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 国民集会の様子だとして提示された写真は、いかにもプロパガンダの典型というような、不自然に活気が強調されたものだった。
 競技場の写真を、じっと見る。異様に彩度が高く鮮やかで、しかしピントや焦点といった類のものがなく、奥行きが存在しないような平べったい印象を受けた。
 この写真を見せれば他国を欺けると信じているという、そのことが信じられない。
 仮に独裁者が『この写真を撮れば諸外国に繁栄をアピールできる』とか言ったとして、周りの幹部たちは本気で信じるものなのか?
 きっと頭が良くて、高い教育を受けたり、外国のことも知っていて、自分の国が貧しいことも理解しているだろうに。
 弥山としては、粛清の対象になりたくないから、お山の大将の妄想に付き合い続けているんじゃないかとか思うわけだが――生まれた祖国の刷り込み教育というのはそういうレベルではないのだと、気怠げなまま枕辺が言った。

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