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【2023年】私の推し本(岡田ウェンディ)

今年は西東京読書会に2回参加させていただき、その時の課題図書2冊と、翻訳家で西東京読書会世話人をされている小林さゆりさんの訳された1冊をご紹介します。

『誰?』
アルジス・バドリス著
柿沼瑛子訳
山口雅也=製作総指揮
国書刊行会
2022年12月20日発行

東西冷戦下、アメリカの天才物理学者ルーカス・マルティーノは、極秘計画の実験中に大爆発に巻き込まれ、ソ連側に救助(拉致?)され、大手術の末に一命をとりとめます。ところが、その手術は、マルティーノの外観を別人に変えてしまいました。爆発による損傷がひどかったため、顔は卵型の金属の仮面に代わり、ほとんど全身が機械でできたサイボーグみたいになってしまいました。目の虹彩も指紋もなくなり、声も機械音声になり、もうかつてのマルティーノの痕跡は残っていません。マルティーノをソ連から返してもらったアメリカ側は、本当にマルティーノなのか突き止めようとしますが……。
この作品が発表されたのは物語と同じく東西冷戦下の1958年ですが、今も全く古い感じはなく、柿沼瑛子先生の新訳でみずみずしく蘇っています!
みずみずしいといえば、本作は現在のサイボーグ・マルティーノと、若きマルティーノのエピソードが交互にさしはさまれて展開していくのですが、若きマルティーノの青春の葛藤とかロマンスなんかが、個人的にはツボでした。SF、スパイサスペンス、YAの要素がつめこまれた、最後までどきどきハラハラを楽しめる作品です。同時に、作品全体に静かに流れる孤独が胸に沁みます。
読書会のある参加者の方が「“自分が誰かは誰が決める? 最後に残るものって何?”という本」という言葉で表現されていたのが印象的でした。

『私の唇は嘘をつく』
ジュリー・クラーク著
小林さゆり訳
二見書房
2023年3月20日発行

西東京読書会の世話人をされている小林さゆりさんの訳書です。
ウェブ記事ライターのキャットと、キャットがレイプ被害に遭う原因を作った女詐欺師メグの視点で、現在、10年前、2年前のエピソードを織り交ぜながら物語が進みます。
とんでもないクズ男たちに正義の鉄槌を下す女詐欺師メグが、ものすごくかっこいい!
特に10年前のメグが、壮絶な貧困から抜け出そうと、ある高校の校長(自分の高校時代の数学教師だった)を陥れるエピソードが最高でした。メグとキャットの関係に変化が起き、最後のメグからキャットへの手紙では、おもわず目の奥がつーんとしてしまいました。痛快&胸アツの傑作です!


『ウィン』
ハーラン・コーベン著
田口俊樹訳
小学館文庫
2022年11月9日発行

大金持ちにして超イケメンで遊び人、武道家なみに喧嘩が強く、法の及ばない悪を暴力で解決する男ウィン様。完璧すぎて鼻に着くけど、父親との間に葛藤があったりして、ちゃんと人間くさいところがまた魅力的です。読書会ではウィンの性格に賛否両論ありましたが、私は好き! ある絵画が盗まれ、そこに殺人事件や未解決の学生運動にまつわる事件、おぞましすぎる〇〇事件(自粛)が入り組み、月並みですがページをめくる手がとまりませんでした。ほんと月並みですが。「ええ?!」とびっくりしたい人に特におすすめです!

(※Amazonでの購入を促す意図は特になく、アフィリエイトにも参加していません)

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