今年買って良かったものはすぐに思い浮かばないけれど
今年取って良かったなあと思ったものは、間違いなく自動車免許だって断言できる。
2023年が終わる。
今年も何もしないまま一年が終わった〜…と言いそうになって、やめた。今年に限っては何もしてないわけではなかったのだ。
けいかは激発した。
必ず、かの水声山色のエイコンスタジアムに一人で向かわねばならぬと決意した。
けいかには道交法がわからぬ。けいかは、電車通勤である。定期券を使い、都心で遊んで暮して来た。けれども自動車免許取得に対しては、人一倍に臆病であった。
…思わず太宰の名作の一文を借りてしまうような、人生の一大決心だった。
いつかは自動車免許を取らねばならない…と思い続けて早幾年。
10代の頃から日本全国、時には国を跨いで遊び回っていたものの、足を運ぶ場所はライブハウス、行政が管理する会館・ホール、お笑い専用劇場……。殆どが主要交通機関の徒歩圏内で事足りる場所ばかり。
高校を卒業したら大体のひとは自動車免許を取ってから成人していくんだろうけれど、大学時代の私は…まあ週8(週8？)くらいのペースでお笑いライブに行ってたような時期だったし…必修の関係で4年間ほぼ週5で大学にいたし…アルバイトもなかなか忙しかったし……。
簡単に言えば縁が無かった。
就職だって自動車免許が無くても家から通える場所を選んだし、会社員になってもバンドや声優アーティストを追っかけて東奔西走してそれどころではなくて…。
なんとなくそのまま自動車が運転できないまま、そこそこ良い年齢に差し掛かって直面したのが、新型コロナウイルスの流行と推しの不祥事。
色々な偶然と必然が重なり、ひょんなことがきっかけで社会人野球の沼へずぶずぶと沈んでいったのがここ2〜3年の出来事。
そして直面する。人生で初めて「足がない」ことに。
初めての現場は怖くない。未開の地である社会人野球の大会に足を運ぶのは楽しかった。神宮や大田は都内だから余裕。倉敷市営やマスカット、北九州も駅からは近いから問題なし。
オーヴィジョンスタジアム下関と東広島アクアスタジアムは……まあ歩いて行けたし許容範囲。いろんな人に「歩いたの？！」って言われたけど、歩くのは好きだから安全と時間に問題なければ歩いちゃう(今年も徳山駅から津田恒実メモリアルスタジアムまで歩いたのは楽しかった)。
問題はエイコンスタジアム。
そう、このエイコンスタジアムこそが私の人生を強制的に変えた。いや、そんなことある？って思うよね。エイコンスタジアム側も多分びっくりしてると思うけど。
2022年にエイコンスタジアムに行くことを決めたとき、直前まで結構本気で徒歩か自転車で行こうとしてた。
そのときはたまたま車を運転できるお友達が一緒に行ってくれたので、運転をお願いして現地に行ったわけだけど……
いや……
山道、山道、山道で倉敷から1.5時間…………
徒歩か自転車で行けるわけないだろうが！！！！！！！！！！！！！
衝撃。
自分ひとりで現場に足を運ぶことが困難な場所が存在する事実に脳天をかち割られた。
(…と、ここまで書いて河口湖ステラシアターに10年通ってたり出雲大社でライブ見たこともあったよな？あそこもなかなかハードな立地では？と思い出したけれど、そのときはうまいことなんとかしてたから除外する)
自らが多趣味であることを認めた上で、それらの趣味がいずれも恵まれた立地でしか催されていなかったことに、こんな形で気付くとは思わなかった。
社会人野球に半身浸かりきって、もう抜け出せなくなった状態で直面する「中国地区で野球を見るには、自動車免許が無いと無理なのでは…？」という残酷な現実、ちょっと気付くのが遅い気もするが……。
『免許が無ければ、タクシーを使えばいいじゃない？』
勿論、脳内のマリー・アントワネットは真っ先にそう囁いた。現に平松政次球場に足を運んだときはタクシーを使った。
最寄りは備中高梁駅。電車の来る頻度はまだ許せるレベル。駅前にタクシー会社もある。エイコンに比べたら余裕では！と思ったんだ。タクシーの運行台数が少なすぎて30分以上駅前で待ちぼうけするまでは……。
人手不足！！！！！！！！！！！！！！！！！
地方、そしてタクシー業界の深刻な現状をこんな形で痛感するとは思わないじゃないか。社会問題に切り込んでいきたいわけじゃないんだよ私は。球場に行って帰りたいだけなんだよ。
