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#BlackLivesMatter について、日本のあなたに知ってほしいこと。

注意: 人種差別や警察による残虐行為に関する記述があります。
カバー画像: BLMをサポートする、黒色のみの画像です。
※SNSの使い方に注意して、ご自由に拡散してください。

アメリカでの白人警察官による黒人男性の殺人、そして人種差別への抗議デモと暴動や略奪について、日本でもニュースやSNSで情報が拡散しています。
世界中が新型コロナウイルスの影響を受ける中、なぜ今このようなことが起きているのか分からない、知りたいという方もいらっしゃるのではと思います。

「黒人の大統領もいたんだし、人種差別なんて過去のことでは?」
「『黒人の命(Black Lives)』のみについて主張しているなんて逆差別では?」
「怒っているのは分かるけど、暴力や盗みは良くないのでは?」
「日本は単一民族国家だし、関係ないのでは?」
「政治は怖いしよく分からないから、中立でいた方が他の人を不快にさせたり、傷つけたりしなくて済むのでは?」

このような疑問を持つ、投げかける、共有する前に、知っていただきたいことがあります。

私は、数年前に卒業したアメリカの大学の友人のSNSから、毎日英語で重要な情報を受け取る中で、同じような情報を日本語で入手することが難しいと感じ、今回書くことに決めました。
(日本の)メディアが説明していないことや、アメリカで運動を引っ張っている方の直接的な情報発信が日本語にならないことで、日本のニュースをさらっと見ただけの方や、日本語で情報を受け取る方が、#BlackLivesMatterという運動の背景、意義、意図等について知りようがないことが大変もどかしく、筆を執りました。

前置きが長くなりますが、大事なことなのでゆっくり書きます。
私は黒人ではないし、#BlackLivesMatterのリーダーではないし、誰にも許可は取っていないし、そのような方々の声を代弁することはできません。人種問題やその他の社会問題に関する専門家でもありません。
アメリカは日本よりも社会運動が盛んで進んでいる!ですとか、単にアメリカが気にしていることは日本も気にしなければならない!日本語より英語の情報が大切だ!と主張したいわけではありません。
また、このノートで紹介するアイディアは全て、アメリカの大学の友人の考えや情報、大学で教授やクラスメートから学んだことに基づいています。オリジナルの考えではありません。一方で、自分の考えを一切入れずに翻訳することは不可能ですし、自分も強い意見と気持ちを持って書いた文章です。

このノートの目的は、まず#BlackLivesMatterについて、個人的にしたかった説明をすること、そして、日本人の方、日本に住んでいる方、日本語を話す方にも、自分に関係があることとして捉えてもらうことです。ノートの最後には、具体的な行動に移すための支援方法等も載せておりますので、「何かしたい」「傍観者(=抑圧側)にはなりたくない」と思ったら、ぜひ行動に移してください。
さらに、#BlackLivesMatterからスポットライトを奪うつもりは全くありませんが、このノートを通して、人種差別とその他の社会問題との関連性を検討し、社会の構造や権力関係等について考えを深めていただければ本望です。

学校で教えないアメリカ史

歴史の主流のストーリーは、権力者によって書かれています。
学校教育や主流メディア等の影響は恐ろしいもので、私たちは権力者が都合よく作り上げた歴史を、吟味せずに「事実」として受け入れ、抑圧された者側の視点を知らずにいることが多々あります。(アメリカに限ったことではありません…慰安婦問題………)
今まで教えられてきた「事実」や「ルール」に反することを学ぶことには、疑問や不安が伴いますが、勇気を持って「事実」や「ルール」を捨て去り(unlearn)、黙殺されてきた声を拾い上げること、歴史を学び直すことは大変重要だと思います。

その学び直す過程で不快感を覚えたり、信じたくないようなことがあれば、ご自身がそう思うのはなぜなのか、ある程度主流の歴史やメディアの恩恵を受けているからでないか、ある程度社会的権力や特権を持っているからでないか、考えてみてください。

このノートでは、下記項目一つ一つをバックアップするような日本語の資料を調べ上げて器用に追記することはできませんでしたので、ご自身で調べていただくか、今後需要があれば追記することにしようと考えています。
あくまでも歴史の批判的視点の入り口として読んでいただければと思います。

