必然の逆転劇 ~アタランタ VS PSG~

「アタランタのマンツーマン」と「PSGの応じ手と先制点」

アタランタがPSG相手にいつものようにマンツーマン守備で全然からプレッシャーをかけるのか、それに対してPSGがどのような応じ手を打つのかということが見所でしたが、解説の戸田和幸さんがおっしゃっていたように、お互いが積極的に自分たちの良さを出して戦った素晴らしいゲームだったと思います。いつも通り、アタランタはマンツーマンを主体とした守備。

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それに対してPSGは、トップ下が降りてきてできたスペースにネイマールが入り、GKから長いボールを入れたところからの攻撃。(トップ下がネイマールにボールが出た瞬間に3人目の動きのランニングをしているところを見ると、明らかに準備してきていた応じ手)

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開始早々にはネイマールが決定的な場面をつくるがPSGの先制点にはならず。(ここで決まっていればもちろんゲームは全く違う展開だった)逆に、アタランタの先制点は、PSGが準備してきたGKからネイマールへのロングボールを奪ったところから生まれたというのもフットボールの妙。アタランタは、マンツーマンで前線からプレスをかけていたことで、ボールを奪った後には前線に多くの選手を割くことができ、そのメリットが今回の先制点にもつながったと思われる。(先制点を決めたのはPSGの左CBキンペンべをマークしていたパシャリッチ)

アタランタの対応とかさむイエローカード

後半は終始PSGのペースでゲームが進むが、もちろんアタランタも相手の狙いには気づいており、ダブルボランチが、相手のトップ下につきすぎず、ネイマールへのパスコースをけん制するポジショニングをとるなどして対応。後半はGKからダイレクトにネイマールにボールが届く回数はやや減ったように思われる。

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それに対してPSGは、相手のダブルボランチのポジショニングを見極めたうえで、状況に応じてSB⇒ボランチルートを経由。

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得点は奪えないものの、アタランタの守備を丁寧に攻略していった。(アタランタの右CBがあえて高いポジションをとった場合はシンプルに裏のスペースを使うロングパスも使っていた。)アタランタとしては、まさに「真綿で首を締められる」試合展開。

 その中、1対1でネイマールを抑えるのは至難のわざで、もちろんアタランタもネイマールにボールが入った際には状況に応じて数的有利をつくるなどして対応していたが、イエローカードがかさんでいった。(このゲームでネイマールが受けたファールは9回。アタランタのイエローカードは合計6枚)ただ、おそらくこんなことはアタランタの選手もガスペリーニも承知の上で、60分にはカードをもらっているジムシティをパロミーノに交代して対応。(そしてパロミーノもイエローをもらう笑)個人的には試合を通して前半から的確にジャッジを下していたレフェリーのレベルの高さにも注目したい。カードを出すことを躊躇していたら、ゲーム展開も違うものになってしまっていたかもしれない。そしてそこでムバッペ投入。(アタランタDF「勘弁してくれ」笑)確実に追い詰められていくアタランタの選手たち。(ガスペリーニ監督「フロイラーの負傷がなければ…」とは思わないか笑)

違いを見せる男 ネイマール

それでもゲームはアタランタリードのまま時間が経過。(解説の名波さんの前半アタランタ先制時の「これでゲームがおもしろくなりますね」発言が効いてくる笑)選手以上にスタンドで観ているベンチ外の選手も焦りを隠せない中、やはりこの選手は違った。

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90分には右からのクロスボールをファーで受けて左足ボレーから先制点アシスト。(ここでもシュートはヒットせず。アシストはしたものの、「やはり今日はネイマールの日ではないのか」と思った人もいたはず)そして逆転弾の際のあの完璧なスルーパス。90分を通して散々強引ともいえるドリブルで仕掛けてきたくせに笑、まるで「今までの90分間は布石だよ」と言わんばかりの完璧なタイミングでのスルーパス。修羅場を潜り抜けてきた男の冷静さはやはり違っていた。(よかったねシュポモティング)

必然の逆転劇とゲームの立役者はやはり「アタランタ」

結果的に同点弾&逆転弾は90分になったが、この逆転劇を「気持ち」や「奇跡」で片づけるのはやはりもったいない。(もちろん「気持ち」は大切だが)90分を通して丁寧に相手の守備を「観て」攻略していく中で、アタランタの守備網に確実に穴を開けていったPSGに最終的に軍配が上がったとみるのが妥当だろう。(イエローカードの蓄積も、フロイラーの負傷も、見方によっては必然だったのかもしれない。)ビハインドしているという数字に左右されず、逆転を信じ、冷静にやるべきことをやり続けたPSGの選手達と監督に賛辞を贈りたい。だからこそ、やはりこのエキサイティングなゲームの立役者は「アタランタ」だろう。彼らの相手を恐れぬ姿勢と、緻密に組み立てられた戦術は確実にPSGをベスト8敗退の一歩手前まで追い込んだのだから。それがなければこのゲームはこんなにもエキサイティングなものにはならなかったはずだ。フットボールは、PSGやマンCのようなビッククラブではなくとも、人々を感動させてくれるということをアタランタは教えてくれた。最後にガスペリーニの試合後のコメントを。

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「勝利にとても近づき我々が勝利を手にする可能性があったから、大きな後悔がある。しかし、それと同時に最高の経験とチャンピオンズリーグでの成長にとても満足している。最高のシーズンにしてくれたみんなに感謝することしかできない。本当に難しい試合だったが、もう少しだった」

ガスペリーニさん、感動をありがとう!!


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