二次創作でゲームを作ってみて解ったこと。~ゲームと著作権・知的財産権・法律の話~

この記事は、ゲーム制作者が自由な記事を作るアドベントカレンダー 12/18の記事です!

こんにちは、ドラクエ5二次創作ゲームHEAVENLY BRIDE V.Vの作者のシンゴビッチです。今年の3月30日にゲームをリリースして役9か月程度が経ちました。

おかげ様で、DL数が3000を越えさせていただきまして、フリゲ2023にも投票報告をいただいて恐悦至極でございます!

今回 HEAVENLY BRIDE V.Vは"アングラじゃない二次創作ゲーム"をコンセプトに”いかにして、二次創作のゲームとして一次創作のような作品”を創るかをキーにして作りました。

今回はこの作品のコンセプトを話しながら、ゲームで考慮すべき著作権・知的財産権を解説しながら、創作界隈におけるゲーム業界の特殊性の話をできたらなと思います。



知的財産権の不侵害に成功したHEAVENLY BRIDE V.V

著作財産権

まず、HEAVENLY BRIDE V.Vを作るにあたって最初に決めたのは、”画像を絶対に抜かない”ことでした。

ゲームの画像はその企業が持つ財産なので、これをした瞬間に画像盗用になります。アングラで作るならともかく、”表に出す”ことをコンセプトにした"HEAVENLY BRIDE V.V"では絶対にありえなかったです。なので、無料有料問わずフル活用して作りました。

HEAVENLY BRIDE V.Vのゲーム画面、敢えて”ドラクエの画像をゲームデータから抜いてない”アピールをするためにツクールデフォルト素材も活用している。
HEAVENLY BRIDE V.Vのゲマ。ツクールVXからMZのエネミー素材を総動員して作成しました

特許権

あとフリーゲームではあまり関係ないのですが、念のため特許も調べました。例えば"HEAVENLY BRIDE V.V"のスキルツリーシステムの特許はスクエア・エニックスが持っていますが(FF10スフィア盤で特許を取得)、2021年に特許が切れるので、少なくとも2021年以降リリースはその時点で切りました。

HEAVENLY BRIDE V.Vのスキルツリー。スキルツリーやスフィア盤と言った、”ポイントを消費してプレイヤーが任意でスキルを順番に習得していくシステム”の特許は2021に切れた。しかしフリーゲームでは本来はいらない配慮。

商標権

ドラクエのロゴと名前は商標登録されているので、この時点で”ドラクエ”の前は使わないことに決めました。ロゴについては、名前に”ドラゴンクエスト”を使わないことで類似性の回避を試みています。

HEAVENLY BRIDEのスタート画面。ドラクエの商標権を侵害しないように、敢えてドラクエの名を使わず、ロゴも特徴的な剣のイラストを排している。だがこれもフリーゲームなら本来不要な配慮である(実は海外の商標を調べるのを忘れていたが、フリーだから”まぁ、いっか!”で済ませたのは内緒である(笑))

使っても知的財産権の侵害にならないもの

人名・町の名前・呪文等の名詞

著作権の前提として、創作性のあるもの、ごくありふれた名前で無いものとい条件があります。記憶に新しいのですが、「小説ドラゴンクエストV」作者の久美沙織さんが、2019年公開の映画「DRAGON QUEST YOUR STORY」で主人公の名前「リュカ」や公的な呼び掛けを無断で改変・使用されたとしてスクウェア・エニックスや東宝を訴えていた裁判で、東京地裁は10月20日、久美さんの請求を棄却してます。

道義的にはスクエニ側に落ち度があるとは思いますが、あくまで法律に則った目線で言うと、東京地裁の判断は妥当だと思います。


町の名前や呪文の名前だけでは著作権の侵害になりにくいい(著作権を主張するには、名前が短すぎる)

画風

HEAVENLY BRIDE V.Vは鳥山明風の画風を採用してます。塗り方を変えているのは、法律の観点抜きにして”鳥山先生やドラクエの画風を完全そのままに使うのは畏れ多い”という意味で変えましたが、著作権は完成されたものを保護するもので、画風は著作権の保護の対象に入りません。

画風は著作権の保護の対象にならない

ちょっと箸休め、ホンモノのこだわり

幸いながら、HEAVENLY BRIDEは”ドラクエの再現度の高さ”で高評価をいただいているわけですが、この作品を作るうえで一つ心掛けたことがあります。

それは"ホンモノを作る事"

じつはこの作品を作る際、スーパージャンプにかつて連載された『ゼロ THE MAN OF THE CREATION』の主人公、”ホンモノを作る男ゼロ”の気持ちで作っていました。

ゼロは作中では”贋作者”と言われていますが、オリジナルが作られた時点における作者の心理状態を分析し、作者になりきることで、オリジナルと全くの作品を作っていました。

HEAVENLY BRIDE においても、当時のエニックス、開発元のチュンソフトの様子やインタビュー記事を読んだり、ドラクエ5発売当時の社会情勢を調べたりして、”1992年に開発やっていた人が今ドラクエ5の続編を作ったら”という仮定の下でつくりました。

このこだわりが無ければ、HEAVENLY BRIDE V.Vはドラクエであるという評価は得られなかったと思います。


では本当に著作権侵害をしていないのか?