そんなこんなで2023年1月を迎える。仮にエイコンでの試合が2022年と同じ10月中旬にあるとしたら…時間は限られている。
平日は仕事に行かないといけないし、土日は野球やライブがあるし……
けいかは、単純な女だった。未来を、考えないままで、のそのそ教習所にはいって行った。
太宰リターンズ。
四の五の言わずにやるしかねえ！そんな前のめりな気持ちだけ抱えて教習所に足を踏み入れた私が見たものは………某プロ野球チームのドラフト1位ルーキーのサイン入り色紙。出鼻を挫かれる。え？
他にも数人の若手のサインが並んでいたので入校手続きをしながら尋ねてみると、合宿免許で利用していたらしい。そんなことあるんかい。
変な縁を感じながら始まった仕事・趣味・教習所の並行生活は、途中いろいろな自信を喪失したり逆に開き直ってみたり、突然巨大な雹に襲われたり大雨強風に巻き込まれたり、めちゃくちゃ野球に詳しい教官が担当になった日は「岡山の球場…マスカットスタジアム…？」とか言われて動揺で運転に集中できなくなったりしたりものの、すべて一発合格！で、なんとか半年で免許取得。
(免許センターの試験、大寝坊して受付締切1分前に到着していろんな人に嫌な顔されながら試験教室飛び込んだけれど、まあ…受かったからいいや………)
そして免許取得から2ヶ月半後、いよいよエイコンスタジアムまで一人で運転して向かうことに。走れ！けいか！
エイコンスタジアムに邪智暴虐の王がいるわけでも、竹馬の友のセリヌンティウスがいるわけでもない。でも、メロスが妹の結婚式に向かうこととおんなじくらい、私にとってはオーシャンズを見にエイコンスタジアムに行くことが大切な用事だった。
この日のために、それなりの金と時間をかけて私は頑張ったんだ！！！
結果としては、無事故で往復3時間×2日間走破。我ながらよく頑張ったと思う。
途中カーナビの言ってることと求められた道が違って訳の分からない道をぐるぐるまわったり、岡山伝統のウインカー無し車線変更にビビり散らかしたり、急カーブの遠心力に恐怖してスピード緩めまくったりしたけれど…。
反対車線で勢いよく縁石に乗り上げて完全に事故った軽自動車を見た瞬間は流石に叫んだ。長距離運転するのがはじめての人間の目の前で、とんでも運転するのやめてください！！！
いろんな人に「岡山の運転はヤバいぞ」と脅されまくっていたけれど、どう考えても初心者マークつけたレンタカーの運転の方がヤバいだろ常識的に考えて。
それと、「あ、普通に千葉の運転のほうがヤバいな」と痛感させられることが多発したのも、ある意味無事に運転できた理由かもしれない。毒を以て毒を制するシステム。
千葉に住んでて、よかった〜〜！
目標ができて、目標のために予定を逆算して、計画通りに資格を取得して、準備して、そしてしっかり目標を達成できること。
そういうお仕事に就いているなら日常茶飯事なのかもしれないけど、生憎そういうタイプのお仕事をしてるわけでは無かったので、ちょっとこの達成感が心地よかった。
心地よいまま、こうやって大晦日を迎えている。
大厄じゃん！とビビり散らかしていた2023年を、やればできるじゃん！という自信がつく一年にすることができたのは、この目標があったからかもしれない。
自信をつけたので、年末の平松政次球場もレンタカーを借りて行ってみた。千葉じゃ滅多に見ることがないえげつない濃霧に襲われた。
困惑しながらも安全運転を心がけ、カーナビにおとなしく従って行ったら、いろは坂みたいなヤバい山道に連れて行かれた。濃霧の中。死ぬかと思った。ポップに自信なんかつけるもんじゃない。
まだ免許を取得して5ヶ月しか経ってない割に、いろいろな経験をさせてもらえて幸せです…ということにしておく…。
たぶん惰性で免許を取っていたら、こんなにちゃんと運転に向き合わなかったと思うし。
ただ、性格がとにかく用心深いので、運転するたびに寿命が縮んでるような気はしている。白髪の増えるスピードが加速しているような…。
と、とりあえず2024年も西日本を縦横無尽に駆け巡ります！たぶん！
2024年もよろしくお願いします。
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