アメリカは、本当にコロンブスが「発見」して「開拓」した国でしょうか。
違います。ネイティブ・アメリカンの土地を、ヨーロッパ人が略奪し、アフリカ等から連れてきた黒人奴隷を強制的に働かせて作った国です。サンクスギビングを祝う前に一度考えていただきたいです。

アメリカは、本当に1950年~60年代の公民権運動後、白人と黒人が平等に暮らせる国になったでしょうか。
違います。黒人を「法」のもとで犯罪者扱いし、刑務所に送り込み、引き続き強制的に働かせて経済を成り立たせている国です。
この構造を、産獄複合体(Prison Industrial Complex)と言います。(詳しくは、Angela Davisの"Are Prisons Obsolete?"がお勧めです。和訳もあるようです:「監獄ビジネス グローバリズムと産獄複合体」)
他にも多くの、雇用における差別的待遇や、ジェントリフィケーション(辞書には「下層住宅地の高級化」とありますが、要は黒人や貧困層の方を住んでいる地域から追い出す動きです)等、黒人が不利な立場に陥るシステムによって、アメリカは支えられています。

アメリカは、本当に平和的な社会運動によって、女性の権利や黒人の権利、LGBTQの権利が獲得されてきた国でしょうか。
違います。教科書には平和な写真しか載っていないかもしれませんが、裏では暴動となった事例、というよりは、暴動にならざるを得なかった事例が山ほどあります。
6月はLGBTQプライドの月で、日本でも性的マイノリティの方の記事やレインボーカラーの投稿をよく見かけるようになりましたが、アメリカでLGBTQの方々が権利を獲得するきっかけになった、1969年のストーンウォールの反乱は、LGBTQの方々を逮捕しようとした警察官に対して反抗したことで、「法」の改正に影響を及ぼした暴動でした。

公民権運動のヒーローとされるマーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師のことだって、都合の良いようにしか教えません。キング牧師による「私には夢がある」という演説は、黒人と白人の人種平等を呼び掛けた美しい演説として世界中で有名ですが、現在の「法」や「ルール」にそぐわない言葉や行動に関しては、一般的に知られていないものも多く存在します。例えば:

"Freedom is never voluntarily given by the oppressor; it must be demanded by the oppressed." (自由は、決して権力者によって自発的に与えられるものではない。抑圧されている者が要求しなければならないものである。)

"A riot is the language of the unheard." (暴動とは、話を聞いてもらえない者たちの言語である。)

"Property is intended to serve life, and no matter how much we surround it with rights and respect, it has no personal being. It is part of the earth man walks on. It is not the man." (所有物とは、命に仕えるものであり、いくらそれらに対して権利と敬意を持っていても、そこに人としての存在はない。所有物とは、人が歩く土地(使用するモノ)であり、人そのものではない。)

キング牧師は暗殺されました。殺人犯が捕まっていますが、この裏でもアメリカ政府(FBI等)が動いていました。個人を犯人とすることで、構造的な問題から社会の目を背けようとしているのです。

そもそもアメリカという国の前提に、白人が土地を盗み、非白人を大量虐殺し、黒人の労働を搾取してきたという構造があります。
都合のよいように歴史をねじ曲げ、「法」でその構造を正当化し、守ってきたのは、力を手放したくない、白人の権力者です。
黒人が大統領になったからといって、黒人の労働や命さえもを簡単に奪う構造が、すぐになくなるわけではありません。オバマ1人の大統領当選をもってアメリカが人種差別を克服した(Post-racial society)なんて、大間違いです。

図: 白人至上主義(White supremacy)がどのような形で現代社会に根強く残っているかを示す三角形の図です。引用: Safehouse Progressive Alliance for Nonviolence (2005), adapted by Ellen Tuzzolo (2016)

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黒人が白人警察に命を奪われ続ける現状

日本のニュースでは、「白人警官が黒人男性の首を圧迫して死亡させた事件を発端に抗議運動が広がり…」等と伝えられることも多いようですが、#BlackLivesMatter運動は今に始まった運動ではありません。

