や文字で楽しそうに遊ぶ姿が好きだ。
ぴょこんぴょこんと、思いの外可愛らしく上下動するのが好きだ。
「スペシャルギフト、礼を言おう」の時などに林檎を描くような手の動きが好きだ。
「ママ上様とパパ上様、合わせて、マパ上様だ」と説明するときの、PPAPみたいな動きが好きだ。
マパ上様に対する、照れてもじもじした話し方が好きだ。
バーチャル友人や界隈の有名人が来たときの、驚きにひっくり返った声と、テンションの上がりようが好きだ。
配信後にいつもルームに配信内容のまとめのようなボイスを残してくれる隙の無さが好きだ。
誰かとコラボするとはしゃいでティーンエイジャー感がマシマシになるのが好きだ。

電気の通らない離れで、体を冷やしながら配信しているの彼女に、着る毛布と貼るカイロを直接差し入れたいと思う。
画面がカクつき、音声が途切れるたびに、つよつよ回線さえあれば彼女はもっと人を呼べるのにと思う。

彼女が好きだ。

最近は心配をしている。
不要な心配だ。
これが長じれば、私は彼女を煩わす害悪になるだろう。

一度だけ、マシュマロで口を出したことがある。
反省している。
リスナーの選択を受け、色々と考えての態度や言葉選びであるのに、私は諌めなければならない物だと勝手に思い詰めたからだ。
彼女は、私が思うよりずっとずっと、リスナーの反応ややり方を考えていた。

ではいつか彼女があまりにも望ましくないことをしたときに、何も言わなくていいのだろうか？
信者になるつもりか？
彼女が望んでいないのに？
その辺りは、まだよく分からない。
今のところは杞憂であるし。

圧倒的なポイントを叩き出しても、「分からないぞ」と連発するとき。
コラボ配信前に、珍しくーー本当に珍しく、「頼む」と言ったとき。
コラボ配信で「我は集金力があるのだ」などと殊更に説明したとき。
もう詳細を忘れてしまった端々に。
私は勝手に、彼女が先回りして予防線を張っていると解釈する。
不安だから力を誇示しているのだと解釈する。
彼女の怯えや繊細さを捏造する。

心底発言の通りに思っていることや、わざわざ説明し明確にアピールすることが活動に必要であることも分かっているのに。

私はきっと、そうであれと思っているのだろう。
どれだけ人を集めてもどれだけ有償ギフトや無料ギフトを積まれても、彼女は自信が持てないのだと。
そうして、私は、彼女の震える手を握ることを夢想しているのだろう。

恋とは誤読なのだと思う。
でも、それで良しと丸ごと肯定するのは抵抗がある。

彼女のことを考えている。
林檎柄のレターセットを買って、ファンレターを出せないでいる。
いつか絵を描こうと思って、描かないでいる。
いつか文を書こうと思って、書かないでいる。
これだけ楽しませてもらっておいて、課金しようと思っていて、そうせずにいる。(コラボ配信には少し出した。)
彼女が、生きているだけで私たちを愛していると言ってくれているのに。
こんなにも感情を動かされているのに。
私は彼女に出会う前と何も変わらずに、動かずにいる。

彼女を想うと涙が出る。
好きだ。
好きだ。
愛している。
貴女が生きているだけで、私は貴女を愛している。

でも、この私の気持ちはいつか終わる。

この恋心は、私が飽きるまでの物だ。

飽きるまでの、短い短い、恋心だ。

この思いを吐き出したくて、
留めておきたくて、
彼女に認知なんかされたくなくて、
ただそれだけでnoteを解説した。

彼女はエゴサが得意なので見つかってしまうだろうけれど、
人間は愉快だと笑うだろうけれど、
できればさらりと忘れていただきたい。

私の恋心は、彼女が厭う口出しや、面倒臭い厄介ファンに繋がりかねないので。ご覧の通りに自意識過剰で気持ち悪いので。
私は飽き性で浅はかで残酷で愚かな、

人間なので。