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住民税と所得税、違いを説明できますか?

 サラリーマンの給料からは、毎月税金が天引きされています。その正体は、「住民税」と「所得税」のふたつです。

 似ているけど少し違う、住民税と所得税。実際に私が受けた問い合わせを基に、それらの違いや仕組みをご説明させていただきます。

※税額の細かい算出方法等については、この記事では割愛しております。

どうして同じような税金を、別の名前で2重に徴収するのか


 このふたつの一番の違いは、住民税は地方税で、所得税は国税であることです。

 住民税は、【所得】から【控除】を引いた【課税標準】のおよそ10%が税額となります。【課税標準】の大小に関わらず(≒稼ぎが多くても少なくても)、税率は一律で10%であることがポイントです。

 例えば「〇〇県▲▲市」の住民であれば、住民税の内訳は県民税が6%、市民税が4%です。住民税は「市民税・県民税」とも呼ばれます。

 上記の場合、住民税には〇〇県の県民税も含まれていますが、住民税の賦課決定と徴収は▲▲市が行っています。住民税に関する問い合わせ、課税証明書の発行等は、▲▲市役所で行いましょう。

 所得税も住民税と同様、【所得】から【控除】を引いて【課税標準】を算出します。ただし、所得税は【課税標準】の大小により、税率が5%~45%で変動します。稼ぎが多ければ多いほど、税負担が大きくなる仕組みと言えます(=累進課税)。

 所得税に関する問い合わせ、所得税の各種手続き(確定申告等)は、管轄の税務署で行いましょう。


3月に引っ越したのに、なぜ住民税は引っ越し前の自治体に納めるのか


 住民税は、前年中に受けた行政サービス(道路の使用、ゴミの収集、公園や図書館の利用等)の対価として、前年中の所得に応じて負担するものです(=応益性の原則)。

 したがって、住民税を納める自治体は、その年の1月1日(=賦課期日の住所地と定められています。

  具体例:令和4年3月にA市からB市へ引っ越した
     ⇒ 令和4年度の住民税は、B市ではなくA市に納める

 ※1年間で何度も住所変更をした場合、1月1日(=賦課期日)の住所地へ1年分の税額を納めることになっています。住んでいた期間に応じて、分割して納める、ということはありません。

 一方で所得税は、原則その年の所得に応じて、その年中に負担する(徴収される)仕組みになっています。住民税と違い応益性という考え方はありませんから、その年の所得に対して課税されます。

 ※少し踏み込んだ内容ですが、例えば海外移住している人が日本国内で不動産業を行っている場合、その所得に対して住民税は課税されず(日本で行政サービスを受けていないため)、所得税のみ課税される(日本国内で稼ぎがあったため)ことになります。


退職して収入が無くなったのに、どうして住民税を納め続けるのか


 先に説明した通り、住民税は前年中の所得に応じて算出されますから、たとえ現在の収入が皆無であったとしても、課税されることになります。

 新入社員の方は、基本的に前年中の所得はありませんから、初年度は住民税が発生しません。しかし3月で退職された方の場合、前年中は給与所得がありますから、その年の6月に今まで通り住民税が課税されます。退職し給料からの天引きはできませんから、納付書あるいは口座振替によってご自身で住民税を納める必要があります。

 ここで、住民税を理解するために、ふたつの時期・期間について整理しておきます。

 ①住民税の算出に用いる、所得の算定期間 ⇒【前年1月~前年12月】
 ②住民税における年度の概念と納付期間  ⇒【当年6月~翌年5月】

①算定期間=オレンジ ②納付期間=青

 ①所得の算定期間は前年の1月~12月であることがポイントです。同じく1月~12月の所得の情報が記載された、源泉徴収票や確定申告書により住民税を賦課決定しています。

 ②「年度」と聞くと、自然と4月~翌年3月を想像してしまいますが、住民税はそうではありません。サラリーマンであれば5月に税額が決定し、勤務先を経由して年間の税額が通知されます。その後、6月の給料から翌年5月まで、毎月の給料から天引きされます。
 ※自営業の方等は、6月に決定、通知されます。

 同様に、所得税についても整理してみます。

 ①所得税の算出に用いる、所得の算定期間 ⇒【当年1月~当年12月】
 ②所得税における年分の概念と納付期間  ⇒【当年1月~当年12月】

①算定期間=②納付期間=黄色 ※12月に年末調整し、納税を完了

 ①算定期間は住民税と同じく1月~12月です。先に説明した通り、応益性という考え方はありませんから、前年ではなく当年の所得により算定します。

 ②「年度」の概念は無く、「令和〇年分」と区別されます。サラリーマンは毎月の給料から天引きされ、年末調整により精算し、原則その年中に納税が完了します。
 ※自営業の方等は、翌年の3月15日までに確定申告をして、納税を完了します。


おわりに


 私たちは収入を得ると、金額に応じた住民税と所得税を納める義務があります。それぞれについて、少しでも関心を持っていただき、その違いについて理解いただけましたら幸いです。

 また、お住まいの自治体のホームページをご覧いただくと、住民税の仕組みについてより分かりやすく解説されたページもあると思います(当然、私の記事より正確で詳しい情報が掲載されています)。

 中には、住民税の試算ツールを導入しており、住民税額はもちろんふるさと納税の限度額まで試算できる自治体もあります。

 少しでも興味のある方、さらに詳しくお調べになりたい方は、是非一度ご覧いただくことをおすすめします。



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