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島をくちずさむ~ジュスにまつわる随想~ 【特別編】 笹子重治 & ゲレン大嶋による曲目解説

 30年来の「飲み友達」のゲレンさんと初めて一緒に音楽を作ることになった経緯については、ゲレンさんの詳細な文章(ジュスnote『島を口ずさむ~ジュスにまつわる随想~第4話、第5話』参照)に書かれてあるとおりなのだが、今回曲を作るに当たって、多分ゲレンさんと僕は「逆のこと」を考えていたのだと思う。
 
 即ち、ゲレンさんは、ショーロクラブやコーコーヤなどでの僕のサウンド、「洋楽色」の濃いメロディをイメージし、僕は三線や琉球民謡的発声など、沖縄民謡独特の「雰囲気」をイメージした。
 
 なので、何だか普段僕が作っていそうな作品がゲレンさんの作品であったり、その逆であったり。クレジットを見なければ、どの曲をどっちが作ったか、当てるのは難しいと思う(本人達ですらわからなくなってたりする)。
 
 つけ加えて言うならば、僕もゲレンさんも、基本姿勢としては、自分の体の中にある「音」の中から、「沖縄」と聞いて自然に溢れ出してきたものをそのまま書きとめているワケだけど、例えばドミファソシドの「琉球音階」みたいなものは、三線プレーヤーのゲレンさんは、半ば自分のものとしてそれを持っている一方、僕の中には、それは「定住」していないらしいことが、出来たものを見て知った。
 
 今回の僕の曲は、ある意味ゲレンさんの曲より「沖縄的」なものが多い(と勝手に思ってるんだけど)のに琉球音階は出てこず、ゲレンさんの曲はより洋楽的なのに琉球音階が自然な形でそこかしこに顔を出している。フシギな「文化混合」の具合に、おもしろさを感じるのである。
 
 そしてもうひとつビックリだったのは、ゲレンさん、メロディも歌詞も、「スポット」に嵌まったみたいに短期間に爆発的に生み出していた。凄かったです。そして僕にも経験があるが、そういう時はいい作品が目白押しになるんだなあ。脳みそのおオハチが開いたカンジ。アレンジしていても楽しかったし、出来上がった音楽は(たぶん)「名作」になったし。
 
 更にもうひとつビックリしたのは、我々は作品を作ってレコーディングをすることしか考えてなかったのだが、宮良さんを迎えて(宮良さん、スバラシ。良い女性歌手とまた巡り会えたぞ。でも何で女性ばっかりなんだろ。)音を出してみたら、当然のように「ユニット」となって「ジュス」なる名前がつき、当然のようにライブをすることになり、そして当然のように「オオゴマダラ模様」のユニフォームが出来上がってきた。ユニフォーム着て演奏するなんて、青山のプラッサオンゼでサンババンドのハコバンやってた時以来だよ。
 
 僕がぼーっとしている間に、日々膨大な量の遣り取りがゲレンさんと宮良さんの間で行き交い、今この一瞬にも、もの凄くいろんなことがどんどん決まり、期待は膨らむばかり、である。僕としては、置いて行かれないように、二人のあとをよたよたついていくのみ、なのです。

笹子重治

~ここからは笹子重治とゲレン大嶋が各曲について解説島す~

1.島へ(作詞、作曲:ゲレン大嶋 / 編曲:笹子重治)

ゲレン:私のデモのギターは典型的なボサノヴァでしたが、笹子さん“ならでは”のアプローチによってメロディがより生き生きと豊かに響くようになりました。“あの島へ”という歌詞は曲と同時に浮かんでいたものです。喜び、憧れ、懐かしさ、切なさなど様々な思いを胸に、島を訪れる時の気持ちを歌っている曲なのかもしれません。琉球音階のメロディの歌唱は宮良牧子の得意とするところでしょう。

笹子:最初に、曲のイメージがゲレンさんと僕とで食い違った曲。ゲレンさんはこの曲をボサノヴァのイメージで作り、僕はむしろショーロクラブ的な柔らかいサウンドによるアレンジをイメージした。両方のイメージをすりあわせたらこうなったんだけど、これこそ、このユニットの「在り方」を象徴するような流れだったかも。