黒人が他の人種と比べて警察に捕まりやすいこと、特に白人警察に殺されやすいことは、現実です。
以下にリストできないほどの命が、白人警察によって奪われています。
これらの方々は、ただただ散歩をしていたり、買い物をしていたり、家で寝ていたりしていただけなのに、もしくはスピード違反をしたり、車のテールランプが付いていなかっただけなのに、警察に殺されました。
「不審」に見えたから、「銃を出そうとしている」ように見えたから等、なんでもかんでも理由を付けて、殺人を正当化する流れが、何年にも渡って続いています。

図: 2014年以降、警察によって命を奪われた黒人の方の名前を並べた、赤い背景に黒字の図です。引用: NPR (2020)

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ちなみに、黒人の白人警察による犠牲を単なる統計に留めないため、一人ひとりに名前があり、一人ひとりに人生があったことを忘れないための #SayTheirNames #SayHisName #SayHerName 等の運動も広まっています。

このリストだって、ある程度インターネットで広まっている名前に限られています。世間に知られていない名前だって、まだまだあるはずです。
例えば、George Floydが亡くなった数日後に警察に銃で撃たれて死亡したTony McDadeのことは、まだ主流メディアには取り上げられていません。
彼はトランスジェンダーの男性でした。
人種だけでなく、他のアイデンティティの軸においてさらなる抑圧を受ける方、つまり黒人女性や、トランスジェンダーの黒人、黒人のトランスジェンダー女性等の名前が、よりニュースやメディアに取り上げられにくいという構造もあります。
アイデンティティの交差点を重要視し、そのような声を名前を積極的に拾い上げることも重要だと考えます。(この詳細については、Kimberlé Crenshawのインターセクショナリティという考え方(字幕付きのTedTalkリンクです)がお勧めです。)

そして、このような現状に対して、#BlackLivesMatter運動が広がりました。
以下、#BlackLivesMatter運動のウェブサイトにある説明の一部です。

「#BlackLivesMatterは、Trayvon Martinの殺人犯の釈放に対して、2013年に設立されました。
Black Lives Matter Foundation, Inc.は、アメリカ、イギリス、カナダを拠点とするグローバルな組織で、白人至上主義を根絶することと、黒人のコミュニティに対する国家や自警団による暴力に介入するためのローカルな力を築くことをミッションに掲げています。
暴力行為に立ち向かい戦うこと、黒人による想像や改革のためのスペースを作ること、黒人の幸せを中心に置くことによって、私たちは私たちの人生において直接的、即時的な改善、向上を勝ち取っています。」

「私たちは黒人でクィアの人、トランスジェンダーの人、障害を持つ人、Undocumentedの人(所謂「不法移民」と言われている人)、犯罪歴のある人、女性、そしてジェンダースペクトラム上の全ての黒人の命を肯定します。
私たちのネットワークは、黒人解放運動の中でも特に疎外されている人たちを中心に置いています。」

「私たちは、黒人の命がこれ以上組織的に(構造的に)死の対象とならない世界を目指して活動しています。」

この説明にもあるように、#BlackLivesMatterが戦っているのは、組織的人種差別であり、構造的に白人が権力を持つ社会なのです。
そのため、黒人を殺した白人警察官が逮捕されるだけでは済まないのです。
殺人が起こり、証拠映像が拡散されてから、殺害犯が逮捕されるまでに、警察側で長い時間がかかったこと、死因に窒息ではなく薬物使用等の理由を付けようとしたこと、そしてそもそも、このような殺人が幾度となく繰り返されていることは、白人警察官の個人の責任だけではないからです。
社会を構造から変えなければ、この歴史は繰り返され、また権力者の都合のいいように切り取られ、抑圧は続きます。
そして、その構造を崩すには、時に「暴動」や「違法性」を必要とします。システムを破壊するために、そのシステムのルール内でいくら頑張っても、不可能なことがあります。そうしているうちに、何人もの黒人の命が失われます。

ちなみに、ここまで読んで、まだ黒人の命について主張することが理解できない方、 "All Lives Matter" (全ての人の命が大切だ)と信じる方がいらっしゃるとしたら、私はこの状況をうまく説明しきれていないのかもしれませんが、それは「フェミニズムは男性に対して逆差別だよね」ということと同じくらい、意味の通らないことです。

