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『カットキャベツ』

妻からの買い物メモに『カットキャベツ』との記載。炒め物用のざく切りキャベツの袋を買って帰ると、「違う違う、そうじゃない。お皿に添える千切りキャベツのことだったのに」と苦情がきた。数日後、会社帰りに買ってきてねと届いたLINEには、またしても『カットキャベツ』。今度は間違えないぞと張り切って千切りキャベツを購入。しかし、妻からは「なるほど、そう来たか。全体が見えていない」と一言。買い物リストには、野菜と炒めるだけの八宝菜の素もある。深く考えず、目に映った『カットキャベツ』は千切りキャベツだという短絡的な経験学習が、間違った行動と結果に繋がった。

私の好きな書籍の一冊「WHYから始めよ!」の中で、著者のサイモン・シネックは、円の中心からWHY「なぜ?」HOW「どうやって?」WHAT「何を?」を同心円状に配置した関係図をゴールデンサークル理論として示している。シネックがこの図で伝えたいのは、多くの人が円の外側にあるWHATのみを考えるのに対して、優れたリーダーは円の内側からWHY、HOW、WHATの順に考え、自らWHATを導くことができるということだ。

妻は料理の手間を省く目的で『カットキャベツ』を頼んだのに、伝達者がWHATしか伝えなかったこと、買い手がWHATしか考えなかったことでミスコミュニケーションが発生した。手間を省くはずが逆にメニューを変更したり、買い直す手間がかかってしまった。つまり、効率化するつもりが逆に効率が悪くなる事態が起きてしまったのだ。これはお互いがWHYを共有すれば起こらなかった問題だといえる。

私たちが子供の頃は、沢山のWHATを頭に詰め込むことが学習であり、詰め込んだ知識から正解のWHATを引き出すことで評価されてきた。利益や効率を追求する企業では、リーダーが手っ取り早く具体的なWHATを伝達し、部下は具体的なWHATを提示されることが当たり前となった。その結果、物事を断片的にしか捉えられず、全体を俯瞰することのできない大人を沢山生み出す弊害を招いてしまった。

娘には、日頃の学習や生活において常に「なぜそうなのか」ということを意識して考える癖を身に付けて欲しいと思う。そのために私たち大人は、普段から子供たちに「なぜ?どうして?」を問いかけることを忘れてはいけない。そうすることで物事の根本を考え、手段や何をすべきかを自ら導くことのできる未来のリーダーが育っていく。子供たちの新たな挑戦を、親として応援し続けたい。

[2021年度・小学校PTA会報寄稿文]

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