装釘がすばらしい書物03

「花ごよみ」
小村定吉 花狂人撰 鶴声居刊
漆塗装。折本装。
本文は手書き肉筆で折本。他に活字本も有る。



新潟出身の造本作家高橋友太郎の私刊本いまでいうZINEの先取り。
高橋氏は元鍛冶屋である。本好きが高じて自費出版するようになる。ほとんどの装丁の仕様は漆塗の表紙で本文は肉筆となっている。

花狂人とは小村定吉(ていきち・通称さだよし)
新潟出身。佐藤春夫門下。小説「由利子と米吉」等

約220×120の縦長の長方形で漆塗りなので、なんとなく位牌を思い起こさせる。狂歌の書かれた位牌なんて、なんとも粋で風狂であろうか。


高橋友太郎さんは、本好きが興じて私刊本を出すようになったそうなのだが、限定本などがなかなか手に入らないから自分で作ることにしたそうである。その考え方はなんともすてきである。欲しいものは与えられるだけでなく、自分で創ってしまえ。なんともアナーキーで素晴らしいと思う。
中央の都市から高価値だと言われる製品を与えられて喜んでいるよりも、自分たちで満足する物を少部数でも良いから創り出す。それで経済が回ればなお良しである。
鶴声居の限定本は、部数が少ない。売り切れる数、二十部ぐらいから五部というのもある。もうけはない代わりに、赤字にもならない。部数が少ないから、買ってくれた人の名前を友太郎さんはみな覚えているのだという。この「小さな商い」はなんとも今風である。


折本装。和綴じ本の一種で折本、折帖とある。


よく見ると仕上がりトンボ出てます


誤植もまた味

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