投資について考える
自分はいわゆる「バイサイド」の仕事をしている。お客様から預かった資金を厳格なルール・方針に従い、細かく定められた内規に沿って、組織としての意思決定に基づき売買を行う。けっして自分の思い通りにできるものではないが、組織の意思決定に自分が及ぼす影響は大きい。大ロットの資金を携え、機関投資家の一員として金融市場でプレーすることは大変やりがいのある仕事である。
一方で、自分はけっして「投資家」ではない。仕事を通じて、投資(主に債券投資だが)に関わる知識・経験を得たものの、自分の資金を本気で運用したことがない。バイサイドの一員として、市場の様々なプレーヤーから認知されるよう、自分の能力を高めることに精一杯であり、自分の資産のことを考えるまで至らなかった。
著者は大手証券会社で人生の前半を過ごした後、人生の後半は三井系企業に転じ役員に就きつつ、「投資家」として自己の金融資産の増殖に努めたという。自分も人生後半を考えるうえで、「投資家」を業の1つにしたいと考えている。この書籍は、そんな自分に有益なアドバイス・刺激を与えてくれた。
著者は以下のように「バイアンドホールド」でなければ金融資産は構築されないと述べている。
過去50年の間に、日経平均が2~4年で2倍以上になった大相場が6回あったという。自分がサラリーマンとして仕事をしている間、「バブル崩壊以降、日本株は儲からない」という印象が強かったが、実際にはチャンスがあったということであり、今後もあるということだ。また、著者は大天井圏の見分ける際のヒントについて以下を指摘する。
同じように、大底圏の見分け方の他、銘柄選別のポイント(日経225から選ぶ、大株主に注目する等)や市場行動(3分の1づつ投資する、「何もしない」ことを恐れない等)が書かれているが、それら以上に、実際に金融市場に向きあう前段階の行動や習慣の大事さを強調している。
投資で成功するには通常の人には得られない「特別な情報」「特別なコネクション」が必要のように思えるが、著者は新聞やニュース番組の定点観測と、読書(特に古典)の大事さを説いている。短期の鞘取りではなく、大局観からリターンを得るという考えであり、自分も共感するところだ。
また、著者は特に触れていなかったが、投資で成果を挙げるには、常に金融市場に対峙し、「習慣」を維持することが大前提となっていると感じた。著者にとっては当たり前すぎることかもしれないが、世の中にはロボアドバイザーや自動売買等、市場からあえて離れる流れも存在する。自分は、著者が言うように、市場は今どこにいるのか、何が織り込まれているのかを日々、大量の情報から取捨選別をし、じっと考え抜くやり方に共感する。それは自分の趣味もあるかもしれないが、著者は冒頭で以下のように述べている。
知的ゲームならば、多額の授業料を市場に払ってもやむを得ないという。「一行動一目的」。一番大切なメッセージはここかもしれない。本気で「投資家」になるのか、「投資家」っぽく生きたいのか、自分が本気で「投資家」になりたいのであれば、それに応じた「習慣」を取り入れなければいけない。この本でもっとも重要な気づきである。
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