見出し画像

My Oath

【初めに】

 ヴィンテージはMTG史27年すべての集大成であり、全てのカードを使用できる最も自由なフォーマットです。しかし、一部の強力なカードに対抗するために、最も不自由なフォーマットにもなりえます。
 そうしたヴィンテージ環境にはどのような脅威が存在し、それにどう立ち向かっていけばよいのか、私の相棒《オース》とともに語ります。
 本稿ではデッキの製作思想を語るものであり、オースデッキの立ち回りやサイドボードのインアウトを含んでいません。もしそういったご要望があれば、別途執筆しようと考えていますので、どうぞコメントください。

【オースを選択するということ】

 オースは《ドルイドの誓い》のコンボ要素を含んだコントロールデッキです。コントロールデッキは相手のアクションを受け続けて、スローダウンさせ、わずかなフィニッシャーで逆転を狙うことを戦略としています。そのため、コントロールデッキを製作するうえでは、受けるカードの選択が重要です。
 では、ヴィンテージに存在するデッキとそのキーカードを見て行きましょう。そうすれば、受けに必要なカードが見えてくるはずです。また、紹介する中で興味のあるデッキが出てきた場合には、詳細を検索してみて下さい。

【ヴィンテージ環境のデッキ】

 まず、ヴィンテージのデッキは総じて高速です。例えば土地と《Black Lotus》を絡めた場合、通常であれば4ターン先のマナ域まで届いてしまいます。そうした速度に対応した環境特有のデッキたちを紹介します。

《逆説ストーム》

画像1

 Moxなどのマナアーティファクトを展開し、《逆説的な結果》を用いて大量ドローするチェイン系コンボデッキです。大量の手札から《僧院の導師》を展開し、《Time Walk》で得た追加ターンから殴り倒すことを勝ち手段としています。また、《修繕》からの《ボーラスの城塞》はマナを肩代わりしてくれることもあり、軽く作られたこのデッキではライブラリーを唱え尽くすことも夢ではありません。

《闇の誓願ストーム》

画像2

 《暗黒の儀式》を使った純正のストームデッキです。《強迫》や《防御の光網》で妨害を取り除き、デッキ名にもなっている《闇の誓願》で《苦悶の触手》を探して相手のライフを吸い尽くします。《逆説ストーム》よりも平均キルターンは速いですが、計算する要素が多いことからプレイングが難しく、玄人向けのデッキです。

《ドレッジ》

ドレッジ

 《Bazaar of Baghdad》と《ゴルガリの墓トロール》のような発掘カードを利用し、墓地から《イチョリッド》などの無数のクリーチャーを高速で展開するデッキです。動きが他のデッキとまったく異なるため、メインデッキでの対処が非常に難しく、他のデッキはサイドボードに6-8枚程度の対策カードを用意せざるを得ない相手です。また、モダンホライゾンで得た《活性の力》や《否定の力》などのピッチスペルで、墓地対策を対処する構成が主流になっています。

《サバイバル》

サバイバル

 《適者生存》と《Bazaar of Baghdad》により《復讐蔦》を墓地に落とし、《日を浴びるルートワラ》や《虚ろなもの》を唱えることで高速で場に出し、殴り倒すビートダウンです。クリーチャーが主体で、シルバーバレットすることもできるため、《アゾリウスの造反者、ラヴィニア》や《溜め込み屋のアウフ》などをサーチしてヘイトベアーのように動くこともできるなどの応用が利くのも特徴です。

《土地単》

土地単

 《Fastbond》の解禁により誕生した比較的新しいデッキです。土地が複数おけることを利用して上陸をもつ《面正体のカニ》や《ハグラへの撤退》により勝利を決めます。《雲の宮殿、朧宮》や《交易路》を使って何度も土地を戻すギミックが採用されています。まだ発展途上ということもあって《暗黒の深部》を使ったロックよりのデッキも存在しています。