全ての命が平等でないと言っているわけではありません。前述のように黒人の命がぞんざいに扱われる状況がある中で、今、この瞬間には、 "Black Lives Matter" (黒人の命が大切だ)と主張する必要があるのです。

自分は人種差別をしない、全ての命を平等に扱ってきたと自信を持って言えたとしても、あなたは黒人でないことによって、黒人を不利な立場に陥らせる社会、黒人の労働を搾取することによって成り立っている社会の恩恵を受けています。あなたがその恩恵を受けたいかどうかにかかわらず、そういう構造の中で私たちは生活しています。
何もしないのでは、あなたもその構造の一部です。問題の一部です。
特権は、持っている人には自覚がないことも多いです。学校教育や主流メディアのナラティブによって、自覚する機会が少ない中で、自分の立場や特権を認識し、社会の構造に対して積極的に反抗する必要があります。

暴動や略奪行為が起きている理由

暴動や略奪行為に対して肯定的な話をする前に、まずいくつか前提としてお話ししたいことがあります。

第一に、「暴力」(violence)と「暴動」(riot)の違いです。細かいですが、これらを区別することで、話を理解していただきやすくなるかと思うため、説明します。
「暴力」: 乱暴な力・行為。不当に使う腕力。合法性や正当性を欠いた物理的な強制力。
「暴動」: 群集や暴徒による自然発生的な集団的暴力。反乱、打ちこわし。

「暴動」は、暴力です。辞書を引く限り、そう定義されています。
一方で、「暴力」はより広いものを指すことができます。貧困。ホームレス。飢餓。戦争。公平な医療制度の欠如。利益のための水質汚染。大量投獄。人種差別。白人至上主義。
これらの「暴力」によって、毎日人の命が奪われています。
#BlackLivesMatterの 「暴動」は、殺し合いを目的としたものではありません。「目には目を、歯には歯を」ではありません。結果として参加者が亡くなるケースも出てきてしまっていますが、目的は、あくまでも建物の破壊や所有物の略奪です。

第二に、少し話が逸れる気もしますが、ほとんどのデモは「平和的」(暴動に繋がらない)です。
何度も繰り返しますが、主流メディアは権力者の都合のよいように情報を拡散します。「暴徒化」「放火」「略奪」という文字が目立つ中、それがごく一部の抗議デモであることは報じられていません。
後に述べるように、#BlackLivesMatterの参加者には、暴動を抗議の手段として使う方もいますが、手段としない方もいます。平和的なデモのみを望む方だっています。

第三に、デモの「暴徒化」には、#BlackLivesMatterの活動家たちが意図的に行ったものでないケースが多々あります。
例えば、#BlackLivesMatterに反対する人たちが、デモの現場に立ち入って暴力を振るい始めること。または、平和的に抗議をしていた人たちに、警察がいきなり催涙スプレーを向けたことで、デモ隊は自分たちを守るために力で抵抗せざるを得なかったケース。それらが#BlackLivesMatterの一方的な暴力として報道されています。
略奪に関しても、#BlackLivesMatterに関係のない人たちが、無料でモノがもらえると思って、混乱に乗じて盗んでいくケースも多くありますが、そのような事実はアメリカ史には記録されないのかもしれません。

最後に、最も大事なことですが、黒人に対して、それ以外の人が、組織的人種差別についてどのような感情を抱けばよいか、どのように反応すればよいか、どのような行動を取ればよいか、意見する資格は全くありません。
自分が散歩をするだけで、買い物をするだけで、家で寝ているだけで、突然命を奪われる危険性があるとしたら、どれだけ怖いか。それが、単なる偶然ではなく、何年も、何十年も、何百年も続く、自分の人種に対する組織的な抑圧の結果だとしたら。
アメリカなんかに住まなければよいのに等と言う方が出て来るかもしれませんが、黒人の方々は、「帰る」場所さえありません。アフリカにルーツを持つとはいえ、自分たちの祖先がアフリカのどこから来て、どのような文化を作り上げていたのか、意図的に記録されていないことが多いです。
黒人が抱える何百年ものトラウマや、現代社会への恐怖、怒りは、それ以外の人には知りようがないし、知ったふり等できません。それを考慮もせずに、怒りで爆発しているデモ隊を見て、「黒人は怒りっぽい」「黒人は怖い」「黒人は暴力的だ」と決めつけるのは、それこそ差別です。

