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 喰われて死ぬのかな、という本能的感覚と同時に、なんだかみすぼらしくてかわいそうだという理性で、目の前の野良犬を見ていた。
 深い雪に長靴を打ち込んで行くように、ぐぽっ、ぐぽっと前に進む。
 弥山が犬の目線に合わせてしゃがみ「どしたの」と微笑みかけると、犬はしょぼくれたまま、所在なさげにうろうろと肉球の跡を増やした。

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