ヤクザが怖い

たまに、やくざ映画やギャング映画を観ていて、やくざって全然身近にいるんだよなあ、なんて気持ちになって、というのも俺は実家がやくざみたいなもんだったから、本当にやくざっていう存在は結構あたりまえというか、ファンタジックに感じられない部分があるので、「ああ、俺が世話になっている不動産がやくざだったらどうしよう」とか、「管理会社がやくざだったらどうしよう」「国分太一がやくざだったらどうしよう」みたいなキリのない不安にさいなまれては、たばこの煙が壁に染みないよう決意する、というもしかしてだけどもしかしてだけどこの家の不動産やくざなんじゃないのムーブが定期的に起こり、そのたびに参ってしまう。

しかしインターネットでちまちま調べてみたところで「こんにちは。〇〇不動産です。やくざで人殺しです」なんて書いてくれているわけもなくて、しかしやくざではありませんように、という祈りだけじゃどうしようもない。ことに、俺は先月家賃を振り込むのを忘れてしまったのである。1週間くらい過ぎたあたりで気が付いて、お詫びと服従の表明も兼ねて2ヶ月分の家賃を振り込んでおいたのだが、3,4件ほど入っていた不在着信を上手に無視をしてしまった(俺は上手に無視をすることができる)手前、家に白竜でも送り込まれて命乞いの余地も無く殺されてしまうのではないか、銃で額を、咥え煙草で、と気が気でないのである。どうせなら山口祥行や本宮泰風に殺されたいが、俺のところにはきっと白竜が来るとおもう。

そんな恐怖におびえ、やくざがこしらえたかもしれない床の上でモゾモゾと横けつをしこるような動きを取りながら、わたしの住む物件の不動産のホームページをチェックしていたら、あの阿部寛のサイトみたいに死ぬほど軽くて、更新が2013年で停まっていて、内見に使う車を1台ずつ写真付きで紹介していた。普通やくざが、内見に使う車を1台ずつ写真付きで紹介しようと思うだろうか?ラインナップされている車も、ワゴンRやキューブなど、どれも庶民的で、車内の匂いまで細かに想像がつくほどなじみ深いものばかりである。やくざなわけはあるまい。俺はすっかり安心しきってスクロールしていたが、別の写真にスモークの貼られたアリストが写っていた。言ってもアリストなんて、四角くて黒いだけでそう怖いクルマではない。アリストテレスという偉大な哲学者がいるし、同じ名前の速い馬もいるから大丈夫である。家賃の振り込みだけは忘れないようにしたいものですね、、、

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