2020年を振り返る

2020年1月。年越しは高円寺の居酒屋だった。1年に1度、大晦日にだけ24時間動き続けるJRの電車に乗って高尾山に行くという友人を見送り、私はまっすぐに帰宅。なぜ帰宅しなくてはならなかったのかは覚えていないものの、帰り道に音楽を聴いて泣いたことは覚えている。2019年になって1発目に聴いた音楽はコレクターズの百億のキッスと千億の誓いであったが、2020年は気志團のワンナイトカーニバルだった。綾小路翔も俺みたいなのに泣かれるために作ったわけではないだろうに、そんな申し訳なさを感じてさらに泣いたのだ。

1月15日。誕生日を迎えてしまい、24歳になってしまう。24歳はもう決して若くなく、俺の内面は20歳くらいの頃から一切変わっていないため、単純に損をしている。俺は30歳にはならないのでまだいいものの、加齢の速さには恐怖を感じてしまうほどであり、俺は30歳にはならないので大丈夫だけど、(俺は30歳にはならないのにこんなことを言うのは不謹慎かもしれないが)こんな調子だと30歳なんてあっという間だなと痛感する。

杉並区に引っ越してきたときはまだ22歳だったのだ。まっとうに生きている同級生がまだ大学4年生なので、高卒フリーターの22歳はまだセーフだったのが、24歳ともなるとそうはいかない。かといって別に終わってもいないのがつらいところで、24歳なんてまだまだ若くて、しっかりとした努力をすればまだまだいくらでも立て直せる段階であり、そんな時期にまったく何もせず左右を見ないまま一直線に崖へと突っ走ることにある種の快感を覚えてしまっている、その人間性こそが終わっているのである。1月は考えることが多い。

2020年2月。ねとらぼ様が映画コラムを書いてもいいよ、と言ってくれたので『フォレスト・荻窪・ガンプ』という不定期連載がスタートする。10年間観続けてきて培った膨大なB級映画の知識を、やっと活かせる場が見つかり本当にありがとうという気持ちでいっぱいである。初めての記事は、この世で最も好きな映画『スーパーバッド 童貞ウォーズ』を紹介した。編集者との顔合わせ兼打ち合わせで、ああでもないこうでもないと初記事のネタ案を投げ合った末、いったん持ち帰りましょうということになり、帰り支度をしながら「城戸さんって一番好きな映画何なんですか?」という軽い雑談に「スーパーバッド童貞ウォーズです」と答えると「わはは、何すかそれ、わはは、それでいきましょう」と、今まで何だったんだよという着地で初記事が決まったのが印象的だった。

2020年3月。オモコロ編集部、そして阿佐ヶ谷ロフト様のご厚意により単独イベントの機会をいただき、『High school prom night massacre』と名付けた催しが3月15日に行われた。尺が3時間もあり、3時間もステージで何をやればいいんだと頭を悩ませながら何一つ解決せず当日。人様からお金をいただいているというプレッシャーをビールで打ち消し、こんばんは!こんばんは~~~こんばんは!とステージで挨拶をし続けていると3時間なんてあっという間で、心配も杞憂に終わり、本当に楽しい時間を過ごすことができました。人生において、『単独イベントをする』という項目にチェックが入りました。ありがとうございました。

2020年4月。新型コロナウイルスが猛威を振るい始め、長い自粛生活が始まる。やることと言えばしこることくらいで、窓の外を浮遊する新型いつもの2倍しこらせウイルスが憎くて憎くて仕方が無かった。4月いっぱいどこにも行けないなんてほとんど永遠じゃないか、縦の糸はあなたで横の糸は私じゃないか、春の陽気は、窓を少し温かくするだけで出番を終えてしまった。

2020年5月。大多数が予想していた通り、自粛要請は引き延ばされ、5月いっぱいまで永遠が続くことになった。バイトにも行かず、さすがに耐えられないので散歩したり、近所の友人に会ったりはしたものの、基本的には自粛を全うする日々。TSUTAYAが営業していたことには本当に助けられた。4月から放置していた、部屋の壁を這いまわっている蜘蛛がだんだんと大きくなってくる。昔からなんとなく、蜘蛛は自分の味方であるような気がして、あまりこわくない。

2020年6月。何とか自粛期間も終わり、感染対策を徹底しながら普段の生活を送りましょうという時期に突入。さすがにバイトをしなければ生活が立ち行かないので、横になることに慣れてしまった身体を無理やり動かしながら這いつくばる日々が始まる。

6月は、とあるコンテンツのプロモーション映像に出演するという案件をいただいた。意気揚々とスタジオに出向き、撮影を済ませ、公開されるのを今か今かと待ち望んでいた頃、担当者から普段の俺の言動を見たクライアントからNGが入ったという知らせを受ける。実はクライアントからNGを受けるのは2度目で、もちろん非常に残念なことではあるものの、”大企業から認知をされ拒否された”という事実もそれなりに嬉しいもので、好きと嫌いは紙一重と言うし、なんだかんだで良い経験であった。

2020年7月。雨が降り続ける。低気圧により偏頭痛に襲われ続け、さらに気分が沈みこみ面白いことなど何ひとつ思い浮かばない中、外出や人との接触を避けて映画を作ろうという、リモート映画祭なるものの存在を知り、拙い短編映画をなんとか作り上げて応募する。普段やっている(つもりである)”笑えるものを作る”のとはまた別の脳の使い方ができて楽しかった。

2020年8月。夏がやってくる。運転免許の更新に行くも、俺の社会に適合できない部分が猛威を振るい、失敗に終わる。いつまで経っても一皮むけない人間包茎であるという事実を再確認するばかりで、夏らしいことなど何もできなかったので、25日に友人とレンタカーで夜の海へ。駐車場から砂浜へと歩いている最中に見かける自動販売機はどうしてあんなにも光っているのか、とりあえず今年いっぱいは生きていけるほどの思い出を得ることができた。

人生は楽しいものですね



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