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島をくちずさむ ~ジュスにまつわる随想~ゲレン大嶋 【第7話】 そして巨匠名嘉睦稔さんとのコラボレーション

お待たせしました。再び名嘉睦稔さんの登場です。私とボクネンさんの出会いについては第2話に書きました。ボクネンさんは沖縄の自然や文化をコアなモチーフとする版画家で、見る者の心を瞬時に奪う鮮やかでパワフルな画面からは、歓喜、悲嘆、過去、未来、神秘といったさまざまな要素を含む、言葉にならない豊かな物語があふれ出してきます。一方、ボクネンさんは唄三線の名手でもあり、その場で即興の詞を作って歌うフリーなスタイルで、いつも宴を盛り上げてくれるのです。おまけにワイルドで、ゴージャスで、セクシー。天がボクネンさんに与えたのは二物?三物?四物?いや、もう、どうなってんのよ!ちょっとは分けてよ!あ、失礼。そして離島である伊是名島のご出身であることも関係していると思われるのですが、同世代の中でもあまり多くない島言葉(しまくとぅば)の使い手であるボクネンさんは、りんけんバンドの照屋林賢さんの依頼を受けて、沖縄の古くて美しい言葉を使った歌詞も多く手がけてきました。そんなボクネンさんが今回のプロジェクトに大きな力を貸してくれているのです。曲作りを始める前の段階で笹子さんがこう言いました。「島言葉の歌詞の曲もあるといいですね。誰か書いてくれる人、知りませんか?」。なるほど、それはいいアイデアだ!と思った私がパッと思い浮かべたのはもちろんボクネンさん。ボクネンさんも笹子さんのことを知っているし。しかし、私にとっては畏怖の念すら覚える沖縄の巨人であり、多忙を極めるボクネンさんに、いかに親交があるとはいえ「歌詞を書いてください」なんて気軽には頼めない・・・はずなのですが、気が付いたら私は沖縄に電話をしていました。返事は・・・OK!笹子さんの曲一つと私の曲一つの2曲に島言葉の歌詞を付けていただけることになったのです。ボクネンさんの書く歌詞は内容の豊かさはもとより、とても音楽的な言葉の響きを持っている、唯一無二のもの。ぜひお聴きになっていただきたいです。そして、そう、ボクネンさんは版画家。いや、もうこうなったらジャケットのカバー・アートもボクネンさんの作品にしたい!と、私は躊躇することなくもう一度沖縄に電話をしました。果たして・・・こちらも返事はOK!当然ながらジャケットもとても素敵なものになりました。ボクネンさん、本当に、心から、深々と感謝しています。

ジュス1stアルバム『サガリバナ〜島をくちずさむVol.1〜』ジャケット

●笹子重治(作曲、アレンジ、ギター)
ギタリスト、作編曲家、プロデューサー。弦楽トリオ、ショーロクラブ(1989年-)のリーダーであり、ソロ・アーティストとしても優れた楽曲を発表。多くの尊敬と信頼を集める彼のサポートを求めるアーティストは後を絶たず、これまでに共演してきた歌手や演奏家は、畠山美由紀、Ann Sally、大島花子、純名里沙など、枚挙にいとまがない。また、古謝美佐子、大島保克、比屋定篤子、桑江知子といった沖縄出身アーティストとの共演も多い。

●ゲレン大嶋(作曲、作詞、三線)
1999年に沖縄系アンビエント・ミュージックのユニット、TINGARAのメンバーとしてデビューしたヤマトンチュ三線プレイヤーの先駆け的存在。その後ハワイアン・スラック・キー・ギターの名手、山内雄喜、宮良牧子、上原まきと組んだチュラマナなどを経て、2010年からは日本を代表するギタリストのひとり、梶原順とのインスト・ユニットcoco←musika(ココムジカ)で作曲と三線を担当し、三線音楽の新たな可能性を広げている。

●宮良牧子(ヴォーカル)
石垣島出身。民謡のDNAを大切に受け継ぎつつ、そのエッセンスを多彩でダイナミックな表現の中で輝かせるという、稀有なスタイルを持つヴォーカリスト。その圧倒的な歌唱力を絶賛するアーティストも多い。これまでにソロや、ゲレン大嶋とも共演したチュラマナなどで多くのアルバムをリリース。また2010年にはNHK連続ドラマ小説「ゲゲゲの女房」サウンドトラックに参加し、2012年の映画『ペンギン夫婦の作りかた』では主題歌の作詞作曲と歌唱を担当し活動の場を広げている。


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