ばあちゃんズ



①日向ぼっこばあちゃん

最近駅まで歩く様になった。
行くまでの道沿いに、クリーニング屋さんがある。
そのクリーニング屋は、私が通る時間にはとても日当たりがよくて、窓際がポカポカしている。
その窓際にいつもおばちゃんが椅子に座って、足を台に乗せて、猫背になりながら本を読んでいる。

私が歩き始めた時に、多分1ページ目を読んでいた。
日を重ねる毎にページ数が増えているを見る事がとても楽しみ。
でもこの前、本を読まずに同じ格好で体を横に向けて隣の盆栽をボーッと眺めていた。
本の気分じゃなかったのか、本が面白くなくて飽きたのか、全部読み終わったのか、答えはわからないけど
そういうことを考えながら歩くのがとても健康的な気分になって好き。

あの本がなんの本なのかも、気になるし知りたいけど、分からなくて良い。



②派手ばあちゃん

うちの店に毎週来るおばあちゃんがいる。
旦那さんのお墓参り用の花を買いに来る。
お喋りがとても大好きな気の強いおばあちゃんで、娘と紅葉狩りに出掛けたことや、今日のご飯を何にするかなど、たくさん話をしてくれる。
とても忙しい時にも話が続くので、適当な返事をしてしまった事もあったが、来ないと心配になるし寂しくなる。

この前きた時に、水色にカラフルな花柄模様がついためちゃくちゃ派手なダウンジャケットを着てきて、私が何か言う前に「これ派手やろ?娘がくれたから仕方なく着てるの」と言っていた。「可愛い」というと「あったかいから着とるだけ」と言っていた。

「コンビニ行ってくるから、花作っといて」と言われ、「わかりました」と言ったら「ビール買ってくる」と嬉しそうに言っていた。「お昼からいいですね」と言うと「もうすぐしぬんだから楽しまないかん」と笑っていて素敵だった。

そして「またくるね」と言って帰っていた。

私はおばあちゃん子だったこともあるのか、色んなおばあちゃんと話すのは嫌いではない。




③うちのおばあちゃん

先月に家で倒れて入院し、歩けなくなってしまい先週から施設に入ることになった。

入院期間で認知症がとても進んでしまい、お母さんに毎日夜電話がかかってきて「いつ家に帰れるの?」と言って少し会話をしたら電話が切れ、またすぐにかかってきて同じことを聞いてくるのが、入院中続いた。

退院して施設に行く日、私も病院へ行った。

私のことがわからない可能性もあると覚悟していたが「〇〇ちゃん!きてくれたんか」と驚いていて安心した。
「また会いにくるからね」と言ったら「こんなんになっちゃってごめんね…はよしにたいわ」と言った。
「会いに行くからしんだらあかんよ」と言ったら「ありがとうね」と言っていた。

その日の夜に、お母さんに何回も電話がかかってきて「ここはどこなん?いつ帰れるん?なんでこんなとこ入れたんや!薄情や!」と20回くらい泣いて怒って電話がかかってきた。

私もお母さんも辛かったけど、1人では暮らせないし、昼間面倒を見る人もいないし、子供としては1番安心な決断だったはずだが、さすがにお母さんもキツそうだった。

私はお母さんにいつか同じことを言われたらどうしようと思った。その可能性だってもちろんあるから。

だから、会話がたくさんできるうちにたくさんしたいし、まだバリバリ働いているかっこいいうちのお母さんと、たくさん出かけたりもしたいと思った。




④ばあちゃんズ


当たり前だが、私は③のおばあちゃんが1番好きだ。

日向ぼっこばあちゃんも、派手ばあちゃんも、きっと誰かのおばあちゃんかもしれないし、誰かの親かもしれない。関係は様々でも、感覚として誰かの③ではあると思う。

関わりが浅ければ浅いほど、色んな悲しみは少ないし、悲しまずに済むならそれが楽だけど、悲しいと思う気持ちの分、たくさん大好きで思い出があるということ。

だから私は悲しむことを恐れずに、まだまだたくさん思い出を作りたい。
それが少しでもおばあちゃんの思い出にもなってくれたら嬉しい。


世の中の色んなばあちゃんズ、じいちゃんズの悲しみの分だけ、幸せを願ったり返していくことがまだ体力のある若者の役目のひとつだと本当に思った!


そして私がばあちゃんズに加入して、もし老いる悲しみを受け止められなくなった時、少しでも思い出してハッピーになれる思い出を、いまからの人生でたくさん作っておきたいと思った。





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