24鹿島アントラーズに今思うこと

2024/2/2
我等が鹿島アントラーズは宮崎キャンプにおけるトレーニングマッチを3試合消化した。

一戦目 デゲバジャーロ宮崎 2-1
二戦目 徳島ヴォルティス 3-1
三戦目 ヴァンフォーレ甲府 0-2

いずれもカテゴリーの異なる相手であり
クラブの取り組みの段階に差があり
一概に得点の様子で物事を語るのはナンセンスだと思うのだけれど敢えて得点だけみれば

「あぁ、現段階では得点力がないな」

という率直な印象を持つのは自然なことだろう。
しかし、物事はそこから始まるのであり
そこからが楽しいのである。
正直鹿島アントラーズの未来は明るいと思っている。

明らかに見えた昨年からの進歩

今回のトレマ三連戦では昨年からの明らかな進歩、変わり身が見られた。
昨年までのことは、同志の皆様には既知のことと思われるが、話の便宜上、言葉を選ばず言うならば“選手任せ”の攻撃だった。
それは岩政監督の人間性から来るものなのか、選手を労ってのことか、可能性を潰したくないという意図もあってのことと思うが

結果的に選手に迷いを生じさせていたことは記憶に新しい。

可能性を潰さないというメリットよりも、迷いによる攻撃の停滞を招いていたことは昨シーズンの試合、結果からは明らかで鹿島アントラーズの大きな課題でもあったと思う。

しかし、今年は選手のインタビューにもあるようにポポヴィッチ監督はよくも悪くも強くやりたいことを要望する監督だとのこと。
その要求に近づくと「ブラーボ」の掛け声と共に選手を鼓舞し、クラブ全体の空気を明るくする一方で違うこと、駄目なことはハッキリという。
CBには前線への繋ぎの部分で既に要求が出たとのことで、今まさに改造が行われているという段階なのがよく解る。

それらの背景、状況を理解した上でトレーニングマッチを見るとガラリと評価は変わったというのが率直なところ。

まさに選手が何をすべきかを理解し、その上で監督の要求を忠実に表現しようと躍動しているのがよく解る。

良いことか悪いことかは別として、これは日本人の国民性もあるのではないかと仮定している。

最低限の決まりだけ決めて、自分達で好きにやって良いよと放たれるよりも、こうして欲しいと“強いリーダー”に導かれたときのほうが、元来より持っている統率力を発揮し、自信のなさ、不安を払拭し、持っているスキルを全て注ぎ込める民族なのだと思う。

ポポヴィッチ監督の要求は
①スピーディーに
②連動してコンビネーションで崩し
③ゴールに迫る回数を増やすこと

とインタビューで語っている。
まさに諸々の試合はその要求通りにだった。

最後のシュートの精度にこそ我が軍の弱点があることは否めないが就任して間もなく、明らかにポポヴィッチの色にクラブは変わりつつある。

ここで、各選手ごとに感じたことを述べてみたいとおもう。

◎藤井、濃野くんのライン

まず最初に感じた鹿島の新しい色はサイドの前線スペースに抜けていく疾走感溢れるコンビネーションである。

藤井は昨年と逆の右サイドでプレーしているようで、今年から入団したサイドバックの濃野くんと上手く連携し何度もペナルティ際に抜け出すシーンを演出。

そのままゴールに迫るシーンもあり大変期待できる武器になりそうだという印象。

◎知念のボランチコンバート

今シーズンの目玉の一つとしてポポヴィッチ監督のコンバートがある。その最たる例が恐らく鹿島のサポーターも、他のクラブのサポーターも全く予期しなかった知念のボランチである。

ポポヴィッチ監督が知念のどのプレーを見て、何を感じてこのコンバートを選択したのか一人のサポーターの知る術は今のところないのだけれど、これがよくハマっている。

相手はまだ別のカテゴリーで参考にしかならないが
それにしてもボールの奪取、その後の散らし、組み立てというボランチとしての仕事を淡々とこなし、その上で本職はストライカーなので隙を見ては前に運び、シュートにまで持っていけるセンスも勿論ある。

コーナーになれば勿論ターゲット候補にもなるので、強力。今後佐野が海外移籍するリスクもあり、後述するように柴崎岳が怪我勝ちなため
このコンバートを発案したポポヴィッチ監督の功績は計り知れない。

◎徳田くんの可能性

2種登録で破壊力を見せたストライカーといえば最早鹿島→世界のと冠名が変わった我等が上田綺世の記憶がまだ新しいが

その活躍を匂わせる存在が徳田誉くんだ。
この三戦でも三得点とチーム最多で絶好調。強烈なロングを決めたときは監督の「ブラーボ」も最高潮に達して不安続きのチームに明るい話題となっている。

もっと連携を深めて、絡める回数も増えていけばシーンも増えるし、新加入のチャヴリッチ、鈴木優磨と組むことでかつての先輩の輝きに勝っても劣らない活躍だって夢じゃないはず。

○パレジ献身性、積極性

鹿島の伝統と言えば、ジーコから続くブラジル人助っ人の存在で、今年も王国からパレジが助けに来てくれた。

南米特有の陽気さに、クラブのために、勝利のためにという姿勢はクラブの公式動画の随所に現れサポーターに早くも親しまれている。

実際のプレーもその前のめりとも言える献身性、積極性が現れて、度々得点シーン、ゴールに迫るシーンが見られている。

まだ本調子ではないのかシュートの精度、威力に不安は残るものの、シーズンに向けてどうなっていくか見ものだし、昨年からチームの要の一人である仲間と同じポジションであれば、チームに色の変化をつけられるので昨年にあったような攻撃の停滞を打開する一つの手段となるだろう。

