生活の地獄

淡いブルー、あるいはグリーン……詳しく色を思い出すのもおぞましいあの封筒、せめてもの抵抗として乱雑に封を開け、中に入っていた書類を読む。部屋の更新12万円、どうするかどうか決めてください。全身に強い衝撃を受け、思わず尻もちをつき、書類はヒラヒラと宙を舞う。裏面には一言、こう書かれていた。「生まれたあなたが悪いのです」

というのは冗談だが、しかし更新費として家賃を約2ヶ月分取られるのは初めてだ。詐欺詐欺詐欺詐~欺詐欺詐欺!!と騒ぎ立て、周りの人間に聞いてみても「まあ、それくらい取るところもあるって聞くよね」とか、そんなことばかり。今まで俺は、家賃1ヶ月分に加え保険の更新料を取られたことしかない。3万円以上の手数料など取られた覚えなどないのだが、だいたい手数というのは一体何なのか。不動産という仕事をしている以上、入居者の契約更新は必須手続き、それを手数と呼ぶのは納得がいかない。飲食店の店員に、「ここまで運ばせていただきましたので手数料をいただきます」などと言われたらどうか。まったくおかしな話、金などこの世からなくなったほうがいい。

現状維持のために12万円も払っていられない。前に住んでいた荻窪のアパートは、初期費用16万円ほどだったのだ。それなら引っ越してしまったほうがよっぽど気持ちが良い。しかし、仕事のない身分、新居を探すのは少々ハードルが高く、それならば2年前にやったように、住処など投げ捨てるのが正解、どこかビジネスホテルでも取って、ケーブルテレビでも見ながら優雅に家無し生活を送る、なんと幸せなのだろう。

とはいえ、現実を考えると、12万円を払って現状を維持するのが得策であるのは間違いない。家がないのは楽しいことばかりではない、いろんな人間に迷惑をかけるし、役所の手続きとか面倒くさいし、何より2年前、俺はなぜか円形脱毛症になった。思い当たる理由はただひとつ、家がなかったからだ。自分なりに楽しんでいるつもりだったのだが、無意識のうちに頭皮の神経が匙を投げてしまうほどのストレスにむしばまれていた、その事実を忘れてはならない。それに、そのとき世話になっていた当時の恋人にだって死ぬほど迷惑をかけた。何もせず寝てばかりの居候が円形脱毛症を発症したとき、さぞ意味が分からなかっただろう。髪が抜けたいのはこっちだわと叫びたかったに違いない。

まあ、更新するかしないか、まだ3週間ほど悩む時間がある。今のところはしてたまるかと思っていますが、その思考だって更新されるかもしれない。人生は常にアップデートの繰り返し、それが進化であれ、退化であれ、ツイッターは早くいいねを星に戻せ。

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