見出し画像

ラジオ沼

随分長い間、noteを書いていなかった。フジロックの記事を書いて以来か。今読み返すと誤字があったりは気になるけど、我ながらいい記事が書けていると思う。その記事の最期の方にも触れたラジオについて、今回は書いていこうと思う。

コロナが始まって2年がたった。どうやら今時点で3年もすぐ経ちそうだ。こんなにこの騒動が長引くとは2年前はちょっと想像していなかった。もともと酒も飲まないし、友達もいないので、ソーシャルディスタンスや時短営業など、仕事以外ではあまり影響はないのだけれど、人と話す機会がより減ってくるとどうしても自分の内側に意識が向かう。そんな時にイヤホンで聞くラジオは、自分だけの自分のためだけの言葉のようでズルズルと沼にはまっていった。

中学生のころ、まだ自分の部屋に自分だけのTVがなかったので、代りにCDラジカセで夜にラジオをたまに聞いていた。山田ひさしのラジアンリミテッドは思い出の番組だ。それともう一つ、僕にとって重要だったラジオが、”松本人志の放送室”だ。放送作家高須光聖との2人しゃべりなのだが、映像がなくても松本人志のしゃべりは面白く、夢中で聞いていた。今でもたまにYouTubeに違法アップロードされているので寝る前に聞いたりしている。それから自室にTVを買い、室内アンテナを取り付けて地上波の放送を見られるようになり、僕の興味はやはりTVのお笑いへと移っていった。タモリのジャングルテレビ、明石家マンション物語、内村プロデュース、めちゃイケ、ガキ使、とんねるず、あらゆるお笑い番組から、僕は”面白い”ということに憧れた。人を笑わせること。かつて松本人志は著書の中で、人を無防備にさせられる瞬間なんて、セックスのときと笑っているときくらいだと言っていた。僕はセックスで相手を無防備させる自信はいまだにないが、笑わせることができるようになりたいとこの時思ったものだ。

話をラジオに戻そう。

この歳になって改めてラジオを聞くようになったのは、やはり上記に記したように今の現状が大きく影響しているだろう。加えて、無意識のうちにより面白い事、笑える話を求めていたのかもしれない。

ラジオの芸人はテレビより面白い。

これはラジオ好きなら全員承知の事実だと思う。テレビでは踏まなきゃいけないブレーキを、ラジオでは割と緩ーく踏んでいる。そんな感じだ。だから今までテレビで見ていた芸人の本当のしゃべりのポテンシャルを知るような、”より面白い事”がラジオにはある。

僕が好きなラジオ芸人は、伊集院光、爆笑問題、東野幸治、有吉弘行、ハライチ、アルコ&ピース、オードリー等々…

彼らの魅力は、そのしゃべりのスキルは勿論だが、どこか世の中に対してひねくれていて、嫉妬や妬み、自身に対する卑屈な姿勢があるところだ。彼らはこれまでの人生で多くの負けと挫折を味わっており、結果他人に対して100%の信頼や期待、全ての人を愛して愛されようという思いがない。ここが好きだ。誰しも嫌いな人間や、嫌いな物事はあるのだけれど、それに対して無理やりポジティブに変換しようとする風潮が僕は大嫌いだ。嫌いな人間とは一生関わらずに生きていきたいし、嫌いな事は逃げてでもしたくない。ところが現実に仕事をして生活をしていれば、嫌いな人間にも出会うし、嫌いな事からも逃げられない。そんなストレスを同じようにしゃべって、笑いで昇華してくれるラジオが僕は好きだ。

負けるということは、そこで人生終わり、くらいに若いころは思っていたしそうならないように必死で勝ち続けようとしてきた。勝つためにロックンロールを聴いて自分を鼓舞してきた。勝つためのエネルギーがブルーハーツでありハイロウズでありハイスタだった。ところが、負けてしまった後で彼らの本当の魅力を理解できた。それは優しいということだ。どんなにダメな自分でも肯定してくれるのがロックンロールであり、笑いだった。

僕がずっと好きなものの2つ、ロックンロールとお笑いの共通の、というか僕にとって唯一の魅力はその優しさだった。激しい音やライブの中に、毒のある笑いの中に、優しがあって、いつでも僕を許してくれるのだ。

なんだかここまで書いていてまあまあ自分でも気持ち悪いこと言ってるなあと思えてきた。つまりこれはだらしない自分を無条件で肯定してくれる(そう勝手に解釈している)もののせいにして、僕はこのままずっとだらしないですよと宣言しているようなものだ。それで本当にいいのかはわからない。それが幸せなのかもわからない。現に僕は一生遊んで暮らせるような大金も、巨乳で美人の奥さんも、まともな友達すら持っていない。年齢も随分重ねてきてこの分だと40歳まで一気にいきそうだ。その歳になってもまだ、あそこのリフレ嬢はオプションが寛容だとか、シコるためのオカズ動画をネットの無料動画から1時間も検索しまくったり、週4で一人鍋をしたりしてるのだろうか。たぶんしてるだろ、これ。この今の感じ。そのうち両親も死んで、唯一の家族になる2つ上の姉とも疎遠になり、いよいよ一人ぼっちになることをそんなに恐れないのも、ロックと笑いがあるからだ。

これからもこの沼からは当分抜け出せまい。当面の目標はラジオで自分のメールを読まれることだ。実は去年1度、東野幸治のホンモノラジオで採用されたことがある。これで僕は1年分くらいの自尊心を得たのだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?