△津久井くんのCB

我が軍は深刻なCB不足に陥っている。既知のようにチャルシッチを一度は招いたもののメディカルチェックをクリアできず本契約に至らないというアクシデントもあり、控えにいた昌子が町田に移籍した穴を埋められていない。

それだけでなく、トレーニングマッチで副将の植田直通が負傷しいよいよ守備は火の車といった様相になってきた。

そんな中で、奮闘してくれてるのが津久井くんである。昨年は殆ど実戦経験を積めなかったがチームの台所事情にあわせて今年は先輩同様に経験を積む機会に恵まれた。

まだ流石に、植田関川のクオリティにはないしチャルシッチの代わりを彼で落ち着かせるには早い段階ではあるが、充分可能性を感じるプレーを見せてくれているのが頼もしい。

明るい話題ばかりではない

勿論こうした明るい話題が続くなかで、そんなに前向きになれない事情もある。
タイトルに近いと思われる有力なクラブは、既にトレマで大量得点をするような内容に仕上げているクラブも珍しくなく、開幕に向けて準備万端といったところで、我が軍の仕上がりはまだ希望的観測が強いことは否めない。
その上で以下のような問題が発生している。

補強が不充分?怪我人も続出

主要クラブの補強同行は各自追って貰い、割愛するとして、我が軍の補強は果たして充分であったか?という疑問がある。

やや人的に過多であった昨年から我が軍は今年大幅に人員を放出した。

スンテの引退や、ピトゥカのサントス復帰に加えて抱えていた外国人選手を一斉に放出。
更に試合出場機会に恵まれなかった荒木、昌子を主とした日本人選手も放出しチームのスリム化をはかった。

その一方でクラブは弱点でもあった得点力強化のためにブラジル人のパレジ、セルビア人のチャヴリッチを獲得。この補強は方向性として的確だったしパレジのトレマでのパフォーマンスは恐らく及第点といったとこで、チャヴリッチはまだ日本での実績はないものの移籍元の成績は23-24シーズンで15得点。24-25シーズンも既に9得点6アシストと今後の活躍を期待するに充分な内容である。

問題は守備である。
佐野海舟は既に日本代表に帯同し、試合出場も果たしている。ドイツやベルギーなどからオファーも届いており、今冬は見送られそうだが今シーズンを通しての活躍はどうやら見込めなさそうだ。

本来であれば柴崎岳、樋口と三人で回しバックアップとして舩橋というのがスタンダードなプランであったと思われるが柴崎岳がここに来て怪我で離脱。昨年も同様に怪我をしており、通年でフル稼働というのがどうも怪しくなってきた。

舩橋もまだそれら偉大な先輩の穴を埋めるというステージには早く、ボランチ問題がどっかりと座り込んでいる様相だ。
そんなものだから知念のコンバートは鹿島にとってはまさに旱天慈雨の出来事だったのだ。

厳しいのはボランチだけでない。
鹿島の関川、植田の鉄壁の守備を誇るがそのバックアッパーとして控えていた元日本代表の昌子がゼルビアに移籍。このようなことは、プロの世界では多々あるので仕方がなく、強化部もチャルシッチを召集し迅速に対応した。

しかし、そこでアクシデントがおこる。
まさかのメディカルチェックをクリアできず本契約に至らないという、正に青天の霹靂。

誰も悪くないのだが、これで大きく予定が狂ってしまった。お世辞にも補強が上手いとは言えない、特に昨今の鹿島にしては珍しく的確な補強であったのに、実に残念な出来事。

仮にそこがクリアできていたなら、練習を見る限り強靭な肉体とスキルを見せていたチャルシッチは最も頼れる選手の一人だっただけに尚更。
これによりCBは手薄になったのだが、ここにきて植田直通が怪我。
現在は津久井くんやユースを使って回しているという非常事態ともいえる状態だ。

これらのことから察するに、攻撃はまだ戦術の浸透や、チャヴリッチが控えている分、若干楽観視ができなくもない状況とも言えるが
守備はお世辞にもタイトルを目指そうという段階にはないように思える。

攻撃はもう一皮向ける必要がある

鈴木優磨も怪我をした。
これは割と重症で、すぐに宮崎から帰京し手術をするレベルだった。顔面の複数箇所骨折だそうだ。
彼の容態が気になるところではあるが、併せて昨年は殆ど鈴木優磨=鹿島の攻撃といって良いほど、存在が強烈だった。
鈴木優磨がいなくなるか、疲労するだけで、我が軍の得点力は大幅に落ちた。皆無と言っても良かった。

一部でそれは岩政監督の力のなさと推定されていたりしたが、今シーズン、彼が怪我をしてから同じようにボールが収まらず、得点力が落ちたことがトレマで確認された。

まだチャヴリッチが控えているとはいえ
個人の力に大きく戦力が依存している段階を抜けきれていないことは今回のトレマで表出した大きな問題の一つに思う。
監督とコーチはこの辺の解決を今後鹿島に戻り着手すると思われる。

期待も不安も混在した現在地

今の鹿島アントラーズは間違いなく進化していると思う。
若手も含めて各個人が最大限スキルを発揮できるよう、要求も指示もあり、選手は確かに、その要求を表現して可能性を示している。

しかし、シーズンは長いので、アクシデントがこの先多発することが予想される。
その時、今のメンツのボリュームのままで行けるかどうか不透明な部分が多いのも事実。

私達ファンサポーターはそれを客席から見守るしかないが、常勝復活を信じてやまないし、声援を送り続けたい。

シーズンの終わりには、シャーレを掲げるクラブにブラーボと言いたい。

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