シラフ


昼前に陰鬱な気持ちで起きて、体の重さを感じる。イライラする。そういう時はスマホを置いてインターネットという毒素から離れて、太陽でも浴びるべきなんだろうけど、重い。
ツイッターを見て、悪態をつく。やめればいいのに。

ドーパミンをいじくって覚醒させる薬がある。それの10mgの1錠を飲もうと思って、やめた。今日、夜までは特に予定がない。

覚醒する薬ではなく、気分を落ち着ける薬を探す。探す行為は儀式的なもので、気分を落ち着ける薬がこの部屋のどこにもないことを知っている。そのあとそのままベッドの上から目で酒を探す。今日は缶のゴミの日だった。昨日、飲みかけのお酒を机の上に置いたままにしておいたと思ったが、ゴミに出されていた。

悪夢から覚めて、まず現実をぼやかすものを探して虚しくなってまたベッドに沈み込む。
悪夢の内容は、家がバレるというものだった。誰の、とか誰に、とかそんなんじゃなくて、とにかく「特定」がテーマの夢だった。私は何を恐れてそんな夢をみたのか。

お腹が空いてイライラするのかと思い、昼食をしっかり食べた。お腹が痛くなった。胃腸はあいにくずっと死んでいる。整腸剤を飲んで、また寝る。ねむい。ずっと、ねむいし、だるい。

夜の予定はトラで乗る吹奏楽団の練習だった。乗り換えを3、4回して、東京まで出ることが苦痛に感じられて、テキトーな理由をつけて休んだ。あんなに演奏することが好きなのに練習をサボるなんて怠惰だ。罪悪感でより一層ベッドに沈み込む。頭の中で言い訳を垂れる。私の中で何番目かに醜い瞬間だ。

16時頃にやっと体が少しずつ動き出す。でも特にすることはない。買い物に行けるほど元気もない、バイトで使うスリッパやらなんやらを買いに行こうと思ったけれど、それも自分にテキトーな理由をつけて行かなかった。

ダメな日だ、ダメな日にしよう そう決めてやっと少し心が軽くなる。

夜ご飯にはチーズフォンデュを食べ、味がしないな、と思いガーリックをしこたまかけた。それでもよく味はわからない。うまいもマズいも私には存在しない。「腹が空いた感覚がわからない 空いたことがない」と、『人間失格』に書いてあった。わからなくもない。飽食で、傲慢。

シラフだった1日だった。だから、お酒を飲んだ。途端にご機嫌になって、取り止めのない話を思いつくままに一緒に食卓を囲んでいる親に話す。ある程度ご機嫌が行くところまで行ったら今度は気絶するように眠りに落ちる。そして深夜に目が覚める。

机の上のまだ空いてないお酒に目をやる。空けないでおこうか、どうしようかと悩んでいる間に、体は二日酔いをはじめる。どうせ飲み干せない気もするし、と迷う時間が1時間をこえたので、考えずにお酒をあける。その方が早い気がした。酔うことは好きだが飲むことは好きじゃない。酔うことも好きじゃないんだろうけど、それよりもっと現実は好きじゃない、などと自分に言い訳しながらお酒を飲む。三缶目、寝て起きて、四缶目。
親が管理してる睡眠薬を規定量、親の机から漁ってとる。5%のお酒で流し込む。これで睡眠薬は全部なくなった。明日からどうやって寝るかな。

深夜3時、同い年の女の子とダラダラと電話をする。楽しい時間。もう、シラフではない。明日もあるので、電話を切って、寝るフリをして、そしてまたお酒を一本空ける。

また明日が来る。そのために、寝る。 朝5時。もう「今日」だ
また1日、シラフでは生きられなかった。ニンニクのにおいだけがけだるく私の体にまとわりつく。

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