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冬のある日
手紙を出しに郵便局へ向う。
前だけを見て早歩き。
「こんにちは。」
キョロキョロ周りを見ても誰もいない。
「ここよ。」
下から声が聞こえた。
見るとお花。
足を止める。
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「お花さん、こんにちは。」
「なんでそんなに急いで歩いているの?」
「なんでだろう。急ぎではないんだけど。」
私は昔からいつも早歩き。
「ミチはいつも走ってるイメージ。」友達がニコニコしながら言ってた。
お花をよく見ると、冬の朝の白い息のような白の中に黄色、花びらはふんわりしたドレスのよう。
冬のお姫様みたい。
やさしく甘い香りがした。
「ちょっとゆっくり歩いてまわりを見てみたら?」
「うんそうする。お花さん、とても綺麗に咲いてるね。寒くないの?」
「わたし達はこのひんやりと冷たい空気が心地よいの。冬の空は高いし、夜は星が沢山見えるから。雪が降った日は、辺り一面が同じ色になるでしょう?雪と一緒にキラキラ輝ける。」
目をつむって想像した。
美しいキラキラ。そしてやさしく甘い香りがする。
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目を開けて上を見た。
真っ青な空の下に竹林。
風で葉が揺れる。サワサワという音が小さく聞こえてきた。
![](https://assets.st-note.com/img/1705496872416-p18gLZJQir.jpg?width=800)
「ゆっくり歩いてみるね。ありがとう。」
「いってらっしゃい。お気をつけて。」
ゆっくり歩いてみた。
ちょっと寒いなと思ってダウンジャケットのチャックを一番上まで閉めた。
ゆったりとした気持ちでまわりを見る。
いろんな形のお家やお店。手入れされたお庭。いろんな色の車。芽吹きを待つ畑。
いろんな音や声、匂いがする。
ワンちゃんが嬉しそうに尻尾を振ってお散歩。
いつもと違う道を歩いてみる。
喉が渇いたので自動販売機を探した。
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「クリームソーダ?」
冬なんだけど。
クスッと笑って、温かいお茶を買うつもりだったのにクリームソーダのボタンを押した。
自動販売機から取り出し、手に持つと缶がヒヤッと冷たい。
カシッとプルタブを開け、ひとくち飲んでみる。
「シュワ シュワッ シュワワー」
メロンソーダとアイスクリームが混ざった懐かしい味が、口の中ではじけている。
「おいしい!」
なんだか子どもの頃、喫茶店でお母さんにおねだりしてクリームソーダを初めて飲んだ時のように楽しくて元気が出てきた。
少し先の用水路にカワセミがいた。
近付くと飛んで行ってしまうので、離れたところから写真を撮る。
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スマホの「パシャッ」という音で飛んでいってしまった。
画像を見たら思いっきりピンボケしているけれど、それもよいなと思った。
郵便局に着いた。手紙はポストで送れる。でも季節の切手を貼りたくて郵便局まで歩いて来た。
どんな切手がよいかな?喜んでくれるかな?
さっきお話したお花さんに似ている切手があった。
これにしよう。
技術校時代の旧友から届いた手紙は、変わらない丸っこい字で書かれている。
一緒に技術を学んだあの頃のことを鮮やかに思い出した。
手書きの手紙って、その人の心のぬくもりを感じる。
私は一筆箋が好きなので、そこに縦書きでお返事を書いた。
押し花で作った栞も入れて封をした。
帰りにスーパーで食材の買い物をしたら、予定より多く買ってしまって重い。
帰りはバスに乗ることにした。
バスの窓から見えるものも、歩くのと違う。
最近はバスに乗ってもスマホや資料を見たり、ウトウト寝たりして窓を見ていなかったことに気付く。
お花さんが話しかけてくれて、いつも通っているのに見ていなかったいろんなものが見れて楽しかったな。
今日も夜空の星を見上げるのだろうか。
お花さんありがとう。
「ただいまー!」
猫が玄関で
「おかえりなさーい!」
とグルグル喉を鳴らしながらお迎えしてくれた。
部屋でダウンジャケットを脱いで、カバンと買い物してきた荷物を置く。
その間に猫は、窓辺に戻り日向ぼっこして寝ている。
午後の柔らかい陽が窓に差し込んでいる。
背中を触るとほかほかだった。
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あまりにも気持ちよさそうで、思わず隣にごろりと寝ころぶ。
体も心も暖かい。
ウトウト少し寝て、起きたら夕方だった。
少し肌寒くなり、雨戸を閉めに外に出る。
猫はコタツ布団に移動してぬくぬくしている。
私も熱いココアを飲んで体を温めよう。
![](https://assets.st-note.com/img/1705501542480-kiPmD6rxVm.jpg?width=800)
昔作って、前夜に丁寧に洗った編みぐるみのくまさん、乾いたかな?と持ってきた。
絵のモデルになってもらうのだ。
猫舌だから、少し冷めるまでカップに手のひらをつけて手を温めた。
程よい温度になったココアを飲みながら、どんな絵にしようかなとワクワクする。
体中がぽかぽかしてきた。
![](https://assets.st-note.com/img/1705509371912-p15wwCLcZ2.jpg?width=800)
少し前にいただいたお花はビタミンカラー。暑い夏の日を想う。
「花はいろんな季節を感じさせてくれるね。」
あの子はピカピカの笑顔で言っていた。
「冬の花も綺麗だったよ。」
お花と一緒に飾ってある写真につぶやく。
今日は忘れかけていた大切なことを教えてくれた。
私は何に対しても早歩きしようとして息切れする。
歩く時だけでなく、いろんな事でも、一度足を止めてゆっくりまわりを見てみよう。
何かを見つけるかもしれない。
今夜はお鍋。サッパリとお出汁にポン酢ダレにしようか、胡麻をすってごま味噌󠄀鍋もよいなあ。
明日の朝はご飯と解いた卵を入れて、仕上げにパラリともみ海苔をかけた、おじやにして食べよう。
花歌を歌いながら料理を始めた。
そんな冬のある日の話。
・・・
最後までお読みくださりありがとうございます。
このお話はフィクションで、ほんの少しノンフィクションです。
このお話を書きながら思いました。
「そんなに早歩きしなくてもいいんじゃない?」
私もよく言われます。
背が低くて足が短いので、みんなのスピードに着いていきたくて早歩きになるのかな。
植物や人間以外の動物とも会話しているのではないか?と思うことが時々あります。
「大切なもの・ことを見逃さないようにね。」
「頭に浮かぶこと考えることだけでなく、五感でまわりを見てみる。心の中の本当の気持ちも感じるといいよ。」
なんて忘れっぽい私に言ってくれる。
そんな気がします。
・・・
お話・写真
じゅんみは
※写真はいろんな年の1月に撮影したものを使いました。
自動販売機のクリームソーダは夏に撮影したものです。
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三毛猫三姉妹はヒミツの話をしてそう。
読んでくださりありがとうございます! 嬉しくて飛び上がります♪ 私の心の中の言葉や絵を見て何か感じてくださればいいなと願いつつ。