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「にゃんこは見た!」〜夜空に願いを〜

出ていくのね。
月の光の下へ。
お願い事をしに。

・・・

真夜中。
てくてくと歩き、コンビニで冷えた黒い缶を買った。

カンカンカンと歩道橋の階段を登り腰掛ける。
上を見上げると、青黒い空にまんまるが少し欠けたお月様と小さな星たちが光っている。

あの日、病院からオカンの家に着替えを取りに行った。カーテンが小さく揺れていた。窓も開いてないのに?そこから
みゃーみゃーみゃーと、か弱い声が聞こえる。

夜空を見つめながら話しかけた。
「あなたが一度だけ抱っこして、涙した新しい命は、もう18歳になりました。」
「そして、あなたがお月様のそばへと旅立ってから18年経ちました。」
黒い缶をカシッと開ける。
ゴクゴクゴクとほろ苦いビールを飲む。

ポロッと一粒、涙がスニーカーに落ちる。涙が星の雫のように見えた。

「もう少しだけ、あの子と一緒にいさせてね。」

家に帰り、ベットに戻ると猫娘の長女がチラッと私を見て「おにゃすみ」と言った。

・・・

私は見た。

物凄く驚いてまん丸の目をもっと丸くさせて
パチパチと何度も瞬きする母ちゃんを。
母ちゃんは抱えていたおばあちゃんの着替えを床に落とし、慌てて美味しい猫缶をキレイな器に入れた。
そして小さなスプーンで私の本当の母ちゃんの口元へ運んだ。
「にこちゃん、知らない間にお母さんになっていたのね。栄養つけるんだよ。赤ちゃんにおっぱいあげてね。」
産まれたての私をそっと撫でてくれた。

一度だけ帰ってきて小さな私を抱っこしてくれたおばあちゃんはその後すぐ、お空の星になった。

暫くして私は母ちゃんの家の長女になった。
それから毎晩、母ちゃんの隣で枕を半分ずっこして寝ている。
そのうち、女の子が他のお家から来て、いつの間にか三姉妹になっていた。
私は今、母ちゃんの歳を越えておばあちゃんになった。
ゆっくりと歩く私を、丸くなって寝ている私を見て
ニコニコニコと笑顔で撫でてくれる。

真夜中にお散歩して帰ってきた母ちゃんの赤くなった鼻と目を私は見た。

「おにゃすみ」と言って今夜も枕を半分ずっこした。

・・・

枕を半分ずっこして寝る長女を描きました。

・・・

(昨夜の私の写真。と見上げた空に光る月の写真。)
(その上の写真は、今朝まんまと寝坊しして「やらかした…。」と呆然とする私を見て「全くしょうがないねー。」と言っている長女です。)
(「にゃんこは見た!」第2話です。)




読んでくださりありがとうございます! 嬉しくて飛び上がります♪ 私の心の中の言葉や絵を見て何か感じてくださればいいなと願いつつ。