頭の中でラーメンが食べられない

今まで誰にも言ったことが無かった、というか、人に言うって考えにすら及ばなかったほど極私的な悩み、それが、頭の中でラーメンが食べられないという事で、想像の世界というのは何だって自由、自在、思い通り、叶わない夢などありゃしないはずなのに、私は想像の世界で、ラーメンを食べることができません。

ラーメンを食べるとき、というか食事をするとき、利き手で箸を操り、麺を掴んで持ち上げて口に運ぶという動作が必要になる。普段はもっぱらその動作を利用して食事をしている。現実でラーメンを食べるときも、頭の中でラーメンを食べるときも、その動作は変わらない。

しかし、右手で箸を掴んで麺を持ち上げ、口に運ぼうとした瞬間、なぜか俺の掴んだ麺は箸を滑っていき、持ち手の内側に潜ってしまうのだ。熱っ!俺としたことが、ちょっと箸を上に向けすぎたかな、と、箸を下に向け、麺をスープに滑り戻してから、再度挑戦をする。必ず箸を上に向けすぎないようにしよう。箸をスープに向けて下り坂にしておけば、持ち手に滑ってくるなんてことは物理的に起こりようがない。そう心がけてまた箸で麺を掴み、口に運ぼうとした瞬間、なぜか麺は箸を滑っていき、持ち手の内側に到達する。この繰り返し。頭の中で何度試しても、必ず麺は箸を滑り、俺はただの一口もラーメンを食べることができない。頭の中、想像の世界なのに。

一部のグレた脳細胞たちがコイツには頭の中でラーメンを食べさせてやるまいと非行に走っているんじゃなかろうか……と何らかの病理を疑ってはゾッとするような毎日をこれまで送ってきた。だって頭の中でラーメンが食べられないって、俺は頭の中でたけしになったりたけしになって空を飛んだりたけしになってクロールで50m3秒出したりできるのにラーメンは食えないって、しかもラーメン大好きなのに…

しかし、絶対に食べられないというわけでもない。ちょっとズルになるのだが、頭の中でラーメンを食べられるようになる裏技っていうのがあって、これ相当体力使うから極力避けたい手段ではあるんだけども、箸の先端付近に輪ゴムを巻くのだ。そうすると、その輪ゴムがストッパーになって、麺の滑りを阻止し、俺は晴れてラーメンを食べることができる。

しかし、輪ゴムに動きを阻まれた麺からはゴムの味がするし、どことなく養殖っぽい印象を受けて、真の意味でラーメンを食べたとは言い難い。し、あんまりこの食べ方を続けていると、いつか麺がそのストッパーすら飛び越えるようになってしまうのではないかという不安もある。頭の中でラーメンが食べられないくらいどうってことない、他のは自由に食べられるんだから、と試しに回鍋肉を頭の中で食べてみたら、箸を滑っていった。助けてください

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