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美しいものを目にすると自らの生への疑念が生じるわけだが、
むしろその揺さぶりをこそ求めて展示に足を運んでいるきらいがある。

疑念を欲しているということは即ち己の人生を否定するチャンスをうかがっているということだ。
壊して捨て去り新しく更新するための言い訳として、
情緒にヒビの入った箇所を常に探っている。

無欠になりたいわけではないが、
破綻を招く一筋のきっかけについつい注目してしまう。


なぜ、芸術がどきりと胸を打つのか。

美しいものと対峙するとき私はいつも後ろめたいのだ。
薄暗いところから報われなかった情念の蓄積がこちらを監視している。
隙を見て壊れた箇所から止めどなく情動が躍り出る。遠慮はない。途方もない。

それで私はまた、飽くこともなくピアノに向かう。
今のところ私の人生においては、音楽がこれを受け止められる唯一の器だからだ。

安寧な日々に腰を落ち着けることにどこか抗い続けているような、
calmを渇望していながら同時に消える衝動を惜しむような、
そんな矛盾を抱えている。
仕方がないのですべて諦めて曲を書き歌をうたう。

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