《RUGプレインズウォーカー》

RUGフレンズ

 近年追加された軽量プレインズウォーカーを使用するコントロールデッキです。《レンと六番》と《露店鉱床》によるロックや、《王冠泥棒、オーコ》によるビートダウンなど強力な忠誠度能力を持つフレンズで攻め立てます。Moxなどの強力なアーティファクトを奪える《ダク・フェイデン》ももちろん投入されています。しかし、コンボデッキに対する遅さがあるため、隙を補う《紅蓮破》がメインから4枚採用されることが多いです。

《墓荒らし》

墓荒らし

 死儀礼のシャーマン、タルモゴイフ、レオボルトといった旧レガシーのグッドスタッフがヴィンテージに進出したデッキです。《突然の衰微》や《暗殺者の戦利品》を採用できるため、パーマネントに対する対応力が高い一方で、スペルに対する対処は《紅蓮破》が取れないことから乏しい部分があります。グッドスタッフであるため、極端に弱いカードは存在しないものの、各デッキのブン回りには対処しきれない面を持っています。

《オース》

オース

 《ドルイドの誓い》と《禁忌の果樹園》によりライブラリーから好みのクリーチャーを戦場に出し、圧倒するコントロールデッキです。クリーチャーはどんなものでもよく、メタやコンセプトに合わせて選択されます。《王冠泥棒、オーコ》は相手のMoxを無理やりクリーチャーに変えて誓いを誘発させたり、《封じ込める僧侶》や《墓掘りの檻》を鹿に変えることで弱点を補ってくれるため、重宝されています。

《ジェスカイメンター》

ジェスカイメンター

 《戦慄衆の秘儀術師》やプレインズウォーカーを使用してアドバンテージをコンスタントに取り続けることを目指したコントロールデッキです。《アゾリウスの造反者、ラヴィニア》と《紅蓮破》が取れることから《逆説ストーム》に対して有利です。秘儀術師が《タルモゴイフ》や鹿に止められてしまうこともあり、現在は使用率が下がっていますが、最も強いクリーチャーである《僧院の導師》が取れる点で白を採用する優位性があります。

《MUD》

画像10

《Mishra's Workshop》から《抵抗の宝珠》のような妨害アーティファクトを出し、相手の対処が遅れているうちに一方的な大量マナからクリーチャーを一気に展開して殴り切るデッキです。しかし、《活性の力》の登場でテンポも攻め手も失ってしまうことがあり、最近は《不屈の巡礼者、ゴロス》を使ってアドバンテージを固めるデッキが主流となっています。

《白エルドラージ》

白ドラージ

 《スレイベンの守護者、サリア》や《輝きの乗り手》でマナ拘束をして、《難題の予見者》や《現実を砕くもの》といった強力なエルドラージで殴り倒すデッキです。MUDと似たようなコンセプトですが、アーティファクト破壊が効かないため、《活性の力》が多い環境で地位を向上させてきています。《アゾリウスの造反者、ラヴィニア》をタッチした青型や《むかしむかし》を入れたタッチ緑型など開拓領域が広いことも魅力です。

【さあ、デッキを作ってみよう。】

 さて、環境の主だったデッキとその脅威を確認しました。その中で気づいたことはあるでしょうか?
 私はほぼすべてのデッキがクリーチャーを勝ち手段にしていることに注目しました。これはクリーチャーが勝ちに直結しやすいというマジックの基本を象徴しています。カードプールが広がった中でもバーンやライブラリーアウトのようなハンドアドバンテージを失いやすいスペルによる戦略は選択されにくいとことです。
 更にクリーチャーは部族デッキのような並べること前提のシナジー重視ではなく、単体で脅威となるようなグッドスタッフばかりです。これは環境が高速化し続けた結果、カード1枚の価値や1ターンの重みを考えた上で、無駄牌をできるだけ減らそうとした結果であると考えられます。
 では、どう対処したらよいのでしょうか。除去をたくさん入れますか?相手のクリーチャーが動き出す前に勝ちますか?相手よりももっと強力なパーマネントを出しますか?クリーチャーへの《ドルイドの誓い》はもちろん有効です。
 私はその強さを利用することにしました。それぞれ強力なパーマネントで、単体で場を制圧できます。それならば、「借りてしまう」のが一番スマートな方針ではないかと考えました。ただし、簡単にコントロールが取られないように多くの奪取カードは下方に調整されています。そのため、ある程度リスクのあるカード選択が必要となりました。それは環境と逆行する単体では役に立たないカード-《液鋼の塗膜》-の採用です。