2.島のワルツ(作詞、作曲:ゲレン大嶋 / 編曲:笹子重治)

ゲレン:Aメロ、Bメロ、Cメロとすらすら出てきて、Cメロは当初から歌でなく三線のフレーズとして聴こえてきました。言ってみればサビが三線によるインストゥルメンタルのようになっていて、これがこの曲のユニークなところかもしれません。「ガジュマルそびゆ あの森」は読谷村、「月の道輝く海」は伊是名島の、それぞれに思い出深い風景をイメージしています。

笹子:極めて洋楽的なグルーヴの中、いきなり三線が飛び出してくる。メロディも、琉球的な旋律ではないけれど、そこかしこにそのニオイが漂ってくる。ある意味最もこのユニットらしい曲。

3.サガリバナ(作詞、作曲:ゲレン大嶋 / 編曲:笹子重治)

ゲレン:『coco←musika III』に収録した私の曲「夏の終わりに」とよく似ていて、コード進行はほぼ同じなのですが、メロディと拍子は別のものです。歌詞に出てくる人物や風景は、全て私のリアルな思い出の中に実在しています。

笹子:これ、最初に聞いた時に、あっ、掛け値なしの名曲だっ、と思いました。そしてこういう柔らかい名曲には、どうしても林正樹君のピアノに入ってもらいたかった。最近僕が仕切るレコーディングにおいて、林君は絶対いて欲しいプレーヤー。まだ若い(←ある程度)けれど、もう日本を代表するピアニストだよね。最後はフェイドアウトで終わる予定で長めに録ったんだけど、余りに演奏が素晴らしくて、殆ど最後まで使ってしまいました。

4.行ち戻(むどぅ)い(作詞:名嘉睦稔、作曲/編曲:笹子重治)

笹子:名嘉睦稔さんとは、随分昔に佐渡島のアースセレブレイションというイベントで同宿になりお話しをしたことがあるぐらいで、「知り合い」と言うのもおこがましいカンジなのだが、今回、詞をつけていただけることになって、嬉しいだけでなく、何だかフシギな「御縁」を感じたのである。で、せっかく睦稔さんに詞を書いて頂けるとあって、初めて「琉歌」の形式に乗るメロディを作ってみた。聞いていただければわかるとおり、言葉の意味はわからなくとも「言霊」の力の強さを感じる(中原仁氏談)作品となった。凄いなあ、としか言いようがない。

ゲレン:笹子さんのメロディにボクネンさんの歌詞が乗って、呪術的な雰囲気をまとう歌になったと思います。大きな一つのメロディだけで成立している様は、まるで古くから歌い継がれてきた民謡のようでもあります。

5.竹富の猫(まやー)小(ぐわぁ)(作詞、作曲:ゲレン大嶋 / 編曲:笹子重治)

ゲレン:これは「サガリバナ」よりぐっとストレートなセルフ・パロディで、coco←musikaの1stに収録した「Kacharseeing Cats」を基に遊んでみました。ちょっとナンセンスな歌詞は、猫独特のキャラクターや古い沖縄民謡の世界観へのオマージュです。

笹子:この曲については、最初に聞いたと同時に、このギターのパターンに、コモブチ君のベースと石川(智)君のパーカッションを絡める、という方針で即決。曲がこういう曲なので、大変分かり易い結果になったかな。バラード調の多いこのアルバムの中において、スパイスの役を果たしている曲。

6.花とオルゴール(作詞:ゲレン大嶋、作曲/編曲:笹子重治)

笹子:何曲か作った中では、個人的には「上位」の曲ではなかったのだが、宮良さんから「凄くいい曲!」と言って頂いて、だんだんその気になってきている。このあたりのメロディは、沖縄民謡の発声を自分なりに意識して作っているのだが、どうだろうか。と言いつつ、沖縄の曲には絶対出てこないメロディの流れもあったりする。どこか、わかるかな?

