私の中銀カプセルタワー滞在記〜NAKAGIN BUSINESS CAPSULE(終)

【退去日②】

さあ困った電気ポットがスーツケースに入らない。むき出しのまま手で下げて電車に乗るか?いやいや、何かしらの事情を抱えた変なおばさんにしか見えないじゃないか。そして絶対に落として壊す。却下。段ボールに入れて宅配便?いやいや、こないだ売ってたときの箱を捨てたばっかで箱がない。なぜ捨てたか私よ。却下。

このままでは自宅に移動できない…。あせる私と迫る退去時間。

とにかく電気ポットを収納すべく、スーツケースの中身を全部出してから最初に電気ポットを入れ、あとは1ミリたりとも隙間を作らないキチキチ収納で他の荷物を詰めていく。

2人の子育てで鍛え上げた私の収納スキルは高い。この作戦でかなりの荷物が収まったのだが、結果としてスーツケースが尋常じゃない重量になってしまった。小さい頃「星のすべて」みたいなタイトルの本を読んでいたら「この石は重力に押しつぶされて手のひらほどの大きさなのに1トンもあります」という文が出てきて「んなバカな」と半信半疑だったけれど、今なら信じる。ぎゅうぎゅうに詰まったらモノは重くなるのね。

さてそれでもあぶれた物たちがいくつかあって、細々した物は紙袋へ。とっといてよかった紙袋。

そして、水漏れのする部屋のユニットバス内で、水の飛び散る簡易シャワー室で、1か月苦楽を共にしたビーチサンダルは泣く泣くゴミ箱へ。ありがとう、キミは素晴らしく有能だった。

靴箱にしてたプラケースは、環境問題的に大変申し訳ないことながら粗大ゴミ置き場(と勝手に判断した家具等が積み重なっている謎の空間。こないだ見たらスッキリなくなっていたので今は捨てれないかもだ)の山にそっと置かせてもらった。ダメだったらごめんなさい。新品だったし、もったいないから部屋にシレッと置いとこうかとも思ったけど、迷ってやめた。一人一人は親切のつもりでも、荷物を残すのを繰り返すと部屋が備品だらけになってしまうだろうし。

さあ、これで荷物はOK。頑張った私。

忘れ物がないか、壁面収納の棚を端から全部開けていく。この重い扉に何回指を挟んだことか。なぜ上下開きという発想しかなかったんだろう?

ささっと掃除をしてベッドを整え、最後に洗面所の床を拭く。スポンジはそのままゴミ袋へ。このハイテクスポンジも「大活躍したで賞」贈呈だ。もう寝起きに床を拭くこともないと思うと変な感じ。

トイレットペーパーは空っぽのままでごめんなさい。これに関しては最後の最後に悲劇があってだね…。前回自宅に戻ったとき、「あと4、5日だし使いかけのでよかろう」と半分くらいになってたトイレットペーパーを補充用に持ってきていたら3日でなくなったのだ。ひどい。

ちょっと考えればわかるのだが、トイレットペーパーというものは巻きが細くなればなるほど加速度的に減りが早くなるのであって、半分くらいになっていたら、たとえ使うのが私一人でもあっという間になくなってしまうのだ。

退去前日の夜中、とうとう在庫が尽きました。ひどい。このタイミングで。

もはやドンキに行く気力もなく、どうしたかというと1階ロビーまでトイレに通ったのだった。お腹ぴーだったら大惨事になるとこだ。

と、そんな苦難も乗り越え、荷物も無事詰めた。渡り廊下のポリバケツに最後のゴミ捨てをして(いっぱい出してごめんなさい)、ゴトゴト揺れるエレベーターで1階に降りる。ロビーの管理人さんに「今日で退去です。お世話になりました。皆さんでどうぞ」とお菓子を渡したら、なんだかものすごく戸惑った顔をされたのは、ドンキで買ったお菓子だとバレたからだろうか。すみません、昨日カプセルタワー近くまで帰ってきてから「お礼しなくちゃ」と気がついたので、ちゃんとしたお菓子が買えなかったんです。1か月ありがとう、管理人さんたちとはとうとうちゃんとした会話ができなかったのが悔やまれます。いろんな住人たちの話とか聞いてみたかった。

退去にあたってオーナーMさんの立ち合いなどはなく、時間までに鍵を返却するだけ。指定された場所に部屋の鍵とドンキのお菓子を無理矢理押しこんだ。

私のカプセルタワー生活はこれでおしまい。楽しかったね。

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読んでくださったみなさん、ありがとうございました!

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