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字であればなんでもいいとさえ言った。
まごうことなき濫読派である。
枕辺はもじゃもじゃの頭を掻きながら「いつからうちの弥山はこんなになっちまったんだ」と嘆く。
しかし、その言葉に弥山が反応することはなく、一点を見つめたまま超速でページをめくっていた。
字、なんでこんな落ち着くんだろ……やっぱりあの妙なきのこを食べたからかな。
思考の隅で、派手な紅色のきのこが溶ける。
麻薬みたいな成分でも入っていたのでは云々と、ぼんやりとは考えられるものの、やはり自分の思考よりも、目に入る文字の吸収に脳の回路が優先されている感じがした。
弥山の視線は揺れている。
ページの上を滑るように、あるいは、目から出たレーザービームが、文字という文字を焼きつくすかのように。
枕辺は特大のため息をつきながら、椅子の背もたれに体重を預けた。
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