上記を踏まえつつも、#BlackLivesMatterに関わる方たちが暴動や略奪行為を抗議のための有効な手段として捉えている経緯についても、説明したいと思います。
もちろん、下記のようなことを理解せずに暴動や略奪行為に関わっている方もいるでしょう。しかし、そのような一部の方のせいで#BlackLivesMatter全体を信用せず、一方で「『悪い警察官』もいれば『良い警察官』もいるよね」と反論するのは、おかしいのではないでしょうか。

前述の通り、アメリカ史を振り返れば、公民権運動やLGBTQの社会運動が進んだ背景に暴動があったことは明らかです。
それに、先程は述べませんでしたが、もとはと言えば、アメリカだってイギリスに対して、ボストン茶会事件なり、独立戦争なり、暴動や力で抵抗しました。当時、後のアメリカ2代目大統領になるJohn Adamsは、「アメリカはイギリスにとっての『黒人(奴隷)』にはなるまい」と言ったそうです。(詳しくは、英語ですがこちらの記事に載っています。)
日本にも一揆や打ちこわしによって歴史の流れが変わったことがあるはずです。そのようなことは過去の話と仰る方がいるとするなら、こちらの方こそ、なぜ2020年にもなって暴動という手段を取らなければ社会が変わらないのか、聞いてみたいですね。
少し話が逸れますが、ヨーロッパ人が何百年にも渡って覇権を行使し、非白人から何から何までを奪い取り、今でも美術館でコレクションにしていることは、言うまでもありません。

暴動の中でも略奪行為については、他にも、抗議デモの手段となる理由があります。
抗議デモを残虐化しようとする警察官を分散させることができますし、地方自治体に対して大きな圧力をかけることができます。

また、生活の隅々までが商品化され、人の命よりも大量生産、経済成長が重視されるような現代の資本主義社会において、略奪行為は、抗議の正当な手段とも考えられます。
新型コロナウイルスの流行の最中、「必要不可欠な労働者」として感染のリスクを負いながら労働を強いられたのは、スーパーのレジ係の方や、物流センターの倉庫で働く方、公共交通機関のスタッフの方等でした。
そのような方々をヒーローとして称える一方で、十分な実質的な支援を行わず、命の危険を冒させながら、早く経済を元に戻したいと叫んでいたのはどこの誰でしょうか。(ちなみに、今のアメリカの大統領はもう本当に散々ですが、これも一個人の話のみにしてしまってはどうしようもなく、このような人が大統領になることができた社会、それを支えるシステムを批判することが大事と考えています。)

そのように低賃金、過酷労働で搾取された労働によって作られた商品が破壊されたから、なくなったからといって、真っ向から反論する資格はありますか。
貧困やホームレス、飢餓や戦争、公平な医療制度の欠如等、人の命を取る形の「暴力」を振るってきた権力者に、今更「暴動」を取り締まる権利はあるのでしょうか。
黒人の命が奪われていくことに対しては何もしないのに、モノが壊されたり盗まれたりすることに対しては、どうしてそこまで怒れるのですか。

「自分の町やコミュニティが破壊されていく」と内心不安がる方に対しては、なぜ今まで自分の町やコミュニティが、今抗議している人たちにとって不平等な構造になっていることに気付かなかったのか、考えていただきたいです。

略奪行為は、資本主義社会における、モノと価値の結びつきや、お金を多く持つことが「よいこと」という視点をも揺るがそうとしています。資本主義関連の話は、もう少し掘り下げた方がよいと思いつつ、このノートでは割愛します。

日本のあなたのポジショナリティ

日本に人種差別がなくてよかった、アメリカはなんだか怖いな、と内心ほっとしているそこのあなた!
あなたも#BlackLivesMatterが立ち向かう社会の中に、特定の立ち位置、ポジションを持っていますし、だからこそ、行動を起こす力と責任があります。
(ちなみに、日本人、日本に住んでいる、日本にルーツがある等以外にもアイデンティティはあり、人それぞれ、ポジショナリティというのは複雑です。ただ、その複雑さを考慮せずに「地球民として」「一つの人類として」関わってしまうと、自分の加害性を無視することになると考えています。)

