ドイツ、市民権法改正案を可決 2024/01/19
ある期待
ドイツが重国籍容認に踏み切った、というようなタイトルの報道を見た時、私はある期待を持ちました。ドイツ国籍を取った元日本人が二重国籍になれるかもしれない、と。
しかし、誰が二重国籍になれるか、という点が不明でした。
ひとつには日本語に訳された時点で文法的な誤解が生じやすいこともあるようです。
以下のETIAS.COM ※1)の記事が最もわかりやすく、おススメします。
上記のまとめ文では、今回の法改正の対象者は外国人に限定されています。
それでは、生来のドイツ人はどうなんでしょうか?
また帰化によるドイツ人は?
私たちはこれまで、ドイツ人と結婚した多くの日本女性が、ドイツ国籍を取るために日本国籍を捨てざるを得なかった過去の経過を見てきました。その彼女たちが、ドイツ国籍を持ったまま、再び日本国籍に戻ることができるのでしょうか?
日本の帰化行政の実態
海外在住日本人で、将来は日本に帰国したい人の割合はとても大きいです。
そのうち、外国国籍を取った元日本人は、帰国しても当面外国人として日本に滞在するしかありません。
再び日本人になるには、帰化申請要件を満たす必要があります。
①少なくとも3年間の滞在歴
➁元国籍の離脱
その他の要件
このうち、➁については、国によって国籍離脱・喪失の法律や手続きが違うため、日本政府としては、原則が元国籍離脱であっても、最終的に申請者の希望に添うために、申請者にすれば不透明でわかりにくく、しばしば矛盾したように見える帰化手続きを取らざるを得ないことになります。
その結果として、元国籍を保持したままで日本国籍を取得できた、つまり二重国籍になった外国人 (アメリカ、ブラジル、ベルギーなど) がいるのですが、この方たちは合法的な二重国籍者です。
それにもかかわらず、ほとんどのご本人たちの意識は、「自分が二重国籍であることを公表してはいけない」というものです。
ドイツは重国籍に寛容でない国
さて、ドイツ・日本の二重国籍に話を戻しますと、2023年4月16日菅原真氏(南山大学法学部教授)は、オンライントーク「海外日本人と国籍喪失の危険性」※1( 主催:AMF2020/SLN )で、重国籍容認国が世界の多数派であるとするマーストリヒト大学の調査結果 ( 2020年 )※2を発表しました。
この中でドイツは「重国籍に寛容でない国」のグループ( 45か国)に分類されています。
では、どのような規定で「寛容でない」と判断されるのか?
根拠は ⇒ N2007(25.2) つまり、2007年ドイツ国籍法25条2項です。
( 因みに同じく「寛容でない」グループの日本は、N1950(11.1) )
(2)ではドイツ国籍を持つ人が外国の国籍を申請する際、ドイツ国籍の保持ができるかどうかという点での手続きを定めています。
そして、これによって「重国籍に寛容でない国」という判断をされたのであれば、元日本国籍のドイツ人が、ドイツ国籍を保持したまま日本に帰化することはできないようだ、という結論になると思います。
ドイツの市民権法改正は、日本の「不透明な帰化行政」には影響を与えない
今回のドイツの移民を対象とした市民権法改正が、他のEU諸国に比べて遅れていた点を修正するに留まったものであることがわかって、正直がっかりしました。
もし、国籍法25条2項に大幅な修正や変更があったとして、それによって元日本人のドイツ国籍保持者が日本に帰化する場合にドイツ国籍離脱を強いられることがなくなれば、その時こそ、日本の帰化行政の「不透明さ」の一片にに穴が開くだろう、と思うからです。
法務省が自ら国籍法や帰化行政を変更するということはあり得ない以上、外からの圧力に頼るしかないのが私たち二重国籍容認派にとって弱みでした。
しかし今、いつまでも外圧に頼ることなく、内部から社会のルールを変えていこう、という声を、自分たちで大きくしていかなければならないと考えています。
脚注
※1)ETIAS (欧州渡航情報認証システム)
これから来年5月に向けて、ETIAS(欧州渡航情報認証システム)が発信する情報は、EUにとって外国人である人たちには、帰化の前提となる居住そのものができるかどうか、という点を知るために重要です。
※2)オンライントーク「海外日本人と国籍喪失の危険性」
https://note.com/sln_/n/n07e97030ebf1
※3)重国籍容認国が世界の多数派であるとするマーストリヒト大学の調査結果(2020年)
https://note.com/sln_/n/n5d59f51deb56#34f7ac1c-54b1-4fd8-b22e-7c454bb2facf