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スミスのスティル・イル:鉄橋の下の切なさ

音楽人生が100倍豊かになる80年代の100曲 <その2>

The Smith "Still Ill"(1984) 

聴くたびに、いまだにジ〜ンときてしまうのがザ・スミス(The Smith)の「スティル・イル(Still Ill)」。

いまだに病んでます、みたいな意味ですね。

イギリスが1960〜1970年代の経済的に停滞していた時期を「イギリス病」というのですが、1980年代にサッチャー首相が経済的な復活のため「小さな政府」を目指すと言って歳出削減や福祉切り捨てを行っていたんですね。これをサッチャリズムというんですけど、ちょうどその時期に発表された歌です。

サッチャリズムは、政策としては正しかったと思うのですが、弱者切り捨て的な面があったためミュージシャンたちからは大不評。もちろんスミスのヴォーカルのモリッシー(Morrissey)もサッチャーを目の敵にしてました。

歌詞から「国は立ち直ったかも知れないけど、切り捨てられたおれたちはいまだに病んでるぜ」といったメッセージが読み取れ、露骨なサッチャー批判にもとれます。

でも、個人的にはそんな事はどうでもよくって、哀愁たっぷりのメロディラインと、「鉄の橋の下でキスしたけど、あの頃のようじゃなかった」ってモノクロ映画のワンシーンのような歌詞が刺さりまくり。

自分の中の弱い部分と共鳴して、たそがれちゃったりします。

スミスって弱っているときに聴くと染みるんですよね。

ちなみにスミスはイギリスのマンチェスターのバンドで、孤高のネオアコ*(スミスはネオアコじゃないという意見もありますが)なんて言われたりします。ギターのジョニー・マー(Johnny Marr)の美しいメロディとモリッシーの皮肉たっぷりの歌詞が魅力で、当時から特にイギリス国内で圧倒的な人気がありましたね。

スミスの曲では存在感として「ハウ・スーン・イズ・ナウ(How Soon Is Now?)」 の方がすごいと思うし、「ディス・チャーミング・マン(This Charming Man)」のキュートさは捨てがたいのですが、好きなのは「スティル・イル」ですね、やっぱり。

※ネオ・アコースティックの略。パンク後の80年代に流行ったアコースティックな音。おしゃれと同義語に使われることもあってアンチ・ネオアコ派もいたりします。


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