もう一度、あの頃のあの子たちに逢いたい…(女子だってバイクや車のことは少女マンガで知ったものです)
ゲームセンターでハイスコアを出したときに名前を「RX7」「MR2」「CBR」とか入力してましたよね。してない?
“海辺にバイクをとめて一瞬マジにお前を抱いた”り、“盗んだバイクで走りだす”80年代はマンガも車やバイクが登場するものが多かったです。言ってみれば「不良」の時代、不良の乗り物としてのバイクや車は、おんなのこマンガのほうが特徴的だったかもしれません。おとこのこの場合、不良であることももちろんだけれどその多くはメカとして、相棒として、暴走も含めて生き方を投影するツールとして描かれていたのではないかと思います。
バイク=不良なんだけど、刹那的な10代の象徴として少女たちにとてつもない影響を与えたマンガが紡木たくの『ホットロード』です。2014年に映画化もされましたが、ここでは1986~1987年当時のマンガのお話。
「十代なら誰でも、何も見えないで走ってしまう瞬間がある」
主人公の「和希」と同じ中2だったわたしは「別冊マーガレット」で連載を読み、コミックスを買い、何度も何度も読んでいました。和希あこがれの宏子さん(めっちゃ落ち着いてるけど17歳)も、和希がつきあうハルヤマも愛用のコロン「タクティクス」もまねっこして使いました。大人の男性のものだけど、わたしのような10代がこぞって買ったのではないでしょうか。
当時、今よりも過激だった「ポップティーン」で、和希の生き方に感化された読者が「暴走族をつくりたい」と仲間を募集。これが誌面で問題になった記憶がありますが、どうなったのかな、リアル「NIGHTS」。バイクなど持ってない乗れない子たちばかりで、反対派に猛攻撃されていました。ただ仲間がつくりたい、だったらバイクは必要ない、紡木先生が描いたのはこんなことのためじゃない!といった論争でした。バイクなんて知らない少女に暴走族を作ろうと思わせてしまうほどの影響力。世界中の誰とでもいつでもつながれる今からは考えられないけど、あの頃はバンドメンバーもペンフレンドも月刊誌で募集してましたね。
誰からも必要とされていない孤独感を抱えて生きていた和希と、16歳で一人暮らしをしている湘南の暴走族「NIGHTS」のハルヤマはつきあい始めます。やがてハルヤマは全国に支部を持つ「NIGHTS」のトップに立つのだけど、トップが継承するバイクがホンダのCB400FOUR。これをハルヤマは、引退する先代総頭のトオルさん(大人の余裕だだ漏れだけどハタチ)に、
「お前にやるよ。歩いておいで」
って言われて夜通し歩いて、ガレージにたどり着きます。静かに待っているヨンフォア。やっと会えたバイクに頬を寄せ、そのまま眠ってしまうハルヤマ。NIGHTSへの思いとバイクへの思いが表現されているシーンです。
同じ「やっと会えたバイク」でも、ハルヤマのこのシーンとまったく違う感情で描かれたのがこちら。松本美緒の『彼女の彼』とそのスピンオフ『-拓也-YOKOHAMA二十歳前』。舞台は広島。転校生の芹香があこがれる凌二と晴美のカップル。芹香と凌二は同じ高校へ進学します。やがて晴美の命をバイクが奪い、そのバイクを運転していたのは札付きのワル、伊東センパイ。ここからが伊東センパイの話『拓也』で、伊東は広島を離れ横浜にいます。バイクはやめ、地道に働き、もう何かに熱くなることはない彼が、久しぶりに「あのバイク」を見てしまうのです。血が騒ぐ…!でも一瞬の衝動はさざ波のように引いていき…彼を慕う、事情を知らない高校生の研二が、
「乗らないのかよ? 拓也さんのそんな顔、初めて見たよ」
若いのに枯れきった伊東を責めます。1人になった伊東はあらためて、
「やっと会えたな」
バイクと、死なせてしまった晴美への想いにようやく向き合います。バイクに乗りたがってた晴美に、16になったら免許とって乗せてやると言っていた凌二。それを待たずに、伊東のバイクの後ろに乗ってあっという間に逝ってしまった晴美。実際、バイクでハルヤマや晴美のように飛んでそのまま逝ってしまったセンパイがいました。そして何人かのおんなのこが泣いて。
バイクのことしか書いてないので車のことをあわてて書きますが、『拓也』では“凌二がセリカに乗っている”という話を拓也が聞くシーンがありました。わたしの兄もセリカでしたね、そういえば。名前の勝利ですよね。そして車といえば『ホットロード』で和希と親友の絵里が車に乗った大学生たちにナンパされるシーン。
「レビンだし、乗っちゃお?」
絵里にそうささやかれて、和希は引き気味ながらも車に乗ってしまいます。ところがやっぱりヤバい雰囲気を察知した2人は、信号待ちの隙を見て車から逃げ出しますが、男たちは追いかけてきます。絵里が宏子に電話(もちろん公衆電話)して助けを求めます。このときの絵里の「かずきが…かずきがやられちゃう…っ!!」も衝撃でした。こんなセリフ、それまでマンガで見たことなくて。ハルヤマやNIGHTSの仲間が和希を助けに向かい…
「あれだってよ、黄色のレビン」
わたしは当時「別マ」でこのエピソードを読んで以来、レビンには近づかないよう生きてきました…。車に罪はないのです、ごめんなさい。
ちなみに、わたしの初めての車はこの子。
トヨタ カリーナマイロード
ハタチの女子が乗るにはちょっと渋いけど、たしかに相棒でした。周りの友だちはロードスター、アルトワークス、ミラパルコ、マークⅡ、マーチなど。おとこのこはGT-R、180、スープラ、クレスタ、フェスティバ、ランクル、BMW…つきあってた人も含めて、車で覚えてるものですね。このあとサニーカリフォルニアというステーションワゴンに乗り換えて、そこでわたしのカーライフは終了。すっかりペーパードライバーです。
和希のママの年齢もとっくに超えて、子どもたちがハルヤマや和希、芹香や晴美たちぐらい。今の子たちも、あの頃のあの子たちのような葛藤を抱えて生きているのかな。(ハルヤマももう50か…)
※マンガのセリフやシーンはすべて記憶で書いたものですので、ニュアンスでお読みください。
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