結論から言いますが、ここまで配慮してもホンモノを目指しはしましたが、残念ながら答えはNoです。

著作権には2種類あり、著作財産権と著作人格権です。確かに著作財産権はHEAVENLY BRIDE V.Vは違反していないと思っています。ただやはりどうしても元ネタがドラクエである以上、著作人格権の侵害は避けれないです。

二次創作をやる以上、著作人格権には必ず抵触します。厳密にいえば”完全な私的利用”に限りOKで、訴えられなければいいとか、著作権侵害は親告罪とか、ガイドラインがあると言っても”著作人格権に抵触”していることには変わらないのです。

著作人格権侵害が見逃されている理由

二次創作は全て著作権侵害である。ではなぜコミケやコスプレイベントで大量の二次創作同人があるのに、摘発されていないかというと、良く論争で
出てくるのは、ファン活動だからという理由、あと多すぎて捕まえられない。なんてのもあります。


コスプレも実は著作権に触れてたり(注:写真は5年ぐらい前のシンゴビッチがしてたコスプレです"w)

まぁ、悪いことをしていないからという理由なんですが、”法律に違反しているのに悪いことじゃないワケがない!”という方もいると思います。

実は著作権法は一度改正を試みて、ある一定の枠の二次創作を許容するような改正の動きが当時の文化庁であった模様です。しかし結局は”許容範囲の線を決めきれないし、今のままでも問題は起こってないから変える必要が無い”という結論にいたって、結局改正はされなかった模様です。結局、TPP
の影響で懸念された”非親告罪化”にSTOPがかかっただけでした。

まぁそもそも日本の法律には"議論不十分で改正されていない"法律が稀にあって、例えば暴行罪は公務執行妨害は”触れなくても恐怖を感じただけで逮捕できる”なんてのもあるわけで・・・(これ以上話すと別の話題になるので割愛)

ゲーム制作界隈の著作権絡みで感じること

外から来た身として思ったこと。

自分は、15年ぶりにゲ制制作界隈に戻ってきた人間です。

それまではコミケにサークル参加してみたり、コスプレ参加してみたり、あるいは自分の趣味の一つであるJリーグでも旗と作ったりしてるんですが、割と著作権に寛容な世界で生きてきた人間です。

こういう感覚なのでゲームも二次創作であるHEAVENLY BRIDE V.Vを創ったのですが、ゲーム制作界隈は二次創作にかなり厳しい界隈だと思います。

掲載サイトや、プラグイン制作や素材提供でも二次創作作品だからという理由で多数断られていますし、リリース後でもHEAVENKY BRIDE V.Vにおいてレビュー掲載サイト数は1件※だけと、おそらく著作権絡みで二の足を踏んでいるのではないかと思われます。

※当初目標は
DL数1000=現在3000(達成!)
実況数5=現在8件(達成!)
ファンアート1=現在2件(達成!)
レビュー数3=現在1件(これだけ未達)

この記事をあえて書いているワケ

まぁ正直二次創作なので、盗人猛々しいと、ここまで書いていると思われているかもしれません。まぁ二次創作と著作権に対する温度差の違いはあると思いますが、それよりもゲーム制作業界における法律関係で”知らない割にムダに慎重になりすぎてビビっている”感じを受け取ります。

例えば、ある無料の素材サイトで規約変更に伴い、自分のゲームにおいて使うには規約とあわなくなったことがありました。

ですが、民法で言う無料でも契約であり、ダウンロードした時点で契約は成立していることになるので、規約変更があったとしても今後使わなければ良いのであって、今までダウンロードしたものに関しては問題なく使っていいのです。

しかしながら、結構影響力があるゲーム制作者などが、その素材を規約変更により使わないとX上で宣言したのは自分の中で大問題だと思っています。

何故かというと、”素材の規約変更は過去に遡って適用される”という誤った風潮を広げる結果になりかねないと思ったからです。確かに今後素材制作者と良い関係を築こうと思ったのかも知れませんし、素材制作者がいないとゲームが作れないので尊重する意思もあるとは思いますが、何もそこまでしなくても良い。

その素材制作者が過去の遡及適用まで考えたかは解りませんが、少なくとも今後これを見て”素材の利用規約の遡及適用は出来る”と思った制作者が現れると面倒なことになるので、ここは毅然とした態度を見せる……いやそもそも遡及適用の話が本人からは無かったので、今後の事も考えてスルーが正しいのでは?と確信してます(ちなみに自分は当然スルーして、今までダウンロードした素材はそのまま使い、今後は使わないようにした)

法律は正しく理解して恐れるな!

もう一つなのですが、これは自分自身が直接クレームを入れたのですが、ツクールの公式ストアでのダウンロード商品は、以前は購入前に利用規約は全て読めませんでした!

正直驚くべきことで、しかも買った後にしか読めない箇所に利用者に不利になる規約が書いてあり(素材の暗号化解除の条件が購入前に確認できない所があった)、自分はこれを”利用規約の全文が読めない場所にあるのは、消費者契約法第3条違反なのでは?”と指摘して返金してもらったことがあります。

おかげさまで今のツクールストでは購入前にちゃんと利用規約を全て読めるようになりました。本来法律というのは”理解して自分に身を守れる便利なもので”あって、”恐れる”ものではありません。ちゃんと正しく理解すれば意外と便利なもので、逆に敵に回すと本当に窮屈です。


今でこそ利用規約詳細のページのリンクがあるが……(画像はツクールストアより引用)

みなさんも正しく法律を理解してより幅広くゲーム制作をしてみませんか?


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