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忘却からの発掘ゴールデンウィーク

 自分が毎日使っている机。
 その引き出しなのに、底をさらってびっくりした。
 いろんなものが出てくる。
 これはなんだ、と眺めたら、サザンオールスターズのキーホルダー。

 最近のものであればまだしも、1987年あたりに行った所沢球場でのライブ会場で買ったもの。
 30年前のものではないか。しかも未開封。
 買ったことさえ、すっかり忘れていた。


 このところ部屋にモノが溢れかえり、さすがに自分に嫌気が差した。
 シンプルな生活に憧れる。
 周りをよくよく見回せば、ホントにこれがいるんだろうかと思う。
 溢れかえったモノは、どこか淀んだ心の澱のような気もする。
 なくなれば気持ちもスッキリするだろう。
 断捨離しようと決めた。

 断捨離とは、

 断=入ってくる要らないモノを断つ
 捨=家にはびこるガラクタを捨てる
 離=モノへの執着から離れる

 だそうだ。
 ぼくも人生に残された時間は多くない。
 この際いまから身辺の整理をはじめて、死ぬ間際には歯ブラシ一本と箸一膳だけにしておこうと考えた。


 ぼくはついつい、その場の勢いでものを買ってしまう。子どもの頃から続く最悪の性癖だ。
 始末に負えないのは欲しくて買っておきながら、すぐに忘れるということだ。
 ほんとに欲しかったのか、自分でもよくわからない。引き出しに放り込んだまま、瞬時に忘れる。それが積み重なる。引き出しの中はモノが溢れかえり、開けるのも手こずる。
 手始めに引き出しから整理しようと手を付けた。
 中は地層のように、下に行けば行くほど古いものが眠っている。


 続いて出てきたのが落書き。
 自分がやっているyoutubeの番組でも紹介したが、竹中直人さんが描いた松田優作の似顔絵。

 86年あたりだった気がする。
 テレビ番組収録中、ADのぼくが抱えていたカンペに、竹中さんが落書きしたものだ。ぼくも松田優作ファンだったので、そのままもって帰った。
 もって帰ったけれど、すっかり忘れていた。 
 youtubeでは松田優作フリークの友人に出てもらったので、その場で友人にプレゼントした。 
 ぼくの引き出しで眠っているより、ずっと価値はあるはず。 

 さらにその下層。 
 スター・ウォーズのバッチ。

 最近のものではない。
 1978年の日本初公開時、映画館で売っていたバッチ。これまた未開封。 
 当然のことながら、「エピソード4」という表記もない。 
 高校生の時に買ったものだ。今でこそ映画のキャラクター関連グッズは多いけれど、あのころ映画館にはパンフレットぐらいしか売っていなかった。だから買ったのだ。たぶん。
 そしてこれから先も開封されることはないだろう。


 さらに遡ると、ブルース・リーのカードが出てきた。

 ブルース・リーが大ブレイクしたのは、ぼくが中学1年生のとき。古すぎて、カードのことはまったく記憶にない。ほんとに自分が買ったのかさえ疑わしい。りっぱな記憶障害だ。


 最近、年末の大掃除では時間が足りないため、GWに大掃除をする人が増えたそうである。
 貴重な長期休暇ではあるけれど、どこに行っても人混みは激しく、また値段も高い。だったらどこへも出かけず、GWこそ大掃除をする絶好の機会ということらしい。部屋をきれいに片付けるほうが、リフレッシュできるというわけだ。なるほどなあ。
 

 とにかくぼくはズボラなもので、なんでも溜め込んでしまう。
 長く生きていれば、その量も増える。人生の経験や知恵が積み重なっているならまだしも、ぼくの場合は大半、不必要なものばかり。
 引き出しの地層は、その考古学的証拠でもある。


 手元に発掘した「子ども心の宝物」を眺めながら、半生を振り返る。
 いくつになったら、りっぱなオトナになれるのか。
 断捨離を決めた今日このごろ、一番の問題は部屋の一面に控える押し入れ。あけるのが怖い。
 地層どころか、押し入れの向こう側には、ドラえもんの4次元ポケット並の宇宙が広がっているに違いない。

(2017年4月29日記)

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