ねぇ、キスして?
『昨夜未明、東京都港区で、通り魔事件が発生しました。20代の男性が1人死亡。目撃者はいません。』
朝から物騒なニュースだな。
しかも近所じゃないか。
このニュースを見たら、実家から心配して電話が掛かってきそうな予感がして、案の定掛かってきて、大丈夫だからと折り返した。
目撃者はいない。犯人不明か。
全然大丈夫じゃないよな。
そんな事を思っていたら、
家のチャイムが鳴った。
警察かもと思ったら、案の定警察で、
何か気付いた事は無いかと聞かれたけど、
夜中だったし、普通に寝てたし、
何にも気付かなかったと返した。
◯◯:はぁ…
何もしてないのに警察来るとビビるな。
通り魔か。
20代男性って…下手すりゃオレが被害者になってたかもしれないんだよな。
犯人が捕まるまでは気を付けなきゃな。
◯◯:ん…もしもし?
彼女からの電話。
やっぱりニュースを見て心配してくれたらしい。
◯◯:うん、危ないからこの辺で会うのはやめとこうね?
でも不安だから一緒に居たいと言う。
それならオレが行くよ、と。
◯◯:今は警察だらけだから安全だよ
そう言ってオレは彼女の家まで行く事にした。
犯人の背格好も分からない状況ってのがマジで不安なんだよな。
気を付けようがないんだから。
??:あの
◯◯:んぉ!びっくりした…
急に死角から声掛けないでくれよ。
??:凄い警察いっぱいですけど…何かあったんですか?
◯◯:え?ニュース見てないんですか?昨夜あの辺で男の人が殺されたんですよ
??:えぇ!?怖い…
◯◯:お姉さんも気を付けて下さいね?
??:…1人にしないで下さい
くいっと袖を掴まれ、震えた表情で見つめられる。
いや、そんな目で見られても。
可愛いけど。
◯◯:オレ…行かないと…
??:…彼女の所ですか?
◯◯:そうだけど…
鋭いな。
??:それは今行かないといけないんですか?
◯◯:それは…
??:私の事も…守って下さい…
◯◯:はい!?
彼女は躊躇なくオレの胸に顔を埋めた。
◯◯:な…何してんの!?
??:怖いんです…1人になりたくない…
◯◯:参ったな…そんな事言われてもさ…
警察に保護してもらうか…。
??:…嫌です…警察嫌い…
◯◯:え?
??:今…警察に保護してもらおうとか考えてますよね?
鋭すぎる。
しょうがない。
彼女に説明して一緒に連れて行くしかないか。
??:良いんですか…?
◯◯:…また考え読めたの?
??:はい、それは止めた方が良いかと
◯◯:え…なんで?
??:あなたが変に思われるだけです
どういう事だよ。
◯◯:じゃあ…もうどうしろってんだよ…
??:…迷惑ですか?
そんな目で見ないでくれ。
??:…そうですよね…これから彼女さんの家に行って…あんな事やこんな事を…
余計な事言うな。するよ。悪いか。
??:私が殺されたら…あなたのせいです
◯◯:それはちょっと酷くないか?
??:私がこんなに震えているのに、あなたはいつでも会える彼女を優先するんですね
ヤバい女に絡まれてしまった。
もうどうにもならないこの感じ。
ああ言えばこう言う系女子。
◯◯:もう分かったよ…!気が済むまで一緒に居てやるよ…!
??:最初からそう言えば良いんですよ…💕︎素直じゃないなぁ…💕︎
何なんだよこの女は…。
??:ねぇ、キスして?
◯◯:はぁ!?
いや、キス顔めちゃくちゃ可愛いけど。
◯◯:いや、彼女いるんだって…
??:今は…忘れて…💕︎
おいおい…マジかこの女…。
??:キスしてくれたら…もっと気持ち良くしてあげる…💕︎
彼女…オレには彼女が…。
ヤバい…理性が…。
数ミリ先の唇に触れてしまったら…きっと止まらない。
でも…可愛い…したい…この女と…。
ちゅっ…。
『本日昼頃、東京都港区で、通り魔事件が発生しました。20代の男性が1人死亡。目撃者はいません。』
??:ふふ…💕︎美味しかった…💕︎
END