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JUNK NOVEL PROJECT vol.3 「おなす」

このプロジェクトは、映画監督二宮健が、毎回出されたお題をタイトルとして、短編小説に挑戦する企画です。今回のお題は「おなす」。

お題については、Radio JUNK LOUNGE vol.3で話しております。

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「おなす」


「なす太郎くん。君は良い具合に細長くて端正で、とてもセクシーだ。まさにおなすの中のおなす。心底君が羨ましいよ」

小太りのなす夫くんが、なす太郎に言った。

「いやいや、なす夫くんこそ、ナスとは思えない恰幅の良さ。色さえ違うけど、まるでじゃがいもくんのような包容力だ。君が自分自身をあまり高く評価していないのは知ってるが、僕の周りは、君のその強烈な個性に嫉妬してる奴ばかりだよ」

なす太郎は、なす夫くんが言って欲しそうなことをとりあえず言った。
なす夫くんは、眉をひそめる。

「なす太郎くん、調子の良いことを言ってないか?そんなことで僕の機嫌を取ろうとするのは、さすがによしてくれ」

そんなやり取りをしているうちに、なす夫くんとなす太郎は、包丁で切り刻まれ、同じ鍋の中に放り投げられた。

ここは昼下がりのカフェテラス。ヒデが、同僚のヤスアキに熱弁している。

「ヤスアキ、君の日々の生産性を高めるためにも、まずバスマットは珪藻土のものに変えたほうが良いと思うんだ。些細なことかもしれないけど、珪藻土の利便性が君に与える自由な時間は、長い期間で考えたら決してあなどれない、とても大きなものになると思うんだよ」

ヤスアキはヒデの話に頷きながら、実際は今夜開催されるオンラインゲームのオフ会のことで頭がいっぱいになっていた。

「なるほど、ヒデ。君のそういう情報には本当いつも助けられているよ。ぜひ珪藻土マットの購入を検討しみてる。ところで今日の新しいネクタイ、とてもキマっていてお似合いだよ」

ヒデが得意げな顔をした。
店員が、日替わりランチのスープパスタをふたつ運んでくる。ふたりは勢いよく頬張る。

「いやあ、それにしても旬のおなすは美味しいねえ」
「ごもっとも」

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