どれか一つでもあなたに響くことを期待して、いくつか理由を紹介します。

まず、日本に人種差別がない、日本は単一民族だ等というのは神話です。
先住民のアイヌ民族がいます。琉球民族もいます。在日韓国人もいます。「日本は単一民族国家だ」と言うことで、このような方々の歴史やルーツが黙殺されます。
全て同じ東アジア人の人種だからと言って、日本人によるこれらの民族に対する差別や抑圧、植民地化の歴史は無視できませんし、現在社会にも根付いている差別に関しては、まず理解を深め、積極的に反抗する責任があります。

つい最近、日本の警察官による、トルコ出身のクルド人男性への暴力がありました。日本の警察の実態について、掴み切れてはいませんが、「法」のもとで、外国人に対する差別や不当な扱いは、日本でも起きています。

そして、もちろん日本にも肌の色による差別があります。
日本にいる黒人の方や、黒人の祖先を持っている方に対する自分の接し方、考え方についても、振り返ってみてください。
また、人種とは少し違う話ですが、「白い=美しい」という考え方は世界中に蔓延しています。黒人の方の中でも、肌の色が薄い方と濃い方で感じる抑圧も異なります。ここでは「美白」の歴史について説明する余裕はありませんが、もしかしたら、またの機会に。

次に、このノートにて#BlackLivesMatterからスポットライトを奪うつもりは全くありませんが、これまでにも示唆してきている、人種差別以外の社会問題との関連性をさっと吟味したいと思います。

インターセクショナリティの考え方の通り、そして、#BlackLivesMatterの「黒人解放運動の中でも特に疎外されている人たちを中心に置く」という方針からも伺える通り、様々なコミュニティ(黒人、女性、性的マイノリティ、障害者、移民、貧困層等)の戦いは結びついています。
社会の構造の変えたいという点において、様々な社会運動は本質的に繋がっており、繋がるべきです。

組織的人種差別や、構造的に白人が権力を持つ社会は、黒人のみにとって脅威なのではなく、他のコミュニティに対しても覇権を行使します。
よって、黒人の方のためのスペースを分捕らないように注意しながら、連帯して解放運動を進める責任があります。
現に、アメリカで移民の子どもがケージに入れられたとき、#BlackLivesMatterの参加者はその抗議デモにも参加していました。

他のコミュニティのためにも声を上げること、立ち上がることは、社会運動に関わる方、関わりたい方全てにとって重要なことだと考えています。

3つ目に、この視点は日本語のSNSでも少し目にしていますが、日本人に限らず世界中の人々の立ち位置を考えるとき、黒人が作り出した文化の消費者というポジショナリティも考慮することができます。
ビヨンセの曲、好きですか。ヒップホップを踊っていますか。ジャズバンドで活動していますか。
ブラックミュージックやファッション、アート等の恩恵を受けている者なら誰でも、それを作り出した人たちの戦いをサポートする責任があるのではないでしょうか。

また、今では一般的に社会に受け入れられているブラックカルチャーでも、黒人が作り出した当時は差別的扱いを受けたものや、黒人でない人が盗用したことによって人気が出たもの等、ここにも知られていない歴史があります。
ここではあまり説明できませんが、これを機にそのような歴史も調べていただけたら嬉しいです。

日本のあなたにできること

具体的な支援方法を提案する前に、注意点があります。インターネット、特にSNSの使い方に気を付けてください。
SNSでの誹謗中傷については、加害者にならないよう、くれぐれも気を付けて発信してください、というのは言うまでもないことと思いますが、もう1つ、SNSについて気を付けていただきたことがあります。
パフォーマンス的なアクティビズムにならないことです。

先日、SNSに黒い四角い投稿が並び、話題になりました。
私は、日本にも#BlackLivesMatterが知られてきていることに対しては好印象を受けました。問題の全部を理解していなくても(もちろん、理解されている方も大勢いらっしゃったと思いますが)、政治的な投稿をすることへの抵抗や不安、恥ずかしさ等を感じずに、もしくは克服して、投稿した方がたくさんいて、まずそこに希望を抱きました。(こういう点においては、performative activismはアメリカと日本とでちょっと違う背景を持つかと思っています。)

