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【深い社会】05  我慢できない人は我慢をしない人なのか

ちょっと面白いので、アリストテレスの取り上げたテーマの一つを読んでみましょう。

アリストテレスは「ニコマコス倫理学」第7章で「我慢できない人」を分析しています。

「我慢できない人ってどんな人なんだろう。

食べすぎたら体に悪い、と言う知識がある。
知識があるのに、お菓子を食べてしまう。

どうして、こんなことが起きるんだろう。

一つの理由として、
知識があるって言うけれど、上っ面の知識だけなんじゃないか。
体に悪いって、本当にわかってないからじゃないかっていう議論がある。

でも、体に悪いってわかっていて、食べてしまう時もあるし、
あえて、それを忘れて食べてしまう時もあるよ。

さらに、食べすぎはよくないってわかりつつも、
ストレスを減らすためには食べるのも仕方がない、みたいに、
別の考えが働くこともある。

ほかにも、分かっているんだけど、疲れていたり酔っぱらっていたりして、知識がはたらなかったりすることもある。

結局、人間には欲望があって、知識がある。
欲望が強いときに我慢ができないのであって、
けっして知識がないわけじゃないんじゃないか。

さらに、我慢できない、の中にも、差がある。

怒りっぽい人は、怒っちゃいけないという知識があるにもかかわらず、
侮辱されたら反撃するべし、とせっかちに考えて怒ってしまう。

対して、食欲は、食べすぎはいけないという知識があるにもかかわらず、
考えを失くして食べてしまう。

食欲の方が醜いよ。なんでだろう。

これは、
苦痛を耐える-苦痛を耐えられない
快楽を耐える-快楽を耐えられない
に分けることができる。

我慢ができないというのは、
快楽を耐えられないことをいうんだね。
快楽を耐えるほうがたしかにかっこいい印象がある。

つまり、我慢できない、というのは快楽に身をゆだねていることを指すんじゃないかな。
でも、快楽が悪だとは言ってないよ。
体にいいことが快楽なこともあるわけだし。

結局、「体にいいことをする」は目的で、
我慢しない=快楽に身をゆだねるというのは状態なんだよ。
目的と状態を一緒に議論してはいけないね。

我慢できない人とは、我慢するべきこと(目的)よりそれぞれの理由で快楽を選んでいる(状態)人を言うんだね。」


アリストテレスは、このように世の中に存在する価値を一つひとつ丁寧に分析しています。
このように、不確かな事を、細かく要素に分解して、もう一度まとめなおすことを「還元主義」と言います。
分解する前と後では、物事の理解が変わってくるわけです。
今現在、私たちが生活する社会は、この還元主義が大きな影響を与えています。

還元主義は、授業の認識の場面では応用されています。

消防の仕事って何だろう→火を消す、訓練する、設備を整える、注意喚起する

しかし、価値判断の場面では、どうなんでしょう。
アリストテレスからの問題提起としましょう。


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