液鋼_jp

 お待たせしましたが、現在使用しているリストです。
《Dack 4mai Control》

1 Snow-Covered Island
3 Volcanic Island
2 Tropical Island
4 Misty Rainforest
2 Scalding Tarn
4 Forbidden Orchard
1 Ancestral Recall
1 Time Walk
1 Black Lotus
1 Mox Pearl
1 Mox Sapphire
1 Mox Jet
1 Mox Ruby
1 Mox Emerald
1 Emrakul, the Aeons Torn
4 Preordain
1 Brainstorm
1 Gitaxian Probe
1 Mental Misstep
1 Ponder
3 Ancient Grudge
2 Force of Negation
4 Force of Will
1 Gush
1 Dig Through Time
1 Treasure Cruise
4 Oath of Druids
1 Dragon Breath
3 Liquimetal Coating
4 Dack Fayden
1 Narset, Parter of Veils
1 Oko, Thief of Crowns
1 Karn, the Great Creator

Sideboard
3 Pyroblast
3 Veil of Summer
3 Ravenous Trap
1 Snow-Covered Forest
1 Silent Arbiter
1 Mana Crypt
1 Pithing Needle
1 Relic of Progenitus
1 Mycosynth Lattice

 このリストではパーマネントへの回答として、《液鋼の塗膜》と組み合わせたコンボをいくつか据えました。
《ダク・フェイデン》

画像12

 泥棒です。相手のあらゆる勝ち手段を借りてきます。ただし、自分のメインターンに大ぶりな動きをするのでリスクもあります。やはり泥棒には危険な香りが付きまといます。
《古えの遺恨》

画像13

 2回《名誉回復》です。カウンターにも強く、《液鋼の塗膜》と揃っていなくてもアーティファクト環境なので、対象に困ることは少ないです。インスタントなので気軽に打てるところも重要です。
《王冠泥棒、オーコ》

画像14

 すべてのパーマネントを鹿にできます。単体でも勝てる素質がありますが、相手の《王冠泥棒、オーコ》を貰った方が強いので1枚の採用です。
《大いなる創造者、カーン》

画像15

 +能力は《液鋼の塗膜》と組み合わせることで土地を0/0クリーチャーにして破壊します。また、ウィッシュボードの《マイコシンスの格子》は勝ち手段の一つです。

 これらが本デッキの環境への解答として考えた部分です。繰り返しますが、《液鋼の塗膜》は単体では何もしないため、2マナとカード一枚分の損になります。こういったカードは立ち回りが難しく、プレイの幅も広いため、ミスも多くなります。しかし、うまくプレイできて他のカードと組み合わさった時はパズルが組みあがって完成したような達成感があります。
 こういった現在使用されていないカードでも、戦略を考えれば十分に戦うことができます。私はそういったシナジー重視の無限にミスができるデッキが大好きで、潮流には逆らいますが、これからも使っていきます。

【終わりに】

 通常は見向きもされないカードが組み合わさることによって強力なシナジーを生み出すのがMTGの魅力であると私は考えています。ヴィンテージだからと言って、一部の強力なカードを使用することだけが楽しさではないはずです。折角全てのカードが使えるヴィンテージ環境です、皆さんが最も好きな相棒を最も自由なフォーマットで見つけてみませんか?
 本稿が参入に悩んでいる方の一歩に貢献できたなら幸いです。
 ヴィンテージのさらなる発展を願って。


 あと、カセルに感謝。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?