しかし、黒い四角を投稿することは、アクティビズムのほんの入り口です。
それだけで、他の人の黒い四角い投稿を見て少し安心して、あとはニュースの記事等を読んで終わってしまうのであれば、それはSNSで自分のステータスを保つため(だけ)のものであり、積極的な行動主義(アクティビズム)を掲げながら実質的な支援への行動に移さない、パフォーマンス的なアクティビズムと言えるでしょう。
一歩踏み込んで、自分の考えを書いて投稿するだけでも、十分ではありません。
(ただ、少し強調したいのは、先程も述べた通り、そもそも政治的な投稿をすることに対して抵抗感が強い日本で、入り口に立てるのであれば、無関心で何もしないよりかはましかもしれない、、、ということです。)

そういう意味では、多くの企業が黒い四角い投稿や、#BlackLivesMatterのハッシュタグをつけた投稿をしていますが、それらの企業は、#BlackLivesMatterが取り掛かろうとしている、労働搾取構造や資本主義社会を支えているということで、#BlackLivesMatterの活動の最中の友人からは、批判的な視点が多いです。
個人のSNS同様、社会運動に賛同するというステータスを維持するだけで、全く寄付や方針転換を行わないのであれば、パフォーマンス的と批判されても仕方がないと思います。

行動に移すには何をしたらよいか。

まず、問題への理解、運動への理解をより深めてください。
このノートに書いてあることが信じられないと思ったら、インターネットで検索してください。入り口はどこでも構いませんが、主流メディアに流されないでください。
英語になりますが、#BlackLivesMatterのウェブサイトもあります。また、友人が資料や署名先をまとめているグーグルドキュメントもあります。
日本の友人の中にも、日本語の資料をまとめていただいている方もおり、今後ノートでも共有します。

そして、これについて、人と話してください。(SNSでもよいですが、対面もしくはビデオチャット等がお勧めです。)
冒頭に挙げたような疑問を耳にしたら、面倒くさくても、少し自信がなくても、話をしてください。
(もちろん、人と場所を選んで議論することは、メンタルヘルスを守るためにも、自分も大事にしていることですが、当事者である黒人の方々は、議論や戦いに参加するかしないかを選ぶことさえできないことを、覚えておいてください。)

対話を通して、少しずつですが、自分や周りの方の意識や考え方を変えることができます。
感情的になることもあるでしょうし(むしろ感情的にならずにいられるでしょうか)、間違ったことを言うこともあるでしょう。自分の今までの価値観が覆されるようなこともあるでしょう。それを恐れて何もしないのは、いじめの傍観者と同じです。
「中立」なんてありません。積極的に、抑圧される側の解放のために働きかけていなければ、あなたは問題の一部であり、抑圧者に加勢する側となります。

そして、このノートを、ノートを読んだ感想を、このような話をする人を、「意識高い系」「真面目」「政治的」「なんかすごい」「怖い」で片付けないでください。

寄付をしてください。10ドルでも、50ドルでも構いません。
Black Visions CollectiveOfficial George Floyd Memorial FundReclaim the Block等の団体があります。
抗議デモで逮捕された方の保釈金を寄付できるNational Bail Fund Networkもあります。
日本から寄付する方法がなければ(USドルのクレジットカードがない等)、今後調べて共有します。

金銭的余裕がなければ、YouTubeのビデオを見る等で、広告料を通して寄付ができます。こちらも、他にも多くの方法がありそうなので、今後見つけて共有します。

もう一度言いますが、黒人の方や抑圧されるコミュニティの方にとって、この「政治」問題に関わるか関わらないかに、自身の選択の余地はないのです。毎日、毎秒、向き合わざるを得ない、日常なのです。
あなたが関わらないと決めることができるのは、特権です。
一方で、あなたも#BlackLivesMatterが立ち向かう社会の一員であり、関わると決めることができます。行動を起こす力があります。
沈黙は、暴力です。

Black Lives Matter.
Black Women Matter.
Black Trans Lives Matter.
Black Children Matter.
Black Futures Matter.

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