魔獣軍師ジェネラルリオン 第1話

第1話 深夜の顎力/5

「やってやる、そのジェネラルリオンだかを」
「じゃあ早速、さっきのバアルとサレオスを倒しに行こうか」

「は?なんて?」
「あ、さっき君を殺した悪魔のことだよ。猫みたいなやつがバアル、君が探してた男が…残念ながらサレオスさ。あぁなってしまったらもう元には戻せない…完全に悪魔に飲み込まれてしまってるからね」

どうして救えない人間がいるのか…でも元に戻せないなら、あのまま苦しむより、倒した方がいいのかもな…

「はぁ…で、どこにいけばいい」
立ち上がり土埃を払い、覚悟を決めて行くしかねぇなと思ったが、アスモデウスは
「あ、一旦かえっていいよ、奴ら動き出すのは夜中だからね。」
思い切りコケてしまった
じゃあ、と一旦事務所に帰ることにした…

事務所のドアを開けると、おやっさんと佐々木が話していた
「戻ったぜ」
すると、佐々木が
「所長!大変でっせ!これ見とくんなはれ」

突然の剣幕にドン引きしながら、渡された物を見る
ソファにどかっと座り、また立ち上がってしまった

「こ、これ、上谷からの手紙じゃねぇか!何時こんなもんが」
「それが気がついたらドアに挟まっとったんですわ……」
手紙には、嫁と娘には自分は死んだものと思ってくれ、自分は悪魔に魂を売って、やってはいけないことをしてしまった、ということだが…

「これは……」
「一応自筆だし、皐月くんに筆跡鑑定の依頼をかけてもらった。間違いないな…」

手紙の最後には「探偵さんを巻き込んで本当に申し訳ありません、墓前にお伝えください」と書かれていた

「死んでねぇっつの…まったく、奥さんに聞いた通りだ、真面目で、優しくて、人のことばかり気にかける男だ…」
ふぅ…と息をつき、佐々木がいれたコーヒーを飲む
もしかしたら最後のコーヒーかもしれない、堪能しよう…

深夜2時、ペットショップにむかい歩いていると後ろから
「やぁ、獅子神宿伍、逃げなかったんだね」
アスモデウスだ

「あたりめぇだ。上谷にはまだ人の心があった。なら、心がある内に俺の力で解放してやる…」
「ふふ……昔、君と同じように熱くて真っ直ぐで心許せる男がいたんだ…その男は自分が人間じゃなくなるのを分かって手を貸してくれた。僕ら『七つの大罪』を助ける為にね。
君は大丈夫、生まれ持った力だから人間だよ、大丈夫」

初めにあったような慇懃無礼さは微塵も感じなかった
ふとここである疑問が浮かんだ

「なぁ、そういえばジェネラルリオンってのはどうしたら使えるんだよ」
「あっははは!ごめんごめん、忘れてた!そうそう一旦帰ってって言ったのはこの準備があったんだ」
そういうとアスモデウスはライオンの頭が施された大型の剣と、1枚の御札を取り出した

「まずこの御札を持って『獅子奮迅』と唱えるんだ。唱えたら剣が現れるから、そしたら『変身』と言うんだ。」
仮面ライダーかよと思ったが、取り出された剣が小さくなり俺の体と一体化した…

「まぁじかよ…」
こればかりじゃない、人間がワニやでかい猫になってみたり、悪魔と契約したり、死んだのに生きてるとかファンタジー通り越したファンタジーだろ、こんなもん

「獅子神宿伍…そこを曲がったら奴らの後ろに着く。覚悟は出来たかい?」
「はっ!あたりめぇだ、何のためにここにきたと思ってんだ」
ふふっと笑うと、アスモデウスは元の姿である蛇になっていた

「さぁいくよ」
「あいよぉ!」
俺たちは走り出していた
角を曲がり、ワニのサレオス、猫のバアルが視界に入った

「なんだぁ?探偵!お前は俺が確かに殺した……そこにいるのは……アスモデウス!!」
「やぁバアル、お久しぶり。殺しに来たよ、人間に仇なす存在を。僕はソロモンを許さない!」

「くそぉ、貴様の差し金だったか!いいでしょう……行きなさい、サレオス!」
「ぐおおお!!」と大口を開け、上谷…いや、サレオスが向かってきた

でも俺は物凄く冷静だった。
俺はさっき貰った御札をジャケットの内ポケットから取り出した
『獅子奮迅!!』
すると、俺の体から大剣が現れた…こりゃすげぇや、と剣を手に取り、叫んだ

『変っ!身っっ!!!』
俺が叫んだあと、剣のライオンが吠え、光が俺を包んだ
光が収まると、俺は獅子のマスクに黒光りする軍服の装飾がされた鎧を纏っていた

「これが、ジェネラルリオンか…」
唸りながら向かってきたサレオスを片手で受け止めた…これは凄い力だ

「上谷さん!目を覚ませ!嫁と娘が待ってるだろ!!」
俺は思い切りぶん殴っていた、軽く10m以上は吹っ飛んだだろうか
やばいと思い、駆け寄ろうとすると一瞬で追い抜いてしまった。力の加減が難しいな…

サレオスを掴みあげると、サレオスは上谷に、一瞬だけ人間の姿に戻った。
「探テイさん…いぎてたん…デスね……ごめんなさい……ご迷惑……おかけしました…僕を…心がある内に……殺してください…」
物凄く悔しい顔をしていたんだろう、泣かないで…と言われた気がした

「アスモデウス!!本当に…本当に元には戻せないのかよ!!」
アスモデウスは驚きながらも、首を横にふるだけだった…

「いいんです…僕が死ねば……保険金が入ると思います…こんな事しか最期にしてあげられない…ごめんな…牧子…あやかぁ……」
「お涙頂戴なんてどうでもいいんだよ、何感動話にしてんだよ、おいてめぇ俺と契約して、大して何もやってねぇだろ!勝手に消してもらおうとしてんじゃねぇよ、おい!」
突然上谷の頭を抱え込むようにバアルが現れ、罵倒した

「こいつはな、会社から騙されてクビになったんだ、その復讐のために俺と契約したんだ、悪魔に魂を売った野郎なんだ!なぁにを美談にしてんだ、あぁ?」
「てめぇが人間を語るなっ!!」

叫びながらバアルに向かうが、目の前に上谷……いや、もうそこには心を失った悪魔サレオスが立ちはだかった
「てめぇに元人間が殺せんのかぁ?シャシャシャシャシャ!!」

俺は剣をサレオスに突き立てた
多分俺は泣いていたと思う、それよりも人間を舐め腐ったバアルへの怒りしかなかった

「なんだと…」
剣がサレオスを貫通し、バアルに届くと紫の血と腕が飛んだ

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