お酒の蘊蓄
最近、一人酒に蘊蓄を傾けた本を2冊読んだ。1冊は漫画家東海林さだおの「一人酒の時間」、もう1冊は稲垣みえ子「一人飲みで生きていく」。一人酒とは限らぬが、毎晩お酒を飲んでいる僕には、とても面白い2冊であった。
ビールに枝豆は合わないとの東海林さだおの主張には同調しないのだが、キンキンに冷えたビールこそビールの醍醐味であるという点では意見が一致する。ところが、最近は冷えたビールは流行らないそうである。西洋ではそういうビールの飲み方はないそうである。しかし西洋がどうであれ、冷えたビールは美味いのだ。僕は毎朝、ビールのグラスを冷蔵庫の冷凍庫に入れて、夜の風呂上がりにおもむろに取り出して、キンキンに冷えた缶ビール(あるいは瓶ビール)を注いで、ぐぃっと飲む。至福の時である。
稲垣さんの「一人飲みで生きていく」は、新聞広告を見て早速amazonで購入したのだが、読み始めて、上手い書き手だなと思った。それから経歴を読んで、そうですか新聞記者だったんですか、と納得した。インテリなのである。その中年女性が意を決して、一人で飲み屋の暖簾をくぐる。その失敗談満載のユーモア・エッセイである。
稲垣さんはもっぱら日本酒党である。それも熱燗がお好みのようである。取材で日本酒の知識を得て、一人で飲み屋に入り、知った銘柄を見つけて、さっそく「熱燗で」と注文したところ、店主から「このお酒は冷やでお勧めしています」とカウンターパンチを食わされた、等々、涙ぐましい奮闘記である。そして、ついに「一人飲みで生きていく」極意を体得するのである。
著者も書いているように、コロナ最盛期にこの本が出版されたのは不運であった。一人酒場で飲む酒が、なんでコロナウィルスを繁殖させるのであろう? はなはだ疑問である。酒場に休業要請は無理無体である。一人静かに飲む酒くらいは許されて当然ではなかろうか。
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