ゲレン:歌詞は、私の記憶の中にある島の花の情景と、オルゴールが刻む童歌のメロディという二つのイメージからできています。そしてそれが最後には一つになるのです。

7.風(かじ)や向(ん)かい風(かじ)(作詞:名嘉睦稔、作曲:ゲレン大嶋 / 編曲:笹子重治)

ゲレン:笹子さんの「歌ものでもやりましょうか?」の一言を受けて(ジュスnote『島を口ずさむ~ジュスにまつわる随想~第4話』参照)、最初に思いついた曲。ライヴでの笹子さんのグルーヴするギターをイメージしたものの、当然ながら私のデモではそれを表現できず。しかし、笹子さんが弾くと想像以上のかっこよさに。歌詞は名嘉睦稔さんによるもので、躍動する楽曲にさらなるエネルギーを注入する力強い内容となっています。

笹子:最初にメロディをもらった時に仮タイトルとして「馬駈」とあったので、そのイメージに沿ってアレンジしてみた。イコールではないけれど、ブラジルの田舎のリズム「カボクリーニョ」を意識したグルーヴを、石川君に出してもらった。そして奔放に駈けるフルート。こういうのを託せるのは、サイゲンジ君しかいないのである。

8.あなたの島 あなたの歌(作詞:ゲレン大嶋、作曲/編曲:笹子重治)

笹子:これ、もともとウクレレで伴奏するハワイアンテイストの曲として作ったんですが、何と、ウクレレとはキー的に相容れないことが直前に判明(←アレンジャーがアホ)、急遽アレンジを変更して、その場に居残ってくれていたメンバー全員でやることに。その分ちょっと雑雑とした雰囲気になってしまったが、かえってそのいいかげんさが曲にフィットしているようにも思える。怪我の功名、ということにしておきましょう。

ゲレン:歌詞の「あなたが作った 歌は忘れないから きっと 未来の人が あなたを知らずに歌って笑ってくれる」という部分は、たぶん自ら曲を作る多くの人にとって、少なくとも私にとって、究極の夢なのです。

9.イアイ(伝言)(作詞:ゲレン大嶋、作曲/編曲:笹子重治)

笹子:ど・ストライクに「沖縄の女性歌手」に歌ってもらうイメージで書いたメロディ。宮良さんはイメージどおりに歌ってくれました。チェロの橋本さんとの「フィット感」も上々。エンディングで「ブォ~ン」と迫ってくるチェロのフレーズがステキ。

ゲレン:“イアイ”は睦稔さんに教えてもらった沖縄の古い言葉です。意味は「伝言」。笹子さんのデモを聴いた時、まさにいにしえの島人や大自然からの“イアイ”を聞いているかのような、慈愛に満ちていながらも厳しさを含むメッセージのような何かを感じたのです。

●笹子重治(作曲、アレンジ、ギター)
ギタリスト、作編曲家、プロデューサー。弦楽トリオ、ショーロクラブ(1989年-)のリーダーであり、ソロ・アーティストとしても優れた楽曲を発表。多くの尊敬と信頼を集める彼のサポートを求めるアーティストは後を絶たず、これまでに共演してきた歌手や演奏家は、畠山美由紀、Ann Sally、大島花子、純名里沙など、枚挙にいとまがない。また、古謝美佐子、大島保克、比屋定篤子、桑江知子といった沖縄出身アーティストとの共演も多い。

●ゲレン大嶋(作曲、作詞、三線)
1999年に沖縄系アンビエント・ミュージックのユニット、TINGARAのメンバーとしてデビューしたヤマトンチュ三線プレイヤーの先駆け的存在。その後ハワイアン・スラック・キー・ギターの名手、山内雄喜、宮良牧子、上原まきと組んだチュラマナなどを経て、2010年からは日本を代表するギタリストのひとり、梶原順とのインスト・ユニットcoco←musika(ココムジカ)で作曲と三線を担当し、三線音楽の新たな可能性を広げている。

●宮良牧子(ヴォーカル)
石垣島出身。民謡のDNAを大切に受け継ぎつつ、そのエッセンスを多彩でダイナミックな表現の中で輝かせるという、稀有なスタイルを持つヴォーカリスト。その圧倒的な歌唱力を絶賛するアーティストも多い。これまでにソロや、ゲレン大嶋とも共演したチュラマナなどで多くのアルバムをリリース。また2010年にはNHK連続ドラマ小説「ゲゲゲの女房」サウンドトラックに参加し、2012年の映画『ペンギン夫婦の作りかた』では主題歌の作詞作曲と歌唱を担当し活動の場を広げている。

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