シェアハウス

家が無いので、部屋を探さなくてはならないのだが、ひとりで6万も7万も払うなら、ドーンと一軒家を借りて4人くらいで住んだら楽しいじゃないか、調べてみれば20万ほどで都内でも立派な一軒家を借りられるし、そもそも日々の寂しさというか何というか皆がこぞって文章にしたがる冬のあの感じは、みんなで一緒の家に住めば完全に解決するじゃないか、などとまで思考が及び、その思考とめぼしい物件をいくつかまとめたものを友人同士のLINEグループに投げかけてみると、4人が共鳴し、やるしかない、やらねば、「明日4人で不動産に行こう」と盛り上がり、あれを買ってこれを買ってと頭いっぱいにシェアハウス生活を膨らませながら就寝。

次の日、その高揚のあとしっかり睡眠を取った4人は、約束通りに直接顔を合わせ、無理である、という結論を出した。魔法が解けたのである。とりあえず、あと1、2年はお金を貯めて、極力リスクを負う事なくやることにしよう、ということに、我々は大人なので、落ち着けて、どんなに遅くとも2年後には東京で一軒家を借りると誓い、そもそも東京で一軒家を借りてみんなで住む以上の幸せなど存在しないのだから、いいのだ、それが人生の最後のターニングポイントであり、その後の人生など、あって無いようなものなので、シェアハウスを実現して人生を終わらせるには、2年後、という期間は至極現実的であると言える。みな、頂上を目指して山を登る。シェアハウスをしてしまったら最後、それ以上の幸せはない。下山を目当てに山を登る奴などいない。

バカみたいな顔をして集まった4人は、そんな現実的な着地を早々に終え、まったくやることがなくなってしまった。2年後にシェアハウスをする4人、というだけだ。さらに1人すぐに帰ったので、2年後にシェアハウスをする4人、のうちの、3人、である。やることのない、こういった停滞感を、同じ一軒家に住むことで解決できる気がしてやまない。一緒にいてやることがないのも、一緒にいて話すことがないのも、外では困った問題だが、同じ住居にいれば心地のよい停滞になる。

前に進むことを考えればいいのに、いかに心地よく停滞をするか、そのことばかり考えている。明確に、自分が停滞をしたいのだとわかった日であった。寒いので帰りました。

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