トンガでの活動を元に書いた卒論の要旨

2017年度に横浜国立大学の教育人間科学部を卒業いたしました。
その時に書いた卒論が、トップ画にもある（猫の意味は全くない）「MDGs 評価レポートの限界—トンガ王国における現地住民への「健康」に関する意識調査を通して−」です。

2015年に青年海外協力隊として、トンガ王国で活動させていただいた時のフィールドワークといいますか、経験を元に書きました。今流行りのSDGsの前身、MDGsって結局どーだったん？ということをトンガを事例に書いています。ちゃらんぽらんな学生でしたのでクオリティはさておき、お世話になったトンガのことを書きたいなーと思って当時は当時なりに頑張って書きましたので、少しはトンガのことを知っていただけるのではないかなぁと思っております。

ちなみに、文中に出てくる、NCDsとはNoncommunicable diseasesの略称であり、非感染性疾患、すなわち循環器疾患、がん、慢性呼吸器疾患、糖尿 病などの「感染性ではない」疾患に対する総称です。生活習慣病をイメージしていただくといいかと思います。

「MDGs 評価レポートの限界—トンガ王国における現地住民への「健康」に関する意識調査を通して−」

【背景・目的】

NCDsはトンガ王国の全死因の70％以上を占め、MDGsに開発指標が掲げられていたが、十分に達成されたわけではなかった。筆者は2015年4月～2015年10月の期間、トンガ王国において、青年海外協力隊としてNCDs対策の健康意識啓発活動を行った。その際に地域社会の中で見受けられた、NCDsに対する考え方や実際の行動を明らかにすることで、NCDs対策に貢献しようとするのが、本研究の意義である。NCDsが近年問題視されているが、グローバリズムの波にさらされ、健康的であった食生活が変わり始めているという指摘が80年代には足立らによってなされている。また、2000年代初頭に、都市部におけるトンガ人の伝統的身体観について調査研究した井上によると、トンガ人にとって「肥満」という問題は土着のものではなかった。これらの先行研究を受けて、「なぜMDGsが達成されなかったのか」を明らかにするため、「なぜ不健康な食生活になっているのか」という疑問を地域住民の語りから考察していく。ただ、「食生活」について論じるときに、その日常性からどうしても主観的な議論になりやすい。論議の根拠についての検証が弱く、感覚的になりがちである。しかし、現地住民の語りから、NCDs問題に関する何か重要な手がかりがあるのではないか、というのがこの論文の狙いである。

文字だけだと辛いかなと思ってトンガの教会の写真をば。

【方法・期間】

トンガタプ本島、エウア島、ハアパイ諸島、ババウ島、ニウアフォオウ島において、年齢、地域、性別が異なる7名の現地住民に対する個別インタビュー調査（半構造型）と短期ホームステイなどにおける参与観察を行った。期間は2015年4月から10月にかけて行った。

【結果・分析】

参与観察から、調理において安さと手軽さを重要視する傾向が強いことがわかった。また、１日に3食食べるといった、規則正しい食生活ではなくて、お腹が空いたら食べる、あるものを食べるという様子が観察された。その際に、安さと手軽さを重視するため、パンにバターや袋麺、ケケと呼ばれる高脂質、高塩分の食べ物を大量に摂取する。また、レシピのレパートリーは少なく、似たような味付けの料理が多くなることがわかった。さらには、砂糖や油などを大量に使用しているも見受けられた。中国人移民によって、新しい野菜などが市場に出回ったり、調味料などの新しい食材も増えたりしているが、それらの使用法をわかっていない姿も見受けられた。一方で、「1日に5種類の野菜を食べる」ことや「砂糖や塩の摂りすぎは良くない」などといった保健省などによる勧告は浸透しているが、地方や離島の住民にとって、野菜の購入は金銭的に難しく、実践されてない。インタビューからは、NCDsを問題だと認識していても、実際に問題が起こるまでは危機意識が低いことがわかった。「健康」を意識して生活するよりも、その時々を楽しんで生活することにプライオリティを持っている。

【結論】

都市部におけるトンガ人は不健康な生活をしているという自覚があるが、原因を自分たちの”lazy”という性質にあると語る傾向が強い。これは、欧米的な「健康」概念を安易に受け入れることを無意識的に回避して、自らのアイデンティティを守っていると捉えられる。これがMDGsを達成できなかった原因の一つであり、このことを考慮して、支援活動を行うべきである。

終わりに

要旨を読み返すだけでも恥ずかしい。。そんな奇特な方がいらっしゃるかわかりませんが、本文は有料版にしてほぼ全部公開いたします。売上は全てトンガ支援活動に使わせていただきます。内容に関するクレームはご遠慮ください笑

目次

以下、有料です。ご容赦ください。