実質男子校な母校と彼氏になれない学生たち

創作ではどれだけ人の心に傷をつけられるかを信条としているが、これは残念ながら現実で起きたお話です。
出来るだけ、君らが傷つかないように出来るだけの注意を払って書きます。
未成年が飲酒する記述もありますが、法を逸することを推奨するものではありません。
嘘や作り話も少量混ざっておりますが、それは登場人物の匿名性を可能な限り担保するためのものなので。
どうぞよろしく。

はじめに

古今東西、オタク君たちを食い散らかすメンヘラの話は後を立たない。
彼女たちが何故そうするのかに関しては多くの人間によって語られているし、正直なところ興味はない。
私の母校と、同い年で後輩だった彼女の話をしようと思う。

我が母校は陸の孤島にある。
地主の一族が睨みを利かせているために一軒しかないコンビニと、道楽程度の味のパン屋しかない土地に全国津々浦々から学生が集まっている。
1学年およそ200名程度、全学年集めても1000人いかない。そのうち女子学生は100にも満たない。学科によって違いはあるものの、一番多い学科でも1学年20名ほど。少ない学科では2,3人で年によってはまったくゼロの年もあるという。
男女比率の極端な不均等は様々な問題の遠因になるというのは皆さんすでにご存じだろう。

我が母校でもそうだった。
おおよその女子は入学早々恋人を作る。それは新入生歓迎会で出会う先輩だったり、同級生だったりするけれど、基本的にフラットになった人間関係の中で最適解を見つける試行錯誤だ。致命的に合わなくたって周りに露呈する前に関係性を同級生レベルまで戻せばいい。5,6月になり、本格的に講義が始まるころには女子生徒はおおよそ3種に別れる。

前述のように恋人を作り、つつがなく4年生まで交際が続く純愛タイプ。4年次にはおおよそ熟年夫婦のように落ち着いた人間関係が築けている。
逆に恋人を一切作らない変人タイプ。そういった子らは基本的に親の監視から逃れられる4年間を思う存分楽しんで、自身のしたいことに邁進していく。恋人がいる場合もあるので、純愛と両立する場合もままある。
最後が、まったく新しくなった人間関係に過適応してしまう、結果的に悪食になってしまうタイプだ。こういった子らは他者から求められるままに人間関係を結ぶ。

端的に言うとセックスのハードルが著しく下がる。

おおよそ1学年に最低でも1人、そういう女子学生は発生した。
大体は入学時は大人しい様子の子たちだ。まじめで、しっかりしていて化粧の仕方もろくに知らないタイプ。
入学して1月して髪を染めたりしない、けど新入生歓迎会で缶チューハイを飲んでしまう子たち。彼女もそういう後輩だった。
彼女と初めてあったのは母校のオープンキャンパスの時だった。
年相応で化粧っ気がなく、ただ白い綿生地のワンピースを着ていたことを覚えている。そこそこ可愛い女の子だったので割と覚えていた。母校に入学したら幸せになれないだろうな、とも。前述の通り、母校には女子学生があまりにも少なかったからだ。

需要と供給の偏りと、そもそも娯楽がほとんどないような僻地だ。一番近いパチンコ屋は車で20分。出会いの場はなく、近隣の大学とは致命的なまでに常識が食い違っている。カルチャーショックを覚えるほどに何もない土地。
一番手ごろに、彼らなりの大学生活を叶える舞台装置として必ず彼女たちは発生した。
毎年ほぼ確実に1人。多い年は3人くらい。
たくさん彼氏を作って、食べたら食べただけポイ捨てするメンヘラ。
コミュニティが大学内で閉じてしまう現象に名前をつけることは出来ないが、彼女たち、彼らたちは総じて受け身で手近でどこかに手を伸ばすことはなかった。
恋人がいないとさみしいけど、積極的に関係性を作るのに成功できなかった子たち。めぼしい女の子たちはおおよそ売約済みで、残りは恋人未満の甘酸っぱい関係性だ。ここで頭を突っ込んで大多数の男子生徒から誹りを受けてまでしたいとも思わない。
でも。誰にも選ばれないのはさみしい。それは男女とも同じだろう。

そうなると何が強くなるのか、誰がイニシアチブを持つのか。
発生したのはメンヘラでした。またの名を穴兄弟製造機とでも呼ぼうか。

よく言えばコンサバ、悪く言えば地味な服をよく着ていた彼女はいつのまにかaxes femmeの薄っぺらい服を好むようになった。
黒い髪は意識して重めのぱっつん前髪と耳の上のツインテールがお決まりなった。
深夜のコンビニで同学年の男子学生とつるんで夜ごとに男子学生の家で集まるようになった。
自分を囲っている男子で彼氏をストックするようになった。
スナック菓子を食べるように寝る男を変えた。

結果的に彼女が3年に上がるごろには悪評が聞こえるようになっていた。私が把握しているだけで彼女の捕食人数は2桁に軽くのっていたはずだ。
過去に男子寮に女子学生を連れ込んで男女両方とも退寮になった人も校舎でしていた人間も山ほど見ていたが、彼女はなかなかのレコードホルダーだったと思う。同級生と上級生を釣れなくなったら下の学年に手を出した様子もスムーズだった。
彼女たちは1年次には同級生から相手にされずあぶれた上級生に貢いでもらう。狭い学校だから誰よりも先に定期試験の過去問を収集できて情報のアドバンテージを得られたし、上級生は女の子に相手をしてもらえる。その時点ではwin-winとなるのだ。
もちろん彼女がまわりの女子学生に何と思われても関係ない。
閉じた世界において、別学科の人間であれば上級生になればなるほど関係性が薄れていくし、何もお互いに失うものはない。
彼女が食べた人間はそもそも一般の女子学生に相手にされない男子学生だし、競合しない。
ごく普通の、いい男になりうる学生は1年の段階で抑えられていてあとは残り物しかいないからだ。

そういう意味でも女の肉体の提供は母校での学校生活のなかではもっとも希少価値の高い貨幣だった。男子学生は彼女というものを心の底から欲しがっていたし、風俗以外で、彼女との初体験を夢見ていた。
彼女はそれを叶えていただけにすぎない。その時点での幸福の最大量を効率的に手に入れるには最も簡便な方法だったと思う。
客観として彼女が得たものは4年間でついたビッチの称号。無意味に増えた経験人数と、母校御用達の食堂に過去数十年分貯めこまれたノートの一冊として記録された名指しの悪評。にちゃんねるの晒し。それゆえ安定しなくなった精神状態。事実4年時の彼女のメンヘラは有名だった。

幸せになろうとしたんだろうとは思う。正直言って理解しがたいけれど、その場で得られる、そして彼女が持ちうる手段を使っただけだった。
私は彼女がすべて悪いとは思っていない。
毎年どの学年の何某が性病にかかったとか、社会人の彼女を妊娠させてしまい責任を取らざるをえなかった先輩がいたとかそんな話題を数年ごとに聞いた。それだけ皆そういう肉体的な触れ合いに飢えていて彼女はそれを解消する手段を所有していた。
だから、彼女のような悪食な学生はほぼ確実に発生した。

さて、実質男子校みたいなド田舎の大学でわりとお手軽にやらせてくれる女の子がいたとして。
オタク君、君はその子に何をするんだろう?


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