マガジン一覧

石の上の読書

読書の記録

読書記録11:後藤明生、プラトン、

「カフカの迷宮:悪夢の方法」後藤明生 わたしたちは、原因不明で正体不明の「迷宮」に迷い込んでいて、その迷宮の中でしか生きられない運命にある。そしてわたしたちが生きるということは、その迷宮に「所属」することなのである。 このような、原因不明の運命としての迷宮、および迷宮への所属を、カフカは、「原因不明の悪夢の方法」で描いたのだ、と後藤は言います。 ところで、「所属する」とは、「わたしは常に他者との関係のなかで生きている」ということです。これは、なかなかに恐ろしいことであると思い

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読書記録10:安部公房、金井美恵子、

「青春絶望音頭」富岡多恵子  角川文庫版。古書店で5冊100円で入手(ページを開けばチョコレートの匂い)。小説と思ったら、苦手のエッセイだった。 「青春絶望音頭」というタイトルはなかなかいいと思います。5 「背中の地図 金時鐘詩集」 「東北は結局のところ列島の背すじあたりで呻いていて/そこは振り向いても見えはしない/昏い背中だ。/忘れ果ててしまった何かが/打謎の符丁のように貼り付いている。」 ●東北の海岸線は、たしかに背骨のようにみえる。背骨は大切だ。7 「昭和文壇側面史

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読書記録9:後藤明生、村田沙耶香、

「ゆうじょこう」(新潮文庫)村田喜代子 薩摩・硫黄島出身のイチをはじめとした、親から売られてきた子どもたちの方言、花魁の廓言葉、そして鐵子さんの知性ある言葉など、さまざまな言葉が物語を織りなす。 娼妓を「人外」、つまり「人ですらない者」と規定する行政機関、下級武士出身のくせに女性差別を容認する福沢諭吉の二枚舌、弱者の味方をしているようで偏見に満ちた救世軍(キリスト教者)などへの怒りが、ストーリーを力強く支える。 最後まで読んで、東雲楼のストライキは、熊本・二本木の遊郭、東雲楼

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読書記録8:プルースト、五来重、

「パスティス」(ちくま文庫) 中島京子 真夜中の電子図書貸出サービス。元ネタも読んでみたい、もう一度読みたいと思わせるのは、作者の思う壺か。 「坪内逍遥」による「ゴドーを待たっしゃれ」の翻訳は、いわゆる「現代語」による訳文よりわかりやすいかも。「ゴドー」の不条理感と、戯作調の日本語の語感やリズムが合うことにびっくりした。同時に、本家の坪内訳のシェイクスピアが、味わい深かったことを思い出した。 初読みの作家さんだったが、おもしろい! 8 「ちくま日本文学037 岡本かの子」(

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(詩)否定形を否定できない

あなたは始終肯定していきたい だから否定形で言いたくない しかし否定形でしか言えないことがある 実際のところ はっきり肯定できることはあんがい少なく 見方によってはまったくない 何かを言うことは何かを言わないことで 何かを言えば唇が寒い 震える唇を否定形はあたためてくれる あなたは始終肯定していきたい けれど否定形は否定できない。

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(詩)おんな

おんなが好きだ もっと好きに なりたい なんならおんなに なりたいくらい おとこも まあ好き もっと好きに なりたいけれど おんなのようには いかない なかなか おんな おとこ おとこ おんな 好き けど ひとが好き とは 言いづらい おんな おとこ 肌触れ合えば ときめきます ひと いつも 鎧着ていて 歯が浮きます ひとが ひととして 生きること 容易だけれど 難しい 難儀な ひと である前に おんな おとこ であらん と 窓の外 雨 大粒 土砂降り 街

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(詩)赤と黒(1830)

彼と彼女は 舞台俳優のように 見る人聞く人へ 呼びかけます また書き手は 出版者と対話してみせ 小説とは虚構である しかし 大道に沿って運ばれる鏡 と呼びかけます フランス人の風俗を真似るが いつでも五十年の開きがある と揶揄されるロシア人から譲られた 五十三通の恋文の写しから 彼は恋愛を学び 一方彼女は その時代のベストセラー 「マノン・レスコー」や「新エロイーズ」で 恋をなぞり 凡庸な恋の神秘を 確信できないまま二人は 故国の偉大な過去という幻に 吸い寄せられ 自

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(詩)西風が吹きつける夕暮れの海岸で

西風が吹きつける夕暮れの海岸で かつての恋人と出会った わたしたちは手と手をとりあって 粗末な小屋に入り お互いの目を見つめて 静かに抱き合った しかしわたしはその人の名を どうしても思い出すことが できなかった その人もまたわたしの名を 思い出すことが できないようであった 交わす言葉がないまま わたしたちは静かに抱き合った ただ懐かしさだけが わたしたちをつないでいると感じられた 天井に吊されたランプが 隙間風に揺れた 壁に映ったわたしたちの影も 不安そうに揺れた

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積み重なる日々の短歌2409

エアロのちコンバットのち千泳ぐ。泥のように眠るであろうか タブレットで読みつつバイク漕いでみた。文字との距離がとおいようだ 夕暮れにYRまで散歩してビールを四本二人で呑んだ タイガース2位が確定したらしい。勝負強さに欠けていたなあ 安穏な九月が終わりに近づいてきた。むさぼるように本読み過ごす BSのゲラの準備を終えたけど難儀な日程指し示される 新宿から十分乗ったドアの外。虫の世界が広がっていた 一昨日の疲労を少し感じたが千も泳げて気分高まる MさんとCさんとと

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積み重なる日々の短歌2408

お仕事と暑さと多忙のせいなのか。胸苦しさを覚える懸念 一週間原稿整理に没入し、十六本を著者校に出す こっちへと来るはずだった台風は、あっちに向かい、こっち助かる F山のシャインマスカットをいただいた。味わいながらお礼メールした 日本人と正義が対立するという文章を読む。わけがわからぬ 明日朝は雨振り予想が出ているが、行かないわけにいかぬから行く 久々に500メートル泳いだが、肩の痛みはなく安堵した KDのズンバの後に少しだけ長いプールで泳ぐ、ほんの少しだけ 図書

積み重なる日々の短歌2407

一日を残してノルマをクリアする。この挑戦もあと半年とか ミニトマトあと2回くらいとれるかも、しかし襲ってくるかも、虫が 朝のうちに歩けばよいとの習慣を今さらながら確かめる夏 お仕事は明日すればよいはずとトリストラム氏の能弁を聞く 町田までお祝いに行くも夕方のエアロに間に合う時間に帰る 畑から駅まで往復歩くなら八千歩など難なくクリア Hまで本借りるため一万歩。炎天下での苦行に臨む 原稿を次々整理するせいで冷涼な部屋に甘んじる午前 畑での作業のあとに踊らんと扉を出

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積み重なる日々の短歌2406

無事今季終えたことを祝うためトリノへ出かけ乾杯をする 一週間本を読まない生活がようやく終わりほっとしている 本降りの畑仕事を持て余し書庫整理して小康を待つ 薄墨が流れる海を前にしてタイとイカとを黄身でまぶした イカ刺しをごはんにたっぷり載せたうえ卵の黄身をまぶして食べた 黄金の茶室を守る人が言う「私は好き」は逆張りだろう 本日のなすべきことはただ一つ。大きなうな丼たいらげること 土砂降りの道路をバスは西へ行く。呼子われらを呼ぶ声を聞く 大雨をおしての国立博物館

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詩誌「意味?」

わたしの詩誌はすぐ読み終わります

詩誌「意味?」5

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詩誌「意味?」4

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詩誌「意味?」3

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詩誌「意味?」2

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