大丈夫って言う奴らの話

昨年、祖父の元に役所からのお達しが届いた。
爺さんが所有する畑の1つの不法投棄がヤバ過ぎるので年内までに片付けなさいといったものだった。
どうやらこのまま放置しておくと農地としては機能していない(一部は畑として活用している)と判断され、雑種地扱いとなり、固定資産税が10倍近くに跳ね上がるらしい。

調べてみるとこれはまだ優しい方で、いきなり納付書を叩き付けられ、否応なしに10倍にもなる固定資産税を払わなければならないケースがいくつもあった。
とりあえず色々と割愛するが、不法投棄された全てのゴミの片付けを業者に依頼するとふつうに車買えるやんぐらいの値段だったので爺さんは頭を抱えていた。

『どうするん?片付けるなら早めに頼んだが良いんやない?』
俺が言うと爺さんは畳を一点に見つめながら『俺、もうゲームオーバーばい…』と言った。

帰りの車で死ぬほど笑った。

結局、爺さんは畑の片付けをしなかった。
10倍にもなる固定資産税を払うのか、それとも何か抜け道を見つけたのか。俺が問うと爺さんは『大丈夫。全部大丈夫ばい』とヘラヘラ笑っていた。

俺はもう関わるのを辞めようと思った。

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昨年末、高校を卒業して以来初めて野球部の同窓会が開かれた。ざっくりと俺たちの年代を集めたらしく、先輩後輩含め60人ぐらいはいただろうか。

熱闘甲子園で見るような野球部の絆、友情みたいなもんはごく一部の事例であり、その他のほとんどは卒業と同時に関係も途絶えていると思う。
俺が近況を知るのはほとんどFacebookだったし、Facebookを使わなくなった今、同期の連中が生きてるのか死んでるのかも分からなかった。

懐かしい先輩やらに挨拶を済ませ、かぱかぱと酒を空けていると後ろから声をかけられた。

『久しぶりやん。元気しとうと?』
奥住(オクズミ)だった。
俺と奥住は野球部時代いつも一緒にいた。
特別仲が良かった訳でもないが、野球は二人一組で練習する事が多く、ポジション、体格の近い奥住が自然と俺のペアとなり、その流れは3年間続いた。

俺たちはお互いの近況を報告しあうと、奥住は闇賭博で職を失っていた。
草生えた。

『お前結婚してなかったっけ?子供もおったよね?』
俺が言うと奥住は首を横に振った。

『離婚しとうけん大丈夫よ』
何が大丈夫なのか全然意味が分からなかったが、奥住のその言葉は力強かった。
俺たちはそれから同窓会が終わるまでこれまでの12年間を語り合い、連絡先を交換して別れた。

俺はもう関わるのを辞めようと思った。

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