見出し画像

エネルギー白書を読んでみる【vol.4】

第3部 2021年度においてエネルギー需給に関して講じた施策の状況
第3章 再生可能エネルギーの導入加速~主力電源化に向けて~ 
第1節 競争力のある再エネ産業への進化
より

はじめに

 再生可能エネルギーの主力電源化には、再生可能エネルギーを電力市場へ統合していくことが重要となる。これを進めるため、2022年度より、FIT制度に加えて市場連動型のFIP(Feed-in Premium)制度が導入されることになった。FIP制度においては、発電事業者自身が卸電力取引市場や相対取引で売電する。そのため、FIP制度の導入に当たっては、必要な環境整備、特にアグリゲーターの活性化が重要となる。

アグリゲーター(リソースアグリゲーター)とは、
需要家側エネルギーリソースや分散型エネルギーリソースを統合制御し、VPPやDRからエネルギーサービスを提供する事業者のこと

1.コスト低減、電力市場への統合に向けた方向性

(1) FIP制度について

 FIP制度は、再エネ発電事業者が、発電した電気を他の電源と同様に卸電力取引市場や相対取引で自ら自由に売電し、そこで得られる市場売電収入に加えてプレミアム価格による収入を得られるようにし、投資インセンティブを確保する仕組み。さらに、FIP電源の持つ環境価値については、市場とFIP制度の双方からの環境価値の二重取りにならないようにする前提で、再エネ発電事業者が自ら販売する仕組みとなっている。

(2)再エネの市場取引を進めていくための環境整備について

 再エネの市場統合のためには、再エネ発電事業者自らが発電した再エネ電気の市場取引等を行う必要がある。その具体的な方法としては、
①自ら卸電力市場取引を行う方法
②小売電気事業者との相対(直接)取引を行う方法
③アグリゲーターを介して卸電力取引市場における取引を行う方法
の3つが主に想定される。
一方で、これらを引き受ける小売り電気事業者やアグリゲータにとっては、発電予測や出力調整が、従来電源に比較して難しい再エネによる電気を相対取引するインセンティブが低いことが課題となる。

2.需給一体型の再エネ活用モデルの促進

(1)家庭・大口需要家

 住宅用太陽光発電の価格低下による自家消費のメリットの拡大やFIT卒業太陽光の出現により、今後は、自家消費や余剰電力活用の多様化が進んでいくことが期待される。一方、住宅を購入する多くの消費者にとっては、太陽光発電の設備投資に伴う追加的な経済的負担は大きく、ZEH化の課題になっている。

(2)地域

 再エネ電源を自律的に活用する地域での需給一体的なエネルギーシステムは、
・エネルギー供給の強靱化(レジリエンス)
・地域内エネルギー循環
・地域内の経済循環
等の点で有効である。そのため、地域の再エネをコージェネレーション等の他の分散型エネルギーリソースと組み合わせて利用する等、地域レベルで再エネを需給一体的に活用する取組が今後の課題となる。
 また、自営線を活用してエネルギーを面的に利用する分散型エネルギーシステムの構築については、導入コスト等の採算面や工事の大規模化が大きな課題となっている。こうしたコスト面の課題解決に向けて、災害時の大規模停電時に既存の系統配電線と地域にある再エネや分散型電源を活用して、自立した電力供給が可能となる地域マイクログリッドの構築が進められている。

3.認定案件の適正な導入と国民負担の抑制

 現在、日本の再エネの発電コストは国際水準と比較して依然高い水準にあり、FIT制度に伴う国民負担の増大をもたらしている。日本の再エネの発電コストが高い原因として、例えば、太陽光発電については、
①市場における競争が不足し太陽光パネル・機器等のコスト高を招いていること
②土地の造成を必要とする場所が多く、台風や地震の対策をする必要がある等、日本特有の地理的要因が工事費の増大をもたらしている
といった点が挙げられる。

4.立地制約のある電源の導入促進(洋上風力のための海域利用ルールの整備)

(1)洋上風力をめぐる世界の動き

 洋上風力発電には陸上風力発電と比較して次の特徴がある。
・陸上よりも比較的風況が優れているため設備利用率をより高めることが可能である(世界平均では陸上約30%、洋上約40%)
・輸送制約等が小さいため大型風車の設置が可能であり建設コスト等を抑えることができるので、コスト競争力がある
・事業規模は数千億円に至る場合もあり、また数万点と部品数が多いため、部品調達・建設・保守点検等を通じて地元産業を含めた関連産業への波及効果が期待できる

(2)日本の状況と再エネ海域利用法の運用

 主に次の2つの課題により、日本においては導入が進まない状況にある。
1つは、「海域の占用に関する統一的なルールがない」こと。
従来、海域の大半を占める一般海域は占用の統一ルールがなく、都道府県が条例に基づき通常3〜5年の占用許可を出す運用がなされていた。FIT制度の調達期間の20年と比較して短期の占用許可しか得ることができないため、中長期的な事業予見性が低くなり、資金調達が困難になっていた。
もう1つは、「先行利用者との調整の枠組みが不明確である」こと。
海域を新たに利用するに当たっては、海運業や漁業等の地域の先行利用者との調整が不可欠であるが、調整のための枠組みが存在せず、事業者には大きな負担となっていた。

 これらの課題の解決に向けて、2019年4月に「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律(平成30年法律第89号)」(以下「再エネ海域利用法」という。)が施行された。
 本法律により、自然的条件が適当であること、漁業や海運業等の先行利用に支障を及ぼさないこと、系統接続が適切に確保されること、等の要件に適合した区域を促進区域として指定し、公募による事業者選定を行う。選定された事業者は、区域内で最大30年間の占用許可を受けるとともに、FIT制度に基づく認定を得ることができる。公募による事業者選定では、長期的・安定的・効率的な事業実施の観点から最も優れた事業者を選定することで、コスト効率的かつ長期安定的な洋上風力発電の導入を促進する仕組みとなっている。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?