魔獣軍師ジェネラルリオン 第3話

「おはよう、宿伍。」
階段を降りると、親父、お袋、そして弟……

「おはよう……」困惑した
そりゃそうだろ……俺には家族がいないんだから
「ほら宿伍、ご飯冷めちゃうわよ、早く食べてね」
椅子に座り話をしながらの朝食……これが家族か…
今までこんな夢見たこと無かったのにな

「にいさん」
この家族との団欒に不釣り合いな、冷たい声
だけどどこか無邪気な声……何故冷や汗が止まらないんだ

「にいさん……なんで僕を殺したの……にいさん!」

「うああああ!!!」
飛び起きると、夜中の3時……悪夢ってやつか
「どうしたんだい、獅子神宿伍」
窓の外を見ていたのだろうか、アスモデウスはロフトと言っていいのか、屋根裏部屋から声をかけてきた
「悪い夢をみた…俺には家族がいねぇのに、家族の夢…しかも、弟………ちっ……いいや、寝る」
「ふぅん…」

この夢が、俺の運命を決定づける日になるとは思わなかった

第3話 スコール・オブ・デッド/1

やはり寝覚めが悪い…珍しく夢に魘されたからな
「髭面、きもい」
ガチャと開いたドアから出た第一声がこれだった

「紅さん?ねぇ、かっこよくね?ダンディじゃね?」
「カッターでいいですか?嫌なら洗面所行ってください」
ダンディくらいに被せてくるあたり、余程なんだろう
目が据わっていた

「有香ちゃん、そんなに俺ひでぇ顔してる?」
ため息をついて「はい」とだけ答えた
洗面所に行き、身支度を整えると依頼人が来た

依頼人はバー経営の戸隠咲夜、見た感じホストだ
「でさぁ、探偵さんさぁ、俺んとこのBARに居るんだって、絶対さぁ」

『居る』というのは、整理すると
・閉店後の自身が切り盛りしているBARの控え室から歌声が聞こえる、見てもいない
・常連はいるが、まったく覚えのない客がいる
・いつの間にか金を払っていなくなっている、他の店員は『ちゃんとお会計してる』という

ということだ

「わかりました、本日から着手しましょう」
「サンキューちゃんでーす!!」
乱暴に握手をし、前金の入った茶封筒を置いて、ささっといなくなってしまった

「何喋っとるか、ようわかったな宿伍……」
奥のカフェスペースでコーヒーを啜っていたおやっさんは、眉間にシワをよせていた
「俺もギリギリ……そういえばおやっさん、何件も店やってる奴って言ってたけど」

ため息を1つついて、本人が話さなかった情報を話し始めた
「まずやつぁ、頭はおかしいが経営者としては天才………と言われてた親父の跡を継いだんだ。そう、タダのバカ。そんなのが得体の知れない奴らだったりBARに入れて、犯罪スレスレのことやっとるわけよ……俺は友達のフリをしとるだけだ…まぁこの依頼は……BARの見張りだけみたいだし、問題ないだろ」
有香がプリントした依頼書を見ながら、おやっさんは首を傾げた
「どうしたんだ、おやっさん」
「いや、なんでもない……」
依頼書を俺に渡すと、またコーヒーをすすり始めた
俺はBARに向かう準備をしよう…

「常連の女ぁ…?そういやぁ、見たことあったかな……」

開店前のBARの前に着いた俺は、例のドラ息子が来るのを待った
「ウェーイ、探偵氏ぃ、待ったァ?」
ほろ酔い、できたてほやほやか……
「いいのか、BARの準備できんのか?」
「だぁいじょぶぷー…………あれ?」
酔いがさめて、みるみる青ざめていくのが分かる

「いる……いるよぉ……探偵ぇ!早く捕まえろよぉぉ!!」
「わーったって!!………え?」

中からはドレスにコートを羽織った女性がカウンターに座っていた
「あら?まだ開店前よ?……サクちゃん!おっそいよぉ」

女性は「ひいっ!」という声をあげる男に近づいた
しかし、触れることなく素通りしてしまった

「あんたまさか、幽霊?」
「この人、もう手遅れかも」
アスモデウスが横から顔を出して俺に告げる。横を見ると、既に戸隠は鬼の形相で固まっていた……いや、死んでいた

「あーっはっはっはっ…やぁっと殺せたよ、うん、コロコロしたわよ!」
そういうと戸隠の体から、玉の様な物を取り出し、口に含んだ

「アスモデウス、何が起こってる!」
「あぁ、あの玉はこの男の命、魂さ……物凄い怨念と、悪魔が合体したんだ……」

じゅるりと音を立てて、魂を飲み込んだ幽霊はこちらを睨んだ
「アースーモーデーウースー!!」
幽霊は悪魔となった、巨大な鳥…これはガチョウか…が、襲いかかってきた
すると、どこからかジャキンジャキン!と音がした
目の前には……俺と同じく悪魔のようなものを従えた男が立っていた

「お前は……」
「君が、獅子神宿伍だね……」
夢を見た時、冷や汗をかいた。その時の声がした
斬られた幽霊は更に出力を上げて襲いかかってきた

「君じゃ勝てない……」
剣を一閃、幽霊を消し飛ばしていた

「獅子神宿伍、こいつ……はっ!人間だ!」
「わかってる………わかってるんだよ!なぁ……秋輔………」
そう、模しているだけかもしれない
いや、本物なのかもしれない

「秋輔…ごめんな……にいさん……」
知らないうちに涙が込み上げてきた、いやもう泣き崩れる寸前だろう
久しぶりどころか、死んだと思っていた実の弟が目の前にいるんだ

「なぁ秋輔ぇ……」
秋輔は顔色1つ変えず、言い放った

「我はソロモン様より召喚された者…覚悟しろ、そして死ね。ソロモン様の邪魔をする者よ」

え?と情けない声をあげている間に、俺に剣が振り下ろされようとしていた

「ばかもの!目を覚ませ!!」
気がつくと、俺はアスモデウスの背中にいた…

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