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南日本新聞「県議会考 2023かごしま統一選」を読んで その2

2月3日から7日にかけて、南日本新聞で「県議会考 2023かごしま統一選」が5回に分けて掲載されました。
各回の記事を読んでの雑感を。

第2回はこちら。自民1強の議会構成についてです。

記事の趣旨を3行で

・議会で決まる前にクローズな自民党県議団の部会の中で決まってしまう。
・自民県議団は全議員の8割近い38人。数の力を発揮
・与党化が進むと議会のチェック機能が甘くなるのではないか

国政においては、内閣総理大臣の選出及び政府の組閣をする必要があるため、近い政策・政治心情を持つ仲間を集め、政党を組むことは必要です。

ところが地方政治においては、トップである首長は直接選挙で選ばれるため、議員はそれぞれの政治理念に基づいて、判断・活動をすることが基本で、政党に属することは必ずしも必要ではありません。

もちろん、地方議会において政党に属するメリットもあります。
最も大きいものは「情報」だと思います。

市町村議会においては、自民党は意外と少なく、公明党、社民党、共産党にといった政党に属する議員の方が多かったりするのですが、これらの政党所属議員のところには、中央から時節に応じた政治課題の情報が流れてきます。そのため効率的・効果的に学ぶことができますし、各地方議会において一般質問等で、地域の状況を把握しやすくなります。

県議会においても同様ですし、特に政権与党であれば、国の予算や事業の話も得やすくなるでしょう。

一方でデメリットとしては、記事の通り、議会の意思決定プロセスが県民から見えにくくなることです。

最近ではドルフィンポート跡地への新総合体育館建設に反対する陳情の採決において自民党の2議員が採決を退席することがありました。
(この件については、こちらの動画が参考になります。退席された西村県議が経緯を説明されています)

南日本新聞の記事は、

陳情の取り扱いは多数決で決まった。しかし実際は、所管する常任委員会の総合政策建設委も飛び越し、最大会派の自民県議団が設けている「総合政策建設部会」の事前の協議で結論は出ていた。

と指摘しています。

<参考記事>

各政党には党議拘束というのがあって、法案の採決の際には党の決定に従わなくてはならないからです。党の決定、つまり党議に違反すると懲罰を受けます。反対票などを入れたら除名になるので、選挙区に強い反対論があるなどの理由でどうしても反対したい場合は、投票を欠席したり、棄権したりして処分を軽くしてもらう、せいぜいそのぐらいしかできません。

では、その党議というのは、どうやって決定するのかというと、党内の序列によって権力を得た集団が決定します。その党内の序列は、例外はあるものの、当選回数によって決まります。

ここでお断りしておきますが、この議論は自民党だけを批判するために行っているのではありません。日本の場合は少数政党でも党議拘束は非常に強くなっています。例えば、日本の政党の中で最も党議拘束の強いのは日本共産党で、党議に反する投票どころか、公の場で少数意見を表明することすら禁じられています。共産党の場合は極端だとしても、他の野党政党も相当に強い党議拘束をかけていることでは変わりません。連立与党の公明党も党議拘束は非常に強い政党です。

とにかく与党も野党も同じで、選挙運動の時はそれなりに自分の言葉で、選挙区にアピールする発言を行い、その選挙区の民意を代表して国会に行くようなことを言うわけです。ところが一旦当選して、議員バッジを身分証がわりに登院すると、選挙区の民意はどこかへ消えて「単なる一票」というモノになってしまいます。議員定数の削減が安易に語られる背景には、この議員が単なる「モノ=数」にしか見えないという問題がある思います。

この記事の指摘の通りであると思います。

問題解決のためには、例えば部会がオープンな形になれば良いかもしれません。あるいは自民党系の会派が複数あればまた違うでしょう。
(国政で自民党内に派閥があるように)

そもそも論で言えば、地方議会においては、国の政党の構図を持ち込むのではなく、政策的に近い議員同士の小規模な会派がたくさんある方が、健全な議論ができるのではないでしょうか。

民主主義においては、意思決定プロセスの透明性と多様な意見を汲み取る力が重要であると考えます。
その意味で、この企画2回目は非常に興味深いものでした。



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