子どもたちは競争心を持っていた方がいい、なくてもいい?

「わが子には競争心がある・ない」といったことが書いてある記事を読みながら、ふと思い出したことがありました。

息子が小学生だった頃、近所のお父さんたちが集まって子どもたちにサッカーを教えてくれていました。お父さんたちは、みんながボランティアだったにも関わらず、毎週欠かさず日曜日に子どもたちに練習をしてくれていましたので、本当に頭が下がる思いでした。

息子も、毎週日曜日になるとそこでサッカーを楽しんでいました。

地域性なのか、当時はサッカー人気があったからなのか、子どもたちの参加人数は多く、対外試合があるときには2つのチームに分けて出場していました。補欠メンバーという考え方はなく、全員がまんべんなく試合にでて戦っていました。

対外試合では負けることが多かったのですが、勝った試合もたまにあり、勝った時は子どもたち全員が喜んでいた様子を今でも覚えています。

小学校の低学年の頃は、子どもたちはみんな同じようなレベルだったのですが、高学年になっていくにつれて実力差が見え始め、サッカーが上手な子どもたちはそれなりに目立ち始めていました。

息子が小学校の高学年になったある日、コーチであるお父さんたちはチームを分ける際、サッカーの実力に応じてAチームとBチームに分けることにしました。それぞれのチームに補欠メンバーも含まれます。Aチームは実力のある選抜チーム、Bチームはその他の子どもたち、という分け方でした。

そのチーム分けについて、保護者だけを集めた説明会がありました。

その時の話では、子どもたちに「勝つ」喜びをもっと多く味あわせたい、また、子どもたちに競争意識を持ってもらいたい、ということでした。
お父さんの中には、社会に出ると競争社会の中でもまれることになるのだから、今のうちから競争意識を多少なりとも持っておいてほしい、と話す人もいました。

その説明会で配られたチーム分けのリストを見ると、Bチームの中に息子の名前がありました。

このチーム分けについて、子どもたちにはどのように説明をされたのかはわかりませんが、その後の息子はというと、それまでと変わらず、毎週日曜日にはサッカーの練習を出かけていきました。

我が家の中では、チームAだのBだのという会話はほとんどしなかったと思います。ましてや、がんばってAチームになろう、などということはいっさい言わなかったし、というよりもわざわざ話すことでもないと思っていました。ただ、本人をそっと見守ることにしていました。

その後の対外試合の結果は、Aチームはそこそこ勝利をおさめることが多かったように思います。

一方のBチームはというと、勝ち試合はほとんどなく、いつも負けてばかりでした。

小学校を卒業すると同時にそのサッカーチームを卒業することになるのですが、息子はそれまでに一度もAチームに入ることはなく、最後までBチームのままでした。

あの説明会の時に言われていた「勝つ」喜びを味わうことなく、競争心も誘発されることもなく、そのまま卒業することになったように思います。

だからと言って、サッカー嫌いになったというわけではなく、サッカーのワールドカップはいつも欠かさず観ているし、その後も中学・高校もサッカーを続け、社会人になってからも気の合う仲間と集まって、今でもサッカーを楽しんでいます。

あのチーム分けの時に息子が何を思ったかは、今も知りません。

このチーム分けのことが頭によみがえった時に、あの当時に感じた違和感も一緒に思い起こしてしまいました。そして今でも思うことですが、生きていく上で競争意識はどれほど必要なのだろうか、と。

明確に戦う相手が決まっているスポーツでは、相手に勝ちたい・負けたくない、という競争心が必要だと聞いたことがあります。となると、優れた成績を収めているスポーツ選手はみんな強い競争心を持っているひとたちばかりなのでしょうか。

スポーツ選手ではなくとも、現代の社会の中で生きていくためには、今でもまだ競争意識が必要だと耳にすることがありますが、本当にそうなのでしょうか。

あの時のことを思い返すと、息子のサッカーのチーム分けでは選抜的なチーム分けをせず、くじ引きでもいいのでチーム分けをするという選択肢もあってもよかったのかもしれません。そこでできあがったチーム内で足りないところがあればお互いに補い助け合うことを考え、今いるメンバーで最善を尽くす方法を探す、うまくいかなければ次は他のやり方をまた考えてトライしてみる。負けが続くかもしれけれども、今の社会で必要なことをたくさん得られたのではないかと思